なぜ、この本を読んだのか
今年の本屋大賞ノミネート作品10冊のうちの一冊。人生の最後に食べたいおやつは何ですか?という問いは本書の題名「ライオンのおやつ」とどうやって結びつくものか当初は見当が付かなかった。読みはじめてすぐに、百獣の王ライオンにがぶりと食べられてしまう可哀想な獲物の小動物の話ではないことが分かり少し安心して読み進めていくことが出来ました。ただ、癌に冒され余命宣告を受けた雫さんが最期を迎えるホスピスでの生活風景を描写されているので、最後はどうなってしまうのか新たな不安が募りました。
この本を読んだあらすじ・感想
癌を患い余命宣告された主人公雫(しずく)は、瀬戸内海の島にあるホスピスを終の住処として選び引っ越してくる。そこでは毎朝365日違うお粥が出され、日曜日には入居者たちひとりひとりがリクエスト出来る思い出のおやつをみんなで食べる「おやつの時間」があった。穏やかな瀬戸内の自然のなかで日々を過ごし、他の入居者や犬の六花、心惹かれる人と出会うことで、雫は自分を穏やかに見つめ直しながらやがて安らかな最期を迎える。
ホスピスではまず最初にマドンナというお世話係兼施設責任者に暖かく迎え入れて貰うことからストーリーが始まります。2人の会話の中で「死」とはこっちの世界からあっちの世界へいく戸を潜る様なものだと表現されていました。死とは単に戸を跨いであちらの世界に行くこと、機会があれば又生まれ変わってこちらの世界に戻ってくるだけ…何と達観した考え方か。堅苦しい言葉で仏教の『輪廻』という言葉を聞いたことがありますが、本書の様ソフトな本で言われると何の違和感も無く、言葉のままにそんなものなのかと理解出来てしまうから不思議です。
まだ真剣に自分の死を考えた事はありませんでしたが、この小説は死の不安を少し軽くしてくれるような気がします。この小説のなかでは、主人公雫はごく自然に余り恐れる事も無く、自然に死を受け入れているように描かれています。癌治療もなすすべもなく、日に日に体力が落ちてくる様子も描かれ、生への執着心も弱まっているのかも知れません。
世間の客観的な意見はどんなものがあるのか
『入居者たちの選ぶ最期のおやつと、そこから見えた人生に涙が溢れた。温度ある言葉が心に響く。人の幸せはどれだけ周りの人を笑顔に出来たかで決まるという。死を前に人は無力だと思っていたけれど、今後考えを改めないといけないかもしれない』
『一番心に響いた言葉は”思いっきり不幸を吸い込んで、吐く息を感謝に変えれば、あなたの人生はやがて光り輝く”』
『自分で命のありようを決めることができない、だから死ぬまで生きるしかないと、限られた命を力強く生きる姿に応援したくなった。悲しい話で切ないけど温かみも感じた』などなど。
感想が寄せられているが、多くはどれもこれも多くの絶賛の感想が寄せられています。
この本はどんな人に読んでもらいたいのか
老若男女すべての人に一読をお勧めします。誰しも死に対するうっすらとした不安は抱えているのではないでしょうか。わたし自身「死」について真剣に考えたことはありません。どことなく不安はありますが、死と直面して平静をたもてるか不安を抱えていました。しかしながら、本書を読むと雫の生き方が余りに自然体で、達観していると同時に周囲の方々の温かい目に見守られている事が羨ましくなる様な最期だったと思います。
死は扉を開いてあちらの世界に行くだけ、また、扉を開いて生まれ変わってこちらに戻ってくれば良いという言葉にどれだけやすらぎを覚える事だろう。
その為にも、現在の生を思いっきり輝かせて、また、周囲を明るくすることがどれほど大事な事か本書を読めば少し分かる気がします。
本書の内容は悲しい出来事のストーリーですが、何故か読後感は爽やかさが残り、大きなやすらぎを与えてくれるのではないでしょうか!
同じ作者のおすすめの本はあるのか
好きな料理を題材として執筆した小説『食堂かたつむり』が、06年の第1回ポプラ社小説大賞にて入選こそ逃したものの編集者の目に留まり、編集者と二人三脚で作品を完成させて2008年1月に出版、念願の小説家デビュー。同作はTBSテレビ『王様のブランチ』のBOOKコーナーにて絶賛を受け「第7回輝く!ブランチBOOK大賞・新人賞」を受賞、売上部数82万部を超えるベストセラーとなり、2010年に富永まい監督、柴咲コウ主演により映画化される。
2010年12月に発表された小説『つるかめ助産院』はNHKでドラマ化され、仲里依紗主演で2012年8月から10月まで放送された。
2017年には『ツバキ文具店』が本屋大賞2017にて第4位となり、NHKにて多部未華子主演でテレビドラマ化。
2018年には『キラキラ共和国』が本屋大賞2018にて第10位を受賞。
残念ながら私はライオンのおやつ以外まだ読んでいません。早く他の著書も読まなければ、、、
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