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映画|『サンドラの小さな家』(2020/フィリダ・ロイド監督)感想‣新鋭クレア・ダン主演・脚本の衝撃のデビュー作

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『サンドラの小さな家』のあらすじと概要

Rudy and Peter SkitteriansによるPixabayからの画像

アイルランド・ダブリンを舞台に、住居を失った若い母親と子どもたちが、周囲の人々と助け合いながら自分たちの手で小さな家を建てる姿を描いたヒューマンドラマ。

「マンマ・ミーア!」のフィリダ・ロイド監督がメガホンをとり、舞台を中心に活躍する女優クレア・ダンが脚本・主演を務めた。

2人の幼い娘を連れて虐待夫のもとから勇気を持って逃げ出したサンドラ。しかし、住宅危機に直面するダブリンでの生活は、申し込んだ公営住宅は長い順番待ちで、不便なホテルでの仮住まい生活から抜け出せない日々を暮しています。そんなある日、サンドラは娘との会話から、小さな家を自分で建てるアイデアを思いつきます。インターネットでセルフビルドの設計図を探し出し、サンドラが清掃人として働いている家のペギーや建設業者エイドの協力を得て土地を得、住宅建設申請許可などを取得して、住宅の建設に取り掛かりますが、執念深い元夫に妨害などに遭います。

一人ではできないことも、仲間の助けがあれば乗り越えられる。そんな、コロナ禍の世界に希望を与えてくれるようなテーマを、「家を建てる」ことを本当に素人の女性がやり遂げてしまう。周りの環境としては、家庭内暴力、ひとり親の貧困、ハウジングファーストなど、日本にも共通する社会問題にも鋭く切り込んでおり、「ケン・ローチを彷彿とさせる」社会派映画のクリエイターの誕生となる記念すべきデビュー作品となっています。

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共演に「つぐない」のハリエット・ウォルター、テレビシリーズ「ゲーム・オブ・スローンズ」のコンリース・ヒル。

原題:『Herself』

『サンドラの小さな家』のスタッフとキャストについて

PicographyによるPixabayからの画像

フィリダ・ロイド監督:1957年生まれ、イングランド出身の演出家・映画監督。『マンマ・ミーア! 』『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』などの代表作でよく知られる。今回は新人クレアが書いた初脚本が寡作のロイド監督に10年ぶりにメガホンを取らせることになりました。

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クレア・ダン(サンドラ)主演・脚本:シングルマザーの親友から「アパートを追い出されて行き場がなくなる」という電話を受けたことをきっかけに、「3人の子持ちの友達が家を見つけられずにいるなんて社会のシステムが崩壊している」と思ったことが、本作の脚本を執筆する切っ掛けになったと言います。更に、クレアは、今後、リドリー・スコット監督、マット・デイモン、アダム・ドライバーら共演の映画『The Last Duel』への出演が決定。「2020 年に注目すべき脚本家トップ 10」に選ばれています。

ハリエット・ウォルター(ダン):イギリスの大英帝国勲章を持つベテラン女優。(『つぐない』、『ザ・クラウン』

コンリース・ヒル(エイド):イギリスの演劇界で最も権威あるローレンス・オリヴィエ賞を2度受賞し「ゲーム・オブ・スローンズのヴァリス役でも知られる。

『サンドラの小さな家』のネタバレ感想

AngelVRfotoによるPixabayからの画像

見始めて直ぐに雰囲気的にはケン・ローチ監督の社会派映画に流れるものと同質なものを感じました。家庭の暴力夫から勇気を持って娘ふたりを連れて逃げ出し、仮住まいのホテルから通いながら、仕事・子育て・夜間のアルバイト等身を粉にして働く姿には悲壮感が漂いました。生活の基盤である公共住宅に入居できる順番が中々回ってきません。

そんなとんでもない日々の生活の中から、自分で家を建てようと考え始めるところは大変奇抜です。誰もが無理だろうと最初は思いますが、土地を無償で提供する人、他の協力者も次々に加勢してきます。このあたりは、クレアがある雑誌のインタビュー応えていますが、「ホームレスなどの社会問題のリサーチについては、本やネットでもたくさん調べましたが、最も参考になったのは出会った人々です。経済学者のピーダー・カービーに会いにエコビレッジにも行きました。そこでは住民が一丸となり、気候変動や住宅危機の解決に取り組んでいたんです。彼らは太陽光発電や天然資源、地元産の食べ物を活用していました。ピーダーからは多くを学びました。」といった様に共同作業で住民同士の協力という新たな形式共同体組織の芽生え(もともと昔からあったのかもしれませんが)が世界的に始まりつつあるのかなぁと感じました。

本映画作品とはまった違いますが、ちょうど最近読んだ本で『人新世の「資本論」』(斎藤幸平著 集英社新書)に書かれている「脱成長コミュニズム」モデルの一端を垣間見る様な気持ちになりました。

現在の社会問題の中の歪を良く理解すること、その難問を思いもつかない方法で切り抜けようとする発想、人々の善意ある協力姿勢がある事などを学ぶことで、勇気付けられる映画だと感じました。

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