>

おすすめ映画|『ベル・カント とらわれのアリア』(2018/ポール・ワイツ監督)ジュリアン・ムーア/渡辺謙共演、結末が余りに哀れ

スポンサーリンク
絶対見逃せない映画 おすすめ
skeezeによるPixabayからの画像
スポンサーリンク

「ベル・カントとらわれのアリア」のあらすじ・概要

kolibri5によるPixabayからの画像

1996年にペルーで起きた日本大使公邸占拠事件から着想を得た小説、Amazonのベスト・ブック・オブ・ザ・イヤーにも輝いたアン・パチェットのベストセラー「ベル・カント」をもとに映画化されたストーリー。

南米某国の副大統領邸でパーティーが開かれ、現地の名士や各国の大使など多くの招待客が訪れる。その中には日本人実業家のホソカワ(渡辺謙)もいた。さらにそこには、彼が愛してやまないソプラノ歌手のロクサーヌ・コス(ジュリアン・ムーア)の姿もあった。ロクサーヌはこのパーティーのメインゲストで一同の前で美声を披露する予定であった。

宴もたけなわになり、ロクサーヌのコンサートが始まろうとした瞬間、突然テロリストたちがなだれ込み、副大統領邸を占拠、パーティー参加者全員が人質にされてしまった。一味の目的は収監中の同志の解放を政府に認めさせることだった。赤十字のメスネル(セバスチャン・コッホ)を介して政府と交渉するが、政府は一歩も譲歩せず、交渉は平行線が続いた。途中ロクサーヌ以外の女性の人質は解放されたが、事態は長期化の様相を見せる。また、通訳役のゲン・ワタナベ(加瀬亮)もテロリストと人質の交流に重要な役目を果たしていく。

緊迫した雰囲気が続いたが、ある日、ロクサーヌの歌をきっかけに、貧しく教育など受けられなかったテロリストたちと、教養にあふれた人質たちの間に不自然ながらも親子や師弟のような交流が芽生え始め、人質とテロリスト同士が打ち解けてサッカーに興じるなど、打ち解け始めたの矢先に政府のテロ制圧部隊の突然の突入で呆気なく、テロリストは制圧されてしまう。

監督は「アバウト・ア・ボーイ」でアカデミー脚色賞にノミネートされたポール・ワイツ。

見逃し配信バナー

「ベル・カントとらわれのアリア」の感想

Alex PhillcによるPixabayからの画像

ネタバレご注意!

各国要人が集まっている副大統領公邸が突如テロリストに占拠されてしまうという惨劇はどこの国でも起る可能性は否めません。テロリストは当初、大統領本人が出席しているものと予想していていましたが、大統領はその日のパーティーをドタキャンしていた為、難を逃れる事が出来ました。大統領が不在であった為、政府側としてはテロリストの要求である、彼らの現在拘留中の仲間の釈放には全く応じていません。政府のとしては人質全員が犠牲になったとしても、テロリストの要求には応じる気持ちは無かったと思うと、タイミング次第では人質側の犠牲者がもっと増えた可能性が大きかったのではないか。 万一、大統領自身が人質になったと仮定すれば、政府としては大統領の命救出が第一優先で、人質の要求に応じていた可能性は高かったと思われます。

テロリストの中には10代の青年、若い女性も多く参加しており、彼らは戦闘訓練を十分に受けたテロ組織の一員ではありませんでした。見張り番役の女性は深夜居眠りをしているのが仲間に見つかり、隊長には報告しないで欲しいと懇願しています。やはり背景には貧困問題、初等教育も受ける機会が無いなど差別問題等があり、テロ参加にやむに已まれぬ理由があったのだろうと想像されます。本作品の中では、これらの背景をもう少し掘り下げる描写が一切省かれているところは少し残念な気がします。

それ以上に、テロリストが垣間見せる、余りに濃い人間味の一面が目立ち、彼らの最期の結末を想うと逆に哀れさが際立っています。最終的にはテロリスト全員が非業の死を遂げます。彼らの要求はひとつも受け入れられていません。なぜ、テロ事件が発生したのか、社会的背景にある問題解決に向けて政府が何らかの策を少しでも施した事も聞こえてきません。

凄惨なテロ事件の最中、ソプラノ歌手ロクサーヌ・コスの歌声で、殺伐としたテロ現場が一瞬にして、緊張がゆるみ、テロリストと人質の間では交流の話が広がっていくという想像も出来ない展開はほのぼのとした雰囲気でした。しかし、それも束の間、呆気なく、政府軍に拠る一瞬の制圧ですべてが本当に終わってしまいました。

本来国家権力とそれに反対する極一部の武装組織との関係は、この映画の様に単純に排除されるだけの存在に過ぎないもの、存在意義すら一切認めてはならないものなのかも知れませんが、彼らも血の通った人間であることだけは、認識の出来る映画だったと思います。

正直、ストーリー展開の80%は予想だにもしなかった、徐々に和気藹々とした交流に向かう後方で描かれていますが、ラストはあまりに凄惨な展開に心が痛みました…

最後に

Carlos ChirinosによるPixabayからの画像

渡辺謙と共演しているジュリアン・ムーアは凄い女優ですね。2002年に『エデンより彼方に』にてヴェネツィア国際映画祭女優賞を受賞し、翌2003年には『めぐりあう時間たち』でベルリン国際映画祭女優賞を受賞した。2014年にはカンヌ国際映画祭女優賞を『マップ・トゥ・ザ・スターズ』で受賞したため、世界三大国際映画祭すべての女優賞を制覇した。

また、2014年公開の『アリスのままで』で第72回ゴールデングローブ賞の主演女優賞(ドラマ部門)および第87回アカデミー賞の主演女優賞を受賞。アカデミー賞ノミネートされる常連ですが、この作品が初めての主演女優賞受賞だったそうです。

『めぐりあう時間たち』だけは見ましたが、他作品はまだ見ていません。これを機会に鑑賞してみたいと思います。

本作品では歌の吹き替えは、『シェイプ・オブ・ウォーター』の挿入歌「ユール・ネヴァー・ノウ」でも知られる当代随一のソプラノ歌手ルネ・フレミングが担当したそうですが、ムーアの口パクながらも徹底した役作りをみるのも見ものでした。

コメント

タイトルとURLをコピーしました