『Summer of 85』のあらすじと概要
フランス映画界の名匠フランソワ・オゾンが、若かりし日に読み、その後の人生に影響を受けたというエイダン・チェンバーズの小説「おれの墓で踊れ」(監督自身に『いつか長編映画を監督する日がきたら、その第一作目はこの小説だ』と言わしめた程衝撃を受けた作品)を映画化し、16歳と18歳の少年の人生を変えた、忘れられないひと夏の恋物語を鮮やかに映し出す青春映画。
鮮やかな海辺の風景と、80年代の懐かしいメロディーに包まれた世界が再現されています。映画を象徴する重要なシーンで流れる、1975年にロッド・スチュワートがリリースした「Sailing」のリズムと歌詞が作品のイメージに合致するとして、こちらもオゾンたっての希望により採用されたそうです。突然ヘッドフォンから聞こえて来る素晴らしい曲にハッとさせられますが、その場の雰囲気とは’アンマッチ’、将来の彼ら二人の間の不協和音を暗示しているよう!
1985年の夏フランス・ノルマンディーの海辺の町(ル・トレポール)が舞台。セーリングを楽しもうとヨットで沖に出た16歳のアレックスは突然の嵐に見舞われ転覆してしまいます。たまたま傍をヨットで通り掛かった18歳のダヴィドに救出される。その後2人は友情を深め、それはやがて恋愛感情へと発展、アレックスにとっては、それは初めての恋となりました。
そんな2人は、ダヴィドの提案で「どちらかが先に死んだら、残された方はその墓の上で踊る」という誓いを立てます。
そんな彼ら二人の運命は、一人の女性の出現を機に、歯車が狂い始め、恋焦がれた日々は突如終わりを迎える。嫉妬に狂うアレックスとは対照的に、その愛情の重さにうんざりするダヴィドは態度を豹変させる事が原因となり、”悲劇”が起こります。
ダヴィドの不慮の事故により、2人の時間は終わりを迎えます。生きる希望を失ったアレックスを最後に突き動かしたのは、ダヴィドとあの夜に交わした誓いだったのです。
主演は、オゾン監督がオーディションで見いだしたフェリックス・ルフェーブルとバンジャマン・ボワザン。第73回カンヌ国際映画祭オフィシャルセレクション選出作品。
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『Summer of 85』のスタッフとキャストについて
フランソワ・オゾン監督・脚本:1967年生まれ、フランス・パリ出身。フランスを代表する女優が勢揃いした豪華キャストで話題となった「8人の女たち」(02)や「スイミング・プール」(03)など、女性主人公の心理描写で高い評価を獲得する。監督自身ゲイである事を公表しており、作品の多くで同性愛を扱っています。女性を主人公にした作品も多く、女性の心理描写に定評がある。
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本作品で、第69回ベルリン国際映画祭で銀熊賞(審査員グランプリ)を受賞しています。
フェリックス・ルフェーブル(レックス):1999年フランス/ヴァル=ド=マルヌ県出身。彼らははオゾン自らオーディションで見出した注目の若手俳優、進路に悩む16歳のシャイな高校生役。
バンジャマン・ボワザン(デヴィド):1996年生まれ。俳優だけでなく脚本家としても活動する若手注目株母親が切り盛りする船具店で働く18歳。アレックスとは対照的に、アグレッシブで刹那的な生き方をしている役。
『Summer of 85』のネタバレ感想
フランス・ノルマンジーの海岸の陽光降りそそぐ、青い海の小さな町を舞台に、僅か6週間で終局を迎える男同士の”初恋”物語を描いています。(ネタバレ)最後に交通事故死という悲惨な結果になりますが、主人公レックスは深い悲しみのどん底に衝き落とされもがき苦しみますが、やがて、回生の道を歩み始める雰囲気で映画は終わります。
男同士という事に関しては、何とも口を挟み難いのですが、たまたまある切っ掛けで知り合い、意気投合した友人が、関係が自然に深まり、初恋となっていく!その対象がたまたま”男性”だったという事なのだと思います。
何とも口幅ったい言い方で感想の言い様もないのですが、フランソワ・オゾン監督ならではの美しい映像、見る人を惹きつけるストーリー展開の見事さ、主人公アレックス16歳の心理描写など見応え十分な作品でした。
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