福建土楼は「福建省南東の山岳地帯にある複数階の大きな建築物で、大集団がそこで生活、防衛し、土壁と木の骨組みで創られている」と定義されています。福建省におよそ20,000か所土楼が存在し内3,000か所が世界遺産に登録されています。「客家」他の人々が12-20世紀にかけて建設して現在も人々が生活をしている特殊建築物です。厦門(アモイ)西方の山間部に多く点在しています、今回訪れたのは龍岩市永定県にある「承啓楼」(別名 土楼の王)を中心とする地域「高北土楼群」です。
「日本人が訪問したい中国の世界遺産の中で人気は常にTOP3」を占めていました。
また、「日本の記念切手」などに以前土楼のイラストのあるものが発行されるなど、その独特な円形の大規模集合住宅の存在は知っていました。ようやく訪問する機会がきました。
「福建の土楼」へのアクセス
厦門からは永定県の高北土楼以外に南靖田螺を目的地としたコースも有名ですが、どちらか一つ自分の好みで選択すればよいと思います。但、日帰り観光バスでは時間の関係からか2か所を周回出来るコースはありませんでした。
厦門から高速道路を途中まで利用して約3時間(実際はもっと短い)の行程となります。中国国内でも人気観光スポットであるので、事前に予約し席を確保する必要がありますが、出発するバスの本数も相当な数で、ツアー参加希望者が多ければ、人数に応じてすぐに随時増便がされる体制にあると思われます。
「福建の土楼」の見どころ
わたしが乗ったツアーバスは高速道路の約200㌔の道のりをフルスピードで猛然と疾駆し、厦門発の他の観光バスを抑え、目的地の土楼駐車場に一番乗りを果たしました。
見学を開始した時間帯は、土楼内を見学する観光客はまだほとんど到着していない為、土楼内をゆったりと見学する事ができました。
土楼内は現地ガイドについて回ります。ガイドは説明終了後に自分の家族が経営している茶店にツアー一団を誘導し、無料のお茶を振る舞い、最終的にほ私以外のほぼ全員が(強制ではありませんが)お土産のお茶を買っていました。したたかな商法です。
確かに福建省は烏龍茶の生産地としてたいへん有名です。淹れて頂いたお茶はとても美味しかったのですが、茶葉は購入しませんでした。わたしの過去の経験で現地で淹れたお茶の味は、日本に同じ茶葉を持ち帰ったとしても、「水」や「お湯の温度」が違うと、同じ味は絶対に再現出来ない事を何度も経験していたからです。
実際に現地を訪れて驚いた事は、話に聞いていたとおり、現在でも土楼の中で日常生活を営む住民の方が大勢いるという事です。見学者は自由に土楼の中に入り見て回る事ができますが、その傍らで炊事、洗濯、掃除など普段の生活がある事にお驚きました。
訪問した内の一つの土楼は大きい2層構造で4階建て、部屋の数は外円184部屋、内円32部屋の216部屋も有るそうです。往時数百人が一つの土楼で暮らしていたそうです。
最初の土楼を見学してしばらくすると、ほぼ同時刻に厦門市内を出発したと思われる大型観光バスが続々と到着し始めました。土楼内の狭い通路は観光客でごった返し始め、通路はどこも観光客が溢れて右往左往し、大混雑してきました。土楼内部は観光客の熱気と通風の悪さで住環境はそれほど好いとは言い難いものがあります。
福建省内には20,000か所の土楼がありますが、実際は人気の土楼に観光客は集中する様です。私の印象では厦門を出発したすべての土楼見学のバスがこれらの1,2カ所の人気土楼に集中している様な感じを受けました。真夏日の暑さ(訪問時期7月末)と、人の多さで身動きがまったく取れません。
承啓楼は写真を見ていただけば外観、内部とも良く分かって頂けると思いますが、4階建ての土で出来た城塞そのものの共同住宅です。窓は、外敵の防戦用に極めて少なく、高い位置に小さく設置されています。内側は回廊式の共有スペースが取られ、炊事洗濯等全て内部でこなせるような生活空間があります。
しかしながら、防御の目的は果たせても、円形建築、小さく少ない窓では、通気性が恐ろしく悪く、亜熱帯性気候の福建省の内陸部で暮らしていくにはかなり忍耐力が必要なのではないでしょうか。やはり、訪問に適した時期は夏期を避けるのが良いと思います。
ネット上の情報ではこの土楼を宿泊施設に公開しているところも有るらしく、涼しい季節を選んで興味がある人は宿泊体験をするのもいいかも知れません。
最後に
確かに本当に珍しく、ユニークな建築物だと思います。大家族で一つ屋根の下という意味では、飛騨高山の合掌作りの家屋に似通ったところがあります。しかしながら、全く違うところは土楼は恐るべき外敵を排除するための完全防備の「大城塞」でした。
繰り返しになりますが、夏を避け涼しい季節に厦門と土楼を併せて訪問されるのがおすすめです。
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