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長沙の年会員は夜逃げする – ゴルフ練習場が一夜で消えた日

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旅の随筆
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1. ゴルフ練習場が消えた

長沙の街中、高級住宅街の中に、250ヤードの立派な練習場があった。中国人、韓国人のレッスンプロが常駐し、交渉して無料レッスンを何度か受けたことがある。ゴルフクラブも預かってくれる。顔を覚えられ、行けば「加藤さん、こんにちわ」と愛想よく元気な声も掛けてくれ、ゴルフバッグを管理倉庫から持ち出し何も言わなくともきちんとセッティングしてくれる。最初の何回かは50球いくらの都度払いだった。頻繁に通ううちに、ふと計算してみた。年間4、5万円の打ち放題会員になり週何回か通えば、都度払いの半額程度で済む。これはお得だ。長沙にあと2年は駐在する。迷わずメンバーになった。2ヶ月後、土曜の朝、いつものように地下鉄で練習場に向かった。門は開いている。信じられない光景にびっくり仰天。中は、もぬけの殻だった。打席のマットも、ボールも、受付の机も、愛想の良かったマネージャーの笑顔も、すべてが一夜にして消えている。まるで最初から何も無かったかのように。プロの技だ、と妙に感心してしまった。さらに困ったのは、預けていたゴルフクラブだ。倉庫に施錠されたまま、誰も鍵を持っていない。取り出せない。日本から運んだ大事なドライバーが、人質になってしまった。泣き寝入りか…と諦めかけていた2-3週間後、再開されたとのニュースを聞き、恐る恐る訪ねてみると、確かに再開している。経営者が変更したようだ。ここの会員だった元メンバーは以前と同じように打たせてもらえるか聞いてみると、元の会員証はあるのかと聞かれる。残念ながら持っていない。今から思うと不思議な事だったが、「メンバーカードは来訪の度に、いちいち提示するのは面倒臭いだろうから、こちらで預かっておきます」と言われ何の疑いも無く渡したままだった。これは失敗の元。元経営者の姑息な手段だ。ところが、良心的な新経営者は「領収証があれば継続してメンバー扱いにする」。私は幸い、自宅の机の片隅に年会費の領収証をたまたま保管していたので、なんとかセーフ。ところが、ほぼ同時期にメンバーになった会社の同僚は、領収証を捨ててしまっていて、再び年会費を払う羽目に。あの立派な練習場、丁寧なプロ、愛想の良いマネージャーをすっかり信用していただけに、騙されたショックは大きかった。長沙では「信用」は「確認」しないと危ない、という教訓だ。

2. 足裏マッサージ、理容院も同じ手口

同じ手口は、他でもあった。自宅マンション2階の香港系の足裏マッサージ。回数券を買い、残金をわずかに残したタイミングで、ある夜、店が消えていた。昨夜まで「明日また来てね」と言っていたのに。理容院もそうだ。丁寧な洗髪、マッサージ付きで、毎月週末の楽しみだった。ある日行くと、看板が変わっている。椅子も鏡もそのまま、人は違う。いつの間にか経営者が変わっていた。共通するのは年単位のメンバーカードの購入に潜む大きなリスクだ。日本ではほとんど経験のない手口が蔓延している。都度払いの料金設定を高めにして、頻繁に通えば、また、他の店に浮気せず、一途に通い詰めれば年間〆て支払い額は半額程度になるという計算をさせてメンバーカードを集める。そこまでは、商売なので許せる。しかし、ある日突然多くのメンバーカードを売りまくった挙句その売上金をごっそり持って夜逃げされたら堪らない。また、警察に通報したところで、中国社会では『騙す方より、騙される方が悪い』という言葉もあり、一応相談には乗ってくれると思うが、残金の回収はまず無理と諦めた。使い切っていない残額があった多くの人は泣き寝入りするしかない。また、マンションの下にあったクリーニング屋も「メンバーカード」だった。洗濯物を預けてから、衣類(ほとんどワイシャツ)を受け取るまで、店が預けたまま、また突然クローズしやしないか気が気でなかった。幸い長沙駐在期間中に夜逃げはされなかった。中国の駐在生活では業務以外でも、日常生活で心経をすり減らすことばかりが起きる。大抵の事には動じない精神力は相当鍛えられるが、とにかく腹が立つことばかりだった。

3. 日本でも同じ事があった

帰国後も、同じことがあったから驚く。伊香保温泉の帰り、国道沿いのガソリンスタンド。大きな看板に破格の安値表示。看板に釣られて給油すると、給油機の隅に小さく「プリペイドカード会員価格」と書いてある。店員に「1万円のカードを買えば、この安値で入れます」と、半ば強制的に1万円のカードを買わされた。半年以内にまた伊香保に来て、しかもタンクを空にして来ないと、使い切れない。伊香保に半年以内に再び来ることなど、計画も立てていなかった。伊香保のSSの場合、カードの有効期限内にまた夜逃げされるのではないかという嫌な心配が付きまとった(廃業するSSを何軒も見てきている)が、その心配は杞憂だったが。教訓:都度払いが一番安い。プリペイドは夜逃げの温床だ。長沙で学んだことは、日本でも通用する。

 

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