『ヒューゴの不思議な発明』のあらすじと概要
世界各国でベストセラーとなったブライアン・セルズニックの児童書・冒険ファンタジー小説「ユゴーの不思議な発明」を、マーティン・スコセッシ監督が初めて3Dで映画化した作品。
パリ・モンパルナス駅の時計台に隠れ住む孤児の少年ヒューゴの冒険を、「映画の父」として知られるジョルジュ・メリエスの映画創世記の時代とともに描き出す。1930年代のパリ。父親の残した壊れた機械人形とともに駅の時計塔に暮らす少年ヒューゴは、ある日、機械人形の修理に必要なハート型の鍵を持つ少女イザベルと出会い、この鍵を幸運にも手に入れた事により、機械人形は動き出し、文字ではなく絵を描き始める。
出来上がった絵には、月にロケットが突っ込んでいる様子が描かれており、それはかつてヒューゴの父が語ってくれた“ある映画”のストーリーそのままであった。そして最後に機械人形は、絵の隅に“ジョルジュ・メリエス”とサインした。するとイザベルが「それ、パパ・ジョルジュの苗字だわ!」そこから映画創成期の歴史が紐解かれていきます。
主人公ヒューゴを演じるのは「縞模様のパジャマの少年」のエイサ・バターフィールド。イザベル役に「キック・アス」「モールス」「早熟のアイオワ」のクロエ・モレッツ。2012年・第84回アカデミー賞では作品賞含む11部門で同年最多ノミネート。撮影賞、美術賞など計5部門で受賞を果たした代表作。
なお、本作品にはジョニー・デップは出演しておらず、プロデューサーとして参加しており、彼の設立した映画制作会社「インフィニタム・ニヒル」もGKフィルムズと共に制作を行っています。
『ヒューゴの不思議な発明』のスタッフとキャストについて
マーティン・スコセッシ監督:アカデミー賞最多5部門受賞(撮影賞、美術賞、視覚効果賞、録音賞、音響効果賞)
「タクシードライバー」「レイジング・ブル」「グッドフェローズ」、そして「ディパーテッド」。多くの暴力映画の傑作を世に送り出してきた巨匠マーティン・スコセッシだが、今回は原書が児童書というファンタジー映画に挑戦した新たな代表作となった。
しかし、製作の直接的なきっかけとなったのは「自分の娘のために1本くらい撮るのも悪くないんじゃない?」という妻の一言だったということを後の映画雑誌インタビューで明かしています。
エイサ・バターフィールド(ヒューゴ・カブレ):映画出演2作目の「縞模様のパジャマの少年」(08)で主演を務め、英国インディペンデント映画賞の有望新人賞にノミネートされた。以降、マーティン・スコセッシ監督の本作品3Dファンタジー「ヒューゴの不思議な発明」(11)、人気SF小説の映画化「エンダーのゲーム」(13)、ティム・バートン監督作「ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち」(16)と話題のハリウッド大作の主演に続々と抜てきされ、
クロエ・グレース・モリッツ(イザベル):映画「(500)日のサマー」(09)を経て、「キック・アス」(10)のヒットガール役で大ブレイク。ジェニファー・ローレンスの妹役で出演した「早熟のアイオワ」が印象的。
撮影当時15歳。アメリカ・アトランタ出身の彼女は、本作品内では本格的なイギリス英語を完璧に駆使したそうだ。
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ベン・キングズレー(パパ・ジョルジュ):伝記映画「ガンジー」(82)でインドの独立運動の指導者であるマハトマ・ガンジーを演じ、アカデミー主演男優賞をはじめ数多くの賞を受賞し、映画界でも大きな注目を集める。スティーブン・スピルバーグ監督作「シンドラーのリスト」(93)では、ユダヤ人の会計士を演じた。
本作品ではサイレント映画時代の伝説的な映画人役を演じる。
『ヒューゴの不思議な発明』のネタバレ感想
機械仕掛けの機械人形が一本のキーを差し込むだけで動き始める瞬間は驚きました。非常に夢のある世界で、住むところが駅構内の迷路のような、油まみれの機械時計の裏部屋という設定も、もし子供の頃この映画を見たなら、この世界にはまり込みそうです。
機械人形が描き始めたのは文字ではなく、一枚の絵でした。映画のポスターは一シーンを切り取った様な絵でした。出来上がった絵には、月にロケットが突っ込んでいる様子が描かれており、それはかつてヒューゴの父が語ってくれた“ある映画”のストーリーそのままでした。そして最後に機械人形は、絵の隅に“ジョルジュ・メリエス”とサインまでするという万全の仕掛けでした。
少々ややっこしいストーリーの展開ですが、イザベラの父親(パパ・ジョルジュ)が機械人形の製作者であると同時に映画の幕開け時代に大活躍した人物であった事が徐々に解明されていきます。世界で最初の映画は蒸気機関車がスクリーンから観客席の方に飛び出して来るシーンだったそうです。初めて映画を観賞する人はびっくり仰天したのではないでしょうか? ヒューゴがプラットフォームから線路に転落するシーンを夢で見ますが、これと同じように、初めて映画館で蒸気機関車が客席に飛び出して来るのではないかというシーンを見た人の多くも、間違いなく毎晩悪夢にうなされた筈!
映画で活躍するひとりの人物が、俳優であったり、手品師だったり、機械人形の発明者だったりと大活躍しているのには驚きました。やはり、映画の黎明期も人を驚かせる、映画という仕掛けを使って人をびっくりさせてやろうという所は映画=手品=からくり機械装置など相通じるところがあった事が良く理解できました。
また、主人公の少年ヒューゴは駅の公安官に四六時中追い回され、孤児院に送られる恐怖感に震えています。また、昇降客でごった返す駅構内が舞台ということで、常に人波に逆行して追われるシーンが多用されています。このあたりの演出も映画に動き・躍動感を与えるものです。
また、3Dを駆使したシーンとしては、モンパルナス駅に停車出来なかった蒸気機関車は駅構内を突き抜けて、外まで暴走してしまうシーンがありました。直後に夢であったと分かりますが、現在ならばどんな映像でも少しの工夫(大変な努力)で実現可能なようで、もう想像の世界と映像の世界の垣根は存在しないのかもしれません。
最後に
3D(デジタル)で撮った作品ですが、スコセッシ監督はこう語っています。
100年以上にもわたって映画はセルロイドでできていた。だが、その時代は終わり、デジタルの時代になった。ぱっと聞いた感じでは何も問題はなさそうだが、一番の問題はネガが残らないことなんだ。セルロイドで保存すれば60年から100年はまずまずの状態で保存できるが、デジタルだと5~6年で消えてしまう。今のところ、フィルムに焼き付けることでしか、映画は保存出来ない
5,6年で消えてなくなるという事は無いと思いますが、良い作品は未来永劫見た人の心に刻まれていきます。
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