『セールス・ガールの考現学』のあらすじ概要
アダルトグッズショップで働くことになった女性の成長をユーモアたっぷりに描き、第20回ニューヨーク・アジアン・フィルム・フェスティバルでグランプリに輝いたモンゴル映画。
モンゴルの首都ウランバートルで家族と暮らしながら大学で原子工学を学ぶサロールは、足を怪我した同級生の代理として怪しげなアダルトグッズショップでアルバイトを通じて未知の世界へと足を踏み込んでいく事になります。
人生経験豊富で謎の多い女性オーナーのカティアが営むその店には大人のオモチャが所せましと並んでおり、毎日さまざまなタイプの客たちが来店します。また、グッズのデリバリーを頼むお客も少なくありません。サロールはカティアや客たちとの交流や、一日の終わりに売上金を届けにカティアの家に通ううち、二人の間に不思議な友情が芽生えていき、その刺激を受けることで、自分らしく生きることを段々学んでいくことになります。
オーディションで300人の中から選ばれたバヤルツェツェグ・バヤルジャルガルが映画デビュー作にして主演を務め、モンゴルを代表するベテラン俳優エンフトール・オィドブジャムツがオーナーのカティアを演じています。
2021年製作/123分/モンゴル
原題:Khudaldagch ohin
『セールス・ガールの考現学』のスタッフとキャストについて
センゲドルジ・ジャンチブドルジ監督・脚本・製作:現代のモンゴル映画界を代表する監督
バヤルツェツェグ・バヤルジャルガル(サロール):オーディションで300人の中から抜擢され本作で映画デビュー。2022年大阪アジアン映画祭で、「最も輝きを放っている出演者」に贈られる薬師真珠賞を受賞しています。
エンフトール・オィドムツ(カティア):30年ぶりに銀幕に復帰したベテラン女優。経験豊富なカティアが繰り出す、機知に富んだアドバイスの数々は説得力抜群でした。
『セールス・ガールの考現学』のネタバレ感想・見どころ
ウランバートルの現代っ子女子大生もまったく日本の学生と変わらない事が分かりました。
仕事や観光で、何度も内モンゴル自治区(中国国内)を訪問した経験はありました。中心都市フフホトもかなりの田舎の街という印象でした。そこからモンゴルの首都ウランバートルまでは何千㌔も離れており、それこそ未だ数多くの遊牧民が屯す町かと思っていたら飛んでも無く発展してる大都市なのでびっくり仰天しました。
主人公の女子大生サロールは冒頭いきなり垢抜けない地味な学生として登場してきます。たまたまクラスメートの女性が転倒、骨折してしまった為、彼女にアルバイトの代理を一か月頼ん出来ます。高給で比較的楽な仕事という触れ込みでした。問題はオーナーとの”付き合い”方にあると何やら意味深なアドバイスを残していました…
実際映画の中の様な小ぎれいなアダルトショップがウランバートル市内にあるかどうかは甚だ疑問ですが、(我々外国時には知る事が出来ない秘密の場所というものが多いのかもしれません…)需要はある様でした。宅配サービスまでしなければならないとは驚きです。
本作の主眼はアダルトグッズのセールスを通じて、人生を学ぶことではなく、何やら得体の知れない、煌びやかな過去、多くの経験を持つショップオーナーの中年女性カティアとの接触を通じ、人生の窓口から少しずつ学んで行くプロセスが懇切丁寧に描かれていきます。それはあたかも真っ白なキャンパスに色鮮やかな色彩画を描くように、サロールの素直な吸収力はあっという間に見事な結果を生んでいく事に見ている観客も驚く程です。
ネタバレになりますが、単純な部分では髪型が変わる、もじゃもじゃの眉毛もすっきりと切りそろえられます、かなり地味だった衣服も純白な服に衣替え・・・、大胆にも男友達(男朋友)を自宅に連れ込み積極的な態度に出ています(両親に見られてしまいましたが)、最後に大学は原子工学部から芸術学部(絵画)に転部していました。
単純と言えば、その通り非常に単純なストーリーです。しかし、モンゴル高原の降るような星空を見上げれば、複雑な人生なんて一遍にぶっ飛んでしまいと思います。
最後に、食事のシーンが何度か出てきました。何故かボルシチ・ピロシキなどのロシア料理だったり、魚のフライだったりしました。私はモンゴルであれば、絶対に朝締めの羊肉だと思うんですが…なぜ蒙古烤肉を頬張るシーンがないんでしょう!
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