今回は成都から峨眉山、楽山の2か所を訪問する「バスツアー」(一泊二日)に参加しました。既に楽山大佛は一度訪問していたので、楽山抜きで峨眉山のみの単独コースに申し込もうと探しましたが、ツアー本数が少なく今回のコースに決めました。
「峨眉山と楽山大佛]へのアクセス
楽山は成都の南方170㌔(バスで約2時間)に位置します。楽山訪問後、近くの「大佛禅寺」に参詣、その晩はホテルに一泊後、いよいよ翌朝待望の「峨眉山」を目指しました。前夜夕刻、宿泊したホテルから峨眉山山頂(標高3099㍍)の建物・仏像などの夕景に映えるシルエットを肉眼で確認することができました。(下の写真を注意深くご覧ください)
「峨眉山と楽山大佛」の見どころ
「楽山大佛」
楽山大仏は岷江、大渡河、青衣江の合流地点にあり、洪水などの被害を抑えることを祈願する目的で、90年もの年月を掛けて、凌雲寺の近くにあった川に臨む崖に仏像が彫られたものです。803年に完成した磨崖仏で、既に1,200年以上もこの地に佇んでいる古さに驚きます。
他の仏像に比較して、顔の表情は荘厳さというよりは何処となくユーモラス感を漂わせています。なによりも一人の僧が90年もの心血を注いだ労作であり、一見の価値があります。
なお、楽山名物“跷脚牛肉” (qiáojiǎo niúròu)という庶民的料理は絶対に見逃せません。牛肉のあらゆる内臓の部位を煮たもので、あっさりしたスープに浸し、四川特有の唐辛子、山椒、ナッツ、塩などのスパイシーなタレに付けて食べる伝統料理です。
一般的なバスツアーはあまり高価な名物料理を食事に提供する事はありませんが、今回は名物とはいえ庶民料理の一つなのか、美味しい”跷脚牛肉”を大皿で提供してもらいました。かなりの大盤振る舞いです。
「峨眉山」
日本人でもおそらく「峨眉山」という山名を聞いた人は多いかも知れません。中国四大仏教名山(五台山、九華山、普陀山、峨眉山)の一つであり、中国三大霊山(五台山、天台山、峨眉山)の一つにも数えられている有名な山です。
山中に26の寺院を擁し、普賢菩薩の霊場でもあります。
1996年に楽山大仏と一緒に世界複合遺産として登録されました。頂上の万仏頂の標高は3,099㍍もの高所に有ります。
既に後漢時代より山中寺院は建設が開始されて、南宋時代に最盛期を迎えたと伝えられています。頂上直下の3077㍍地点にある金頂の華厳寺の参詣を目指して多くの観光客が登っています。
峨眉山登山の前日、楽山観光の後に途中の宿泊施設にほど近い「大佛禅院」(世界最大の寺院?)に立ち寄り参観しました。この寺の食堂で 一杯の「けんちん汁」をご馳走になりました。本当に日本のけんちん汁に味がそっくりで、薄い塩味のスープの中に野菜、イモ、ごぼうの味が良く染みており、お代わり自由でした。実際寺内では何汁として提供されているのか聞き逃しました。
2杯目もゆっくりご馳走になり、帰る準備をして食堂の出口に向かおうと、後ろを振り返ると、食堂の後方の席に、食堂に入る時にまだ一人もいなかった寺で修業している僧侶の一団が少なくても100人位着席しており、沈黙の中同じ「けんちん汁」を食べているではありませんか、、、
すっかり観光客用のけんちん汁とばかり思っていましたが、修行僧も同じものを、同じ食堂で食べていることに驚きました。
もしかすると、現在日本で食べている「けんちん汁」の源流はこの辺りのお寺であるのではないかと考えました。
帰国後、改めて、けんちん汁のルーツをちょっと調べて見ました。鎌倉県建長寺の修行僧が作ったので「建長汁」がなまって「けんちん汁」になったとか、普茶料理(中国から伝わった禅寺の精進料理)の巻繊(ケンチャン)が日本化して、漢字で「巻繊汁」となったなどの説がある様です。いずれにしろ、禅宗のお寺ではごく普通に食べられている料理であることがわかりました。
宿泊地は楽山と峨眉山の中間地点にある新興リゾート地域に立つ立派なホテルでした。ホテルとレストランが多数立ち並び密集している地区にあります。
ここからは明日登る峨眉山のシルエットがくっきりと夕日の沈む西方に浮かび上がっていました。頂上にある鋭角的なシルエットの建造物の屋根までくっきり見えていました。
翌朝は御来光を拝む為、夜明け前の真っ暗なうちにホテルを出発、峨眉山に向かいました。早起きした甲斐もあり、見事な日の出と雲海を眺める事が出来ました。
ロープウェイを降りた時点でガイド及び他メンバーとも別れてばらばらになってしまったので、登山者の流れに沿って頂上を目指してグループメンバーとは離れて単独で歩き続けました。
山は普賢菩薩の霊山であり、普賢菩薩の使いである白い象の巨像が置かれているのが印象的です。頂上に近づくと真っ先に目に入ってくるのが黄金に輝く眩い四面十方普賢金像です。その後ろのこれまた黄金に光り輝く金頂です。標高3,000㍍を超える山のてっぺんにこれほど大規模な黄金の像と荘厳な建物を建設するところが、全く日本人の発想にはあり得ません。
まるで、富士山山頂に奈良東大寺大仏殿が建てられているようなものです。
通常標高3,000㍍を超えると、厳冬期の風雪は想像を絶する厳しさだと思われますが、峨眉山の冬期の山頂はそれ程、厳しい強風、豪雪に襲われる事は無いのかもしれません。
頂上には正味一時間以上は留まり、雲海を眺め、金ぴかの像や金頂にため息をつき、金頂堂内を参観して過ごしました。雲海に囲まれた山頂が島の様に浮かび、現世と違う異次元の空間を彷徨う感じがしました。
頂上の金頂参拝に十分な時間を費やした後、三々五々集まり始めた他ツアーメンバーと一緒に下山を開始しました。下山は途中までロープウェイを利用し、そこから下は階段を徒歩で下山します。
山中の幾つもある寺を参観しながらゆっくりと下山して行きます。この間ずっとガイドが先導してくれたので道に迷うことなく順調に下りてくることができました。
最後におまけですが、天然の猿が多数棲息する生態猿棲息地区を訪れます。人気スポットらしく、ほとんどのツアーのルートに組み込まれていました。谷川沿いの遊歩道をしばらく登って行き、見られたのは対岸の崖に生息する野生の猿2,3匹だけだったので多少”がっかり”しました。
ガイドからは峨眉山の野生の猿は大変凶暴で観光客の携帯電話や手持ちの食料を奪われたりするケースが多いので注意したほうが良いとアドバイスを受けました。しかしながら、今日はこのチンピラ猿集団は山奥深く隠れている様でした。
また、万一猿に持ち物を奪われた際の保険求償の為に「猿保険」への加入を勧められました。これは加入する必要ないと思います。
また、リュックは背中に背負うと猿に引っ張られるので、手前で持ち腹に抱え込めとのアドバイスも受けました。しかしリュックを腹に抱え込んだ状態で石段を下ると、急な坂道では足許が全く見えず、かえって転倒する危険があります。急坂を下る際はいつも通り背中に背負った方が無難です。
ついでに「成都」
その日の夜、成都に無事帰着しました。翌日の長沙行きのフライトは夜出発予定だった為、ほぼ出発前の丸一日成都見学をすることができました。成都は1990年代に出張で初めて訪問して以来、何度も訪問している町です。
当時は成都の取引先と話をしても、北京語を話しているのはわかるのですが、イントネーション(いわゆる四声)が北京語と全く異なる”四川語”の為、何を言っているのかさっぱり理解出来ず困惑しました。
成都の街はその後、猛烈な速さで発展し大きな変貌を遂げています。最近訪れる成都の新開発地区はまったく知らない都市に来たような感覚を受けます。
以前、杜甫草堂と武侯祠を訪問しました。 今回行った武侯祠は30年前とすっかり変わって、敷地内の展示類も非常に見学しやすくなっていました。
驚いたのは、この武侯祠に隣接する有名な地元若者のデートスポットである「錦里古街」という、みやげ物屋や食べ物屋が古い街並みを再現して新たに作られた観光スポットが出来た事です。 売られている食べ物もなかなか工夫がこらされて、どれも美味しそうでした。
更に、成都市内で少し離れたところに、昔から残されていた横町として有名な「寛窄巷子」という地域があります。濃厚な歴史を今日に伝えていますが、現在では完全に再整備されており非常にオシャレな、「古民家」を中高級レストランに改造した店舗などが多数営業しており、たいへん興味深い地域となっています。
2名以上のグループで訪問した場合は雰囲気の良いレストランに入りテーブルを確保し、本格的な料理を注文してもいいのですが、大きなテーブル席ばかりなので、残念ながら1人旅だとこれらレストランに入る事はちょっと躊躇されるので残念です。
雑記
この「寛窄巷子」から出て歩道を歩いていると、(9月頃)籠にイチジクを載せて売っている人を多く見掛けました。 四川盆地は果物の産地としてもたいへん有名です。この時期のイチジクの値段は1斤(約500g)わずか10元(約160円)だったので、買い求めました。大ぶりのイチジクが1斤6,7個はあります。皮はとても薄く、果肉は柔らかく、甘く、水気たっぷりで、一気に全部ぺろりと食べてしまいました。
わたしは果物が大好物です。成都のイチジクの味は絶品です。果物好き人は、街中で籠に盛られて売っていたら、是非買って食べてみてください。本当は洗ってからホテルの冷蔵庫で少し冷やせばもっと美味しく食べられるかもしれません。
なお、しばらく歩くと別の売り子(おじさん)は1斤8元という看板を立てていました。値段もまちまちなので、色々聞いて安い所で買うのが良いと思います。おそらく値段に関係なく味はどれも一緒だと思います。勿論差額は2元{=30円)なので大した差ではありませんが…(若干気になる程度です)
この同じイチジクを諸葛亮孔明も食べていたのかと考えるだけで何となく楽しくなりますね!
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