アニメ映画『神々の山嶺(いただき)』のあらすじ・概要
「陰陽師」などの夢枕獏の小説を、「孤独のグルメ」などの谷口ジローが漫画化した山岳コミックの傑作「神々の山嶺」を原作とし、フランスでアニメーション映画化された。映画は、登山家である羽生丈二が、不可能とされる前人未到のエベレスト南西壁冬期無酸素単独登頂に挑む姿が描れています。
エベレスト初登頂をめぐる未解決の謎に迫るクライマーたちの姿を描き、第47回セザール賞でアニメーション映画賞を受賞するなど高い評価を獲得しました。記録上に残るエベレストの初登頂は1953年ですが、伝説的なイギリス人登山家のジョージ・マロリーが1924年6月にエベレストの山頂付近で消息を絶っていたことから、「マロリーが初登頂を成し遂げていたのかもしれない?」という登山史上最大のミステリーが囁かれていました。
ある日、取材でネパールのカトマンズを訪れた雑誌カメラマンの深町誠は、長らく消息不明になっていた孤高の登山家・羽生丈二が、マロリーの遺品と思われるカメラを手に持って去っていく姿を目撃します。カメラにはエヴェレスト登頂の記録が残されているのではないかと微かな期待が高まりました。
羽生を見つけ出し、マロリーの謎を突き止めようと考えた深町は、日本に帰国後、羽生の人生の軌跡を追い始めますが、尋常ならざる執念で危険な山に挑み続ける羽生という男の人間性に次第に魅了されていくことになります。やがて2人の運命は交わり、冬季エベレスト南西壁無酸素単独登頂に挑む羽生に、深町も同行することになりますが……。
なお映像は、実写では再現不可能な命がけの登攀シーンを限界までリアルを追求し、圧巻の迫力映像で表現しています。
2021年製作/94分/フランス・ルクセンブルク合作
原題:Le sommet des dieux
アニメ映画『神々の山嶺(いただき)』のスタッフとキャストについて
パトリック・インバート監督・共同脚本:映画監督、アニメーター
深町誠(雑誌カメラマン):エベレストの取材で訪れていたカトマンズで、登山家マロリーの遺品とおぼしきカメラを手にする、クライマー羽生丈二を見つける。
羽生丈二(孤高の天才クライマー):初登頂に固執し、仕事を転々としながら山に登る。他人を寄せ付けず、ザイルパートナーの事故をきっかけにより孤立を深め、一人危険な山に挑み続けていた。
アニメ映画『神々の山嶺(いただき)』のネタバレ感想
谷口ジロー氏の「漫画」は読んでいませんが、夢枕獏氏の原作「神々の山嶺」を読んでの私の感想は「長谷川恒夫、加藤保男、植村直己、森田勝(羽生丈二のモデル)などどうして生き急ぐのか一般人には全く理解不能」というものでした。
アニメの中でも語られていましたが、『山登りを覚えると、山登りにのめり込むようになる…』という事です。誰よりも早く、誰も登った事が無いルートで、登っていない時期に、初めての方法(無酸素、単独)で、益々エスカレートして行く様子は今考え直して観ても、当初の感想と同じく『何故命懸けで危険のある事を成し遂げようとするのか?』この点は、登山家・冒険家本人でなければ理解出来ないのだろうと思いました。
本作アニメ映画は政索に7年という途方もない時間を費やしたという事です。物凄い精緻な表現方法でビデオで撮影されたようなシーンと錯覚させられるような映像の連続に驚きました。また、実写映像では再現不可能と思われる登攀シーンを見事にアニメで描いているところは圧巻だったと思います。
ほぼ垂直の氷壁の断崖絶壁を冬季にピッケルとアイゼンの何ミリかの゛歯”を氷に喰い込ませて、登って行くシーンには度肝を抜かれました。両腕の腕力・脚力が氷点下60度の中でも永遠に動き続けない限り即”死”が迫っている世界でした。驚くべき事に、帰りには同じルートを上りと同じように下降していました。こちらもピッケル、アイゼンの歯を氷に入れる角度を少しでも間違うとズルッと滑り真っ逆さまに転落する危険と隣り合わせでした。失敗は許されない登攀方法にはやはりだれもが”不可能”と思うの事も道理があります。
そこに「生きる意味」を見出す事はごく限られた人々だけの限定的な近づき難い世界だなと強く感じました。
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