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新規公開中 おすすめ映画『トリとロキタ』(2022/ジャン=ピエール・ダルデンヌ&リュック・ダルデンヌ兄弟監督)感想‣理不尽な移民問題をしぶとく睨み告発する!

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『トリとロキタ』のあらすじ概要

ベルギーの名匠ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ兄弟が、アフリカからベルギーに流れ着いた偽りの姉弟の強い絆と過酷な現実を描いたヒューマンドラマ。

アフリカから地中海をわたってベルギーのリエージュにやって来た少年トリと少女ロキタ。偽りの姉弟として生きる2人はどんな時でも一緒で、年上のロキタは社会からトリを守り、しっかり者のトリは時々不安定になるロキタを支えている。10代後半のロキタはビザがないため正規の職に就くことができず、イタリア料理店でカラオケを歌うアルバイトをしていました。更にその店のシェフベティムが仕切るなんとドラッグの運び屋をして金を稼ぎ、母国の母親に送金しています。また、ロキタは偽造ビザを手に入れるため、さらに危険な麻薬ビジネスに関わる仕事を始めますが……。

本作が演技初経験のパブロ・シルズとジョエリー・ムブンドゥがトリとロキタを演じました。2022年・第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、75周年記念大賞を受賞。

2022年製作/89分/ベルギー・フランス合作

原題:Tori et Lokita

『トリとロキタ』のスタッフとキャストについて

ジャン=ピエール・ダルデンヌ&リュック・ダルデンヌ兄弟監督・製作・脚本「イゴールの約束」「ロルナの祈り」「午後8時の訪問者」と、地元ベルギー社会にも欧州の今、世界の今にも深刻な影を落とす移民問題をしぶとく睨んできた兄弟監督として知られています。

アフリカからの親のいない移民の子供は18歳でビザがもらえないと強制送還されるので、ビザのない若者は闇社会に行かざるを得ないという現実を知り、また、数百人単位の16~17歳の子どもが消息が分からなくなっている事に、世間の人々は無関心であること、そのことに憤りを感じたことが、本作製作のきっかけであると語っています。

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パブロ・シルズ(トリ):ベルギー出身の13歳。撮影当時は12歳。すばしっこく動き回り非常に理知的な少年役。

ジョエリー・ムブンドゥ(ロキタ):ベルギー・ブリュッセル出身の18歳の高校生。弟代わりの少年トリと共に逞しく生きる少女役。理不尽な社会で二人で何とか浮かび上がろうと努力をするが世間の荒波は余りに残酷…

ロキタは何度もビザ取得の為の面接を受けますが、失敗しビザ取得が叶いません。仕方なく、ドラッグの運び屋をして支え合う“姉弟”はレストランでカラオケを歌い小銭を稼いでもいました。

『トリとロキタ』のネタバレ感想・見どころ

ネタバレ有り、ご注意!

今年3月31日に劇場公開され、一刻も早く観てみたいと思っていました。漸く本日劇場に足を運ぶことが出来ました。以前見た『ロゼッタ』『サンドラの週末』などで有名です。英ケン・ローチ監督と同じくたいへん硬派である社会派映画のジャン=ピエール・ダルデンヌ&リュック・ダルデンヌ兄弟監督の作品であり、本作品でも移民問題の理不尽さを強烈に掘り下げ、100%見事に白日の下に晒け出していました…更に、単に社会派映画に留まらず89分という充実したサスペンス映画としてのエンターテイメント性にも優れ、映画ファン必見の作品となっています。

移民の12才の少年や18才の少女がドラッグの売人をやっていました。18才の少女はビザ取得が出来ず闇ビザ取得の為に更に危険な大麻の栽培という地下植物工場で反強制的に働かされるというシーンを見せつけられて、憤りを感じない視聴者はいないと思います。ドラッグ取引の親玉はベルギーのイタリアンレストランのシェフでした。僅かな手数料の残り物の゛ホカッチヤ”を分けて貰い、極めて危険な不法取引に巻き込まれていく様子が仔細に描かれていきます。更に、アフリカからの移民の手助けをしたという同国人夫婦にも執拗に纏わりつかれ、国の母親に弟らの学費を送金する為に貯めた大切なお金まで絞り取られるという現実には目も当てられません。

大麻の不法栽培゛工場”の環境は劣悪でした。ロキタは外部への連絡手段としての携帯電話のSIMカードも抜きとられ、扉は厳重に施錠され、抜け出す事は絶対に出来ないという環境で日夜働かされていました。すばしっこいトリはこの工場への侵入をまんまと成功させますが、この事がゆくゆくはロキタの運命を暗転させることになってしまうのは非常に気の毒で堪りません…

ベルギーだけでなく、EU全体で移民の子たちが職業訓練校に通い、手に職をつけられるように法律を変えるべきだと思うのですが、そういった法律はまだ存在しません(監督へのインタビュー記事)

本作品が政治・社会を動かす原動力になる事を期待したいものです。

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