映画雑誌『スクリーン』12月号、英国男優総選挙で堂々第一位に返り咲いたベネディクト・カンバーバッチ、その人気の高さが覗えます。コナン・ドイル原作のTVシリーズ『SHERLOCK/シャーロック』で人気探偵シャーロック・ホームズを演じ高く評価されたという。最近では出演映画の公開が続いています。ご紹介する『クーリエ』『モーリタニアン』に引き続き、キルステン・ダンストと共演する西部劇『パワー・オブ・ザ・ドッグ』では一癖も二癖もある残酷な冷血漢を演じているそうです。(12月1日(水)からのNETFLIXより全世界独占配信に先駆けて、11⽉19⽇(⾦)より⼀部劇場にて一般公開されることが決定しています)
- 『イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密』(2014/モルテン・ティルドゥム監督)
- 『ブーリン家の姉妹』(2008/ジャスティン・チャドウィック監督)
- 『1917命をかけた伝令』(2019/サム・メンデス監督 )
- 『ブラック・スキャンダル』(2016/スコット・クーパー監督)
- 『エジソンズ・ゲーム』(2019/アルフォンソ・ゴメス=レホン監督)
- 『それでも夜は明ける』(2013/スティーブ・マックイーン監督)
- 『クーリエ 最高機密の運び屋』(2020/ドミニク・クック監督)
- 『裏切りのサーカス』(2011/トーマス・アルフレッドソン監督)
- 『アメイジング・グレイス』(2006/マイケル・アプテッド監督)
- 『モーリタニアン 黒塗りの記録』(2021/ケビン・マクドナルド監督)
『イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密』(2014/モルテン・ティルドゥム監督)
「SHERLOCK シャーロック」のベネディクト・カンバーバッチ主演で、第2次世界大戦時、ドイツ軍が世界に誇った暗号機エニグマによる暗号の解読に成功し、連合国軍に勝機をもたらしたイギリスの暗号解読者(天才数学者)アラン・チューリングの人生を描いたドラマ。
なお、彼は、暗号解読という功績の裏で、当時同性間性行為のかどで訴追を受けているが、この苦悩についても映画に描かれている。
1939年、第2次世界大戦が始まり、イギリスはドイツに宣戦を布告。ケンブリッジ大学の特別研究員で、若干27歳にして天才数学者と称えられるアラン・チューリングは英国政府の秘密作戦に参加し、ドイツ軍が誇る暗号エニグマの解読に挑むことになる。
解読チームには6人の精鋭が集められるが、他人と協調することを嫌い、同僚を見下すチューリングは協調性を欠き、ひとり暗号解読装置の設計に没頭することになり、チューリングとチームメンバーとの間には溝が深まっていく。そんな中、チューリングを理解し、支える女性(後の婚約者)ジョーン・クラーク(キーラ・ナイトレイ)が仲間に加わる事で、彼の仲間意識に大きな変化が起こり始める。
おすすめ映画|『イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密』(2014/モルテン・ティルドゥム監督)
『ブーリン家の姉妹』(2008/ジャスティン・チャドウィック監督)
16世紀のイギリス・ヘンリー8世統治時代の宮廷を舞台に繰り広げられる愛憎劇。フィリッパ・グレゴリーによる同名小説を原作としているもの。男子の世継ぎがなかったことに、いら立つヘンリー(エリック・バナ)が愛人を求めていることを知った、野心家のブーリン卿(マーク・ライアンス)は聡明な長女のアン(ナタリー・ポートマン)を愛人候補に仕立てる。しかしながら、王が目に留めたのは、結婚したばかりの気だての良い次女メアリー(スカーレット・ヨハンソン)だったことから、姉妹間の葛藤が生じる。どちらも国王の寵愛を受けながら、まったく異なる道を歩むことになる美しい姉妹の劇的に変転する人生を鮮やかに映し出す歴史劇。
本作ではナタリー・ポートマンとスカーレット・ヨハンソンという当代きっての若手女優の夢のような初共演が実現。その兄役を『ラスベガスをぶっつぶせ』のジム・スタージェス(ジョージ・ブーリン)が好演する。後にイギリスに黄金時代をもたらしたエリザベス1世の母親となるアンの壮絶な生涯には正に息をのむ。
おすすめ映画|『ブーリン家の姉妹』(2008/ジャスティン・チャドウィック監督)ナタリー・ポートマン/スカーレット・ヨハンソン初共演作
『1917命をかけた伝令』(2019/サム・メンデス監督 )
内容は監督の祖父の体験談を聞いてそれをもとに構想された作品となっている。ほぼ100年前、第1次世界大戦が始まってから、およそ3年が経過した1917年4月のフランス。ドイツ軍と連合国軍が西部戦線で対峙し泥沼化している戦場が舞台。ドイツ軍は完全に撤退したものと見えたが、これを英国軍が更に追い打ちを掛ければ壊滅させることが出来ると考え翌朝総攻撃の命令が下されていた。
しかしながら、英軍の偵察機による情報では、これはドイツ軍の仕掛けた罠で、一旦は退却したかに見せかけたドイツ軍は英軍を誘い込み、壊滅作戦を目論んでいた。この罠に陥れば味方1600名の命が危険に陥る。通信手段が全て遮断さている為、英国軍将軍の作戦中止命令も伝令兵である(唯、読図能力が優れているという理由で選抜されたらしいが)イギリス軍兵士のスコフィールド上等兵(ジョージ・マッケイ)とブレイク上等(ディーン=チャールズ・チャップマン)に対して、ドイツ軍を追撃しているマッケンジー大佐(ベネディクト・カンバーバッチ)の部隊に作戦の中止を知らせる命令が下される。しかし、二人に与えられた伝令は翌日の朝までという期限までに届かなけ無ければならない。部隊の行く先には要塞化されたドイツ軍の陣地と大規模な砲兵隊が待ち構えている。
本作品はゴールデングローブ賞で作品・監督賞を獲得し、先のアカデミー賞ではノミネートされた作品賞は逸したが、視覚効果賞、撮影賞、録音賞の三賞を獲得している。戦場のある一日の物語を”全編カット”という画期的な映像で映画化されている為、戦場の恐ろしい臨場感、緊迫感が十分過ぎる程ヒシヒシ伝わってくる。塹壕の中の様子、戦闘を控え束の間の休息を取る兵士、塹壕の中で俯き物思いに耽るの兵士の姿には悲壮感が漂う。
おすすめ映画|『1917命をかけた伝令』(2019/サム・メンデス監督 )
『ブラック・スキャンダル』(2016/スコット・クーパー監督)
ジョニー・デップがFBI史上最高の懸賞金をかけられた実在の凶悪犯ジェームズ・“ホワイティ”・バルジャーを演じた実話に基づくクライムドラマ。
1970年代、サウス・ボストン。FBI捜査官コナリーはアイルランド系マフィアのボスであるホワイティ(ジョニー・デップ)に、共通の敵であるイタリア系マフィアを協力して排除しようと持ちかける。しかし歯止めのきかなくなったホワイティは法の網をかいくぐって絶大な権力を握るようになり、ボストンで最も危険なギャングへとのし上がっていく。
これまでも作品ごとに全く異なる顔を見せてきたデップが、本作では薄毛オールバックに革ジャン姿で冷酷無比なギャングを怪演。主人公はアカデミー作品賞受賞作『デパーティッド』でジャック・ニコルソンが演じたギャングのモデルと言われている。
映画感想|『ブラック・スキャンダル』(2016/スコット・クーパー監督)ジョニー・デップが実在の凶悪犯ジェームズ・“ホワイティ”・バルジャーを怪演したクライム映画
『エジソンズ・ゲーム』(2019/アルフォンソ・ゴメス=レホン監督)
発明王エジソンとライバルたちがアメリカ初の電力送電システムをめぐって繰り広げたビジネスバトル=電流戦争を映画化。
「イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密」のベネディクト・カンバーバッチがトーマス・エジソン、「シェイプ・オブ・ウォーター」のマイケル・シャノンがライバルのカリスマ実業家ジョージ・ウェスティングハウスを演じ、共演にも「女王陛下のお気に入り」のニコラス・ホルト、「スパイダーマン」シリーズのトム・ホランドら豪華キャストがそろった。
19世紀、アメリカは電気の誕生による新時代を迎えようとしていた。1880年代のアメリカで、電力の供給方法を巡って直流送電派のトーマス・エジソンと交流送電派のジョージ・ウェスティングハウスが繰り広げていた電流戦争の様子を中心に描いている。
白熱電球の事業化を成功させた天才発明家エジソンは、大統領からの仕事も平然と断る傲慢な男だった。実業家ウェスティングハウスが交流式送電の実演会を成功させたというニュースに激怒したエジソンは、ネガティブキャンペーンで世論を誘導。事態は訴訟や駆け引き、裏工作が横行する世紀のビジネスバトルへと発展していく。
おすすめ映画|『エジソンズ・ゲーム』(2019/アルフォンソ・ゴメス=レホン監督)発明王エジソンとライバルたちが繰り広げる電流戦争の映画化
『それでも夜は明ける』(2013/スティーブ・マックイーン監督)
第86回アカデミー作品賞受賞作。自由黒人ヴァイオリニストでありながら、ワシントンD.C.で誘拐され南部の農園に売られた黒人ソロモン・ノーサップの12年間の壮絶な奴隷生活をつづった奴隷体験記<”Twelve Years a Slave”(12年間、奴隷として)>を原作として、「SHAME シェイム」で注目を集めたスティーブ・マックイーン監督が映画化した人間ドラマ。
1841年、奴隷制度が廃止される前のニューヨーク州サラトガ。自由証明書で認められた自由黒人で、白人の友人も多くいた黒人バイオリニストのソロモンは、愛する家族とともに幸せな生活を送っていたが、ある白人の裏切りによって拉致され、奴隷として南部ニューオーリンズの地へ売られてしまう。
狂信的な選民主義者のエップスら白人たちの容赦ない差別と暴力に苦しめられながらも、ソロモンは決して尊厳を失うことはなかった。やがて12年の歳月が流れたある日、ソロモンは奴隷制度撤廃を唱えるカナダ人労働者バスと出会う。
おすすめ映画|『それでも夜は明ける』(2013/スティーブ・マックイーン監督)歴史ドラマ映画
『クーリエ 最高機密の運び屋』(2020/ドミニク・クック監督)
ベネディクト・カンバーバッチが主演を務め、キューバ危機の舞台裏で繰り広げられた実話を基に、核戦争を回避するべく決定的な役割を果たす男たち、彼らの核戦争回避のために命を懸けた葛藤と決断をスリリングに描いたスパイサスペンス。
1962年10月、アメリカとソ連の対立は頂点に達し、一触即発のキューバ危機が勃発。平凡な英国人セールスマンのグレヴィル・ウィンは、スパイの経験など一切ないにも関わらず、セールスマンとして頻繫に東欧を訪れており、MI6【英国秘密情報部】は彼ならば怪しまれることなく任務を遂行することができる判断され、CIAとMI6の依頼を受けて、”特殊任務”を持ち、モスクワへと飛ぶ。そこで彼は、国に背いたGRU(ソ連軍参謀本部情報総局)の内通者である、高官ペンコフスキーとの接触を重ね、機密情報(約5000件)を西側へと運び続けるが……。
グレヴィル・ウィンをカンバーバッチ、ペンコフスキーを「名もなきアフリカの地で」のメラーブ・ニニッゼが演じる。「追想」など映画監督としても活躍する舞台演出家ドミニク・クックがメガホンをとった。
おすすめ劇場公開中映画|『クーリエ 最高機密の運び屋』(2020/ドミニク・クック監督)
『裏切りのサーカス』(2011/トーマス・アルフレッドソン監督)
スパイ小説の大家ジョン・ル・カレ(実際に英国情報局MI6で自ら諜報活動に従事した)のスパイ小説が原作の代表作を「ぼくのエリ 200歳の少女」のトーマス・アルフレッドソン監督、ゲイリー・オールドマン主演で映画化したスパイスリラー。1960年代のロンドン。東西冷戦の後期が舞台のある作戦の失敗でイギリスの諜報機関サーカスを引責辞職したジョージ・スマイリーに、ある日特命が下される。それは、いまもサーカスに在籍する4人の最高幹部の中にいる裏切り者=2重スパイを探し出せというものだった。共演にコリン・ファース、トム・ハーディ、ジョン・ハート、ベネディクト・カンバーバッチほか錚々たる俳優が出演する。
なお、時折名前が出てきますが、姿を現さない『カーラ』という人物がいます。これは敵国旧ソ連のスパイ組織の親玉だそうです。この人物名を記憶しておくと分かりやすいかもしれません。
おすすめ映画|『裏切りのサーカス』(2011/トーマス・アルフレッドソン監督)
『アメイジング・グレイス』(2006/マイケル・アプテッド監督)
時代を超えて愛され続ける名曲「アメイジング・グレイス」の誕生秘話と、この曲に支えられて戦った政治家ウィリアム・ウィルバーフォースの生涯を描く伝記映画。
18世紀イギリスで、裕福な家庭に生まれ育った青年ウィリアムは、貴族階級の大きな収入源となっていた奴隷貿易制度に疑問を抱いていた。21歳の若さで議員となったウィリアムは、数少ない同志や愛する妻、そして師であり、奴隷貿易船の船長から悔い改めて牧師となったジョン・ニュートンが1772年に作詞した「アメイジング・グレイス」を心の支えとし、ウィリアムはケンブリッジ大学での親友ウィリアム・ピットらと共に、数々の困難を乗り越えながら、漸く若き政治家が志した奴隷貿易制度廃止が成立したのは1833年でした。
当時イギリスの議会では奴隷貿易そのものは非人道的なもので廃止するべきものと頭ではわかっているものの、莫大な利益が見込める事と奴隷貿易がないと中南米のプランテーションの経営そのものが成り立たなくなることが懸念され奴隷貿易そのものの廃止にはなかなか動かなかったのが実情でした。
おすすめ映画|『アメイジング・グレイス』(2006/マイケル・アプテッド監督)
『モーリタニアン 黒塗りの記録』(2021/ケビン・マクドナルド監督)
悪名高きキューバ・グアンタナモ収容所に収監されたモーリタニア人の青年と、彼を救うべく奔走する弁護士たちの姿を、実話を基に描いた法廷サスペンスドラマ。
モハメドゥ・ウルド・スラヒの著書「グアンタナモ収容所 地獄からの手記」を題材に、「ラストキング・オブ・スコットランド」のケビン・マクドナルド監督がメガホンをとった。
弁護士のナンシー・ホランダー(ジュデイ・フォスター)とテリー・ダンカンは、実在の人物であるモーリタニア人青年モハメドゥの弁護を引き受ける。アメリカ同時多発テロに関与した疑い(9.11の首謀者の1人として拘束された)で逮捕された彼は、裁判すら受けられないまま、拷問と虐待が横行するキューバのグアンタナモ米軍基地で地獄の日々を送っていた。「不当な拘禁」だとしてアメリカ合衆国を訴え、真相を明らかにするべく調査に乗り出すナンシーたちだったが、正義を追求していくうちに、完全な無実を主張する弁護方針は一見荒唐無稽とも思われるものだったが、手ごわい軍検察官のスチュアート・カウチ中佐(ベネディクト・カンバーバッチ)が良心にしたがい暴いたねつ造証拠も相まって、最後に衝撃的で遠大な陰謀によって隠された真実が浮かび上がってくる。
ジョディ・フォスターが敏腕弁護士ナンシーを演じ、第78回ゴールデングローブ賞で助演女優賞を受賞。軍の弁護士ステュアート中佐をベネディクト・カンバーバッチ、モハメドゥを「預言者」のタハール・ラヒム、テリーを「ダイバージェント」シリーズのシャイリーン・ウッドリーが演じた。
コメント