1917命をかけた伝令のあらすじと概要
内容は監督の祖父の体験談を聞いてそれをもとに構想された作品となっている。ほぼ100年前、第1次世界大戦が始まってから、およそ3年が経過した1917年4月のフランス。ドイツ軍と連合国軍が西部戦線で対峙し泥沼化している戦場が舞台。ドイツ軍は完全に撤退したものと見えたが、これを英国軍が更に追い打ちを掛ければ壊滅させることが出来ると考え翌朝総攻撃の命令が下されていた。
しかしながら、英軍の偵察機による情報では、これはドイツ軍の仕掛けた罠で、一旦は退却したかに見せかけたドイツ軍は英軍を誘い込み、壊滅作戦を目論んでいた。この罠に陥れば味方1600名の命が危険に陥る。通信手段が全て遮断さている為、英国軍将軍の作戦中止命令も伝令兵である(唯、読図能力が優れているという理由で選抜されたらしいが)イギリス軍兵士のスコフィールド上等兵(ジョージ・マッケイ)とブレイク上等(ディーン=チャールズ・チャップマン)に対して、ドイツ軍を追撃しているマッケンジー大佐(ベネディクト・カンバーバッチ)の部隊に作戦の中止を知らせる命令が下される。しかし、二人に与えられた伝令は翌日の朝までという期限までに届かなけ無ければならない。部隊の行く先には要塞化されたドイツ軍の陣地と大規模な砲兵隊が待ち構えている。
本作品はゴールデングローブ賞で作品・監督賞を獲得し、先のアカデミー賞ではノミネートされた作品賞は逸したが、視覚効果賞、撮影賞、録音賞の三賞を獲得している。戦場のある一日の物語を”全編カット”という画期的な映像で映画化されている為、戦場の恐ろしい臨場感、緊迫感が十分過ぎる程ヒシヒシ伝わってくる。塹壕の中の様子、戦闘を控え束の間の休息を取る兵士、塹壕の中で俯き物思いに耽るの兵士の姿には悲壮感が漂う。
1917命をかけた伝令のネタバレ感想
ストーリーとテーマについて
敵軍の罠にまんまと嵌り全軍壊滅の危機に陥いろうとしている自軍を救う為の命懸の使命を受け、任務を全うしようという兵士の活躍が描かれているが、余りに戦場の映像、音響、描写がリアルで自分もあたかも戦場で一緒に走り、戦っている様な錯覚に陥る。特にドイツ軍の戦闘機が撃墜され落下してくるシーンはあたかも実際の飛行機の墜落現場に出くわした様な錯覚に陥るし、ドイツ軍撤退後の塹壕内に仕掛けられた爆弾が爆発するシーン、マッケンジー大佐に伝令を伝える為最後爆弾の炸裂する戦場を駆け抜けていくシーンなど戦場そのままの緊迫感が漂う。
本作品は第一次世界大戦を舞台とした戦争映画だが、同じように第一次世界大戦物の映画は多い、最近の物では「戦火の馬」古くは「西部戦線異状なし」「アラビアのロレンス」などアカデミー賞受賞授賞の名作が多いのは何故か?
演出や脚本について
撮影監督を務めたロジャー・ディーキンスによる圧巻の撮影技術はもちろん、メンデス監督特有の詩的な描写が映し出されるシーンになっている。「007 スカイフォール」「ブレードランナー2049」「ショーシャンクの空に」などを手掛けてきた撮影監督ディーキンスは「引き画を入れるか、どうカメラを動かせば周囲を見渡せるか、その瞬間を強く映せるか、ワンショット撮影というのはそのバランスが肝だった」と語っている。また、「ただ2人を背後から追うだけの映像にはしたくなかったし、物語を描写する方法を模索した」と苦労を振り返っている。作品はディーキンスは、「ワンカットの映像に気を取られずに作品を見てほしい。観客がストーリーに没頭して登場人物と一緒に体験するために作った映像だ。観客が撮影技術に気を取られるようではある意味失敗だ」とコメントしているその思惑の通り、我々はすっかりストーリーに没入されてしまい、決してワンカットの映像に気を取られたりしている暇はない筈、とにかく素晴らしい出来栄えの映像作品と言えよう。
廃屋内を動き回るネズミもすべて本物だという、また、死んだ軍馬の周りに飛んでいるハエの大群も本物に違いない、死んだ兵士の顔色が血の気を徐々に失って行くシーンもワンカットであり、途中でメイクアップが施されている訳ではないという。こういった細かい点の数々の積み重ねが、より一層リアルさを際立たせるために効果を発揮している。
キャラクター&キャストについて
サム・メンデス監督は『アメリカン・ビューティー』のオスカー監督、他には「007 スペクター」「レボリューショナリー・ロード 燃え尽きるまで」などで知られる名匠。
主演の英国人俳優ジョーン・マッケー(『はじまりへの旅』)は既に27歳でキャリアも豊富だが、今回本作品「1917」での名演で、2020年には英国人人気俳優のひとりに加わる事は間違いなさそうだ。しかしながら、まだそれ程有名ではない俳優を敢えて主人公(ふたり)に据えていた。サム・メンデス監督の構想は、戦場では一般のごく普通の人々こそが主役であり、決してずば抜けた英雄が戦場にいるわけではないということを表現したかったとのこと。もう一人のディーン=チャールズ・チャップマンら若手俳優に加え、その周囲をベネディクト・カンバーバッチ、コリン・ファース、マーク・ストロングらイギリスを代表する実力派が固めて、重厚感ある映画に仕上がっているところも大いに見どころ。
まとめ
本作品は、ストーリーの展開を追うというよりは上述とおり、リアル感、臨場感を味わえる”見る楽しみ”(戦争は決して楽しい経験をする場所ではないが)があることは間違いない。アカデミー賞もしっかりこの点を評価して視覚効果賞、撮影賞、録音賞の三賞を取得している。
是非とも本作品は映画館に足を運び、その迫力・緊迫感を主人公らと共に体感しするべきだと思う。
わたしの評価は95点。
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