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おすすめの歴史小説『塞王の盾』(今村翔吾著 集英社)直木賞受賞作 感想‣戦国時代の城壁造りの石工の棟梁が舞台の歴史ドラマ…

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『塞王の盾』の概要・あらすじ

近江の国・大津城を舞台に、城郭の石垣職人“穴太衆”と鉄砲・大砲職人“国友衆”の宿命の対決を描く究極の戦国小説。主人公匡介(きょうすけ)は幼い頃、越前一乗谷の落城によって家族を失うことになります。運良く命を救われた石工集団の親方から石工としての才能を見込まれ、技能を仕込まれていきます。彼は「絶対に破られない石垣」を作れば、世から戦を無くせると考えていました。
一方、戦で父を喪った鉄砲職人の彦九郎(げんくろう)は「どんな城も落とす砲」で人を殺し、
その恐怖を天下に知らしめれば、戦をする者はいなくなると考えていました。秀吉が病死し、戦乱の気配が近づく中、匡介は京極高次に琵琶湖畔にある大津城の石垣の改修を任されることになります。攻め手の石田三成は、彦九郎に鉄砲作りを依頼しました。大軍4万に囲まれ、3000人で守る絶体絶命の大津城を舞台に、信念をかけた職人同士の対決が火花を散らすことになります。

『塞王の盾』の感想

本作で語られる内容はどれもこれも今までまったく知らなかった事が多く、非常に勉強になりました。100%史実に基づかないかも知れない部分もあるとはおもいつつ、恐るべき城攻めの攻防戦については文字通り固唾を飲んで見守る事になりました。超リアルで現場に居合わせたような錯覚に陥りました。

現在の滋賀県(近江の国)の石工職人の集団”穴太衆”(あのうしゅう)というのを初めて知りました。(対する国友衆も同じ滋賀県坂本が本拠とか)本作の舞台大津城や大阪城などの石垣も穴太衆が築き上げたものと言います。彼らは戦国大名の要請があれば、大名同士が敵味方に一切関係無く応じていることにも驚きでした。石工集団には城郭を建設する土地の近くの山から適した石を切り出すグループ、砕石した石を運搬するグループ、更に実際に城壁を積み上げていくグループの3グループに役割分担されていました。主人公匡介は石工としての高い天賦の才能を認められていました。そして、それだけにとどまらず運搬の仕事など他グループの仕事も手掛け穴太衆全体の仕事に対する理解を深めていました。

また、城壁建設の設計図(当時の言葉で”縄張り”と言われていました)は存在せず、多分絶対の機密情報の為、親方の頭の中だけに存在したものと思われます。大小の異なる石を親方の頭の中で判断して、「この石はここ、それはどこそこ・・・」と石を見た瞬間判断し、積み上げていく手法で堅固な石垣が作られていく様子が語られていました。城壁は鉄砲の弾丸を弾くだけではなく、大砲から打ち出される砲弾すら弾き返す程の”堅固さ”を誇っていました。更に更に、大砲の砲弾の衝撃に耐えきれず、崩れ落ちた石垣は次の砲撃を受けるまでの短時間で石工らの修復作業が行われる元に復元してしまうという描写がありました。

砲弾が次々に打ち込まれる城壁を命懸けで”修復作業”を完工しようとする石工集団の存在は俄かに信じられません…また、城壁には一つの『要石』が存在し、それが打ち砕かれると、もうどんなに修復してもやがて崩壊せざるを得ない超重要なものとして説明されていました。石垣の「大黒柱」の様な存在なのかも知れません。

一方、大津城守備側の京極高次、いままで余り知らなかった大名です。かれのこの籠城戦を行う強固な意志が無かったとしたら、関ケ原の合戦の雌雄はどちらに転がったか分からなかった様な気がします。毛利や西国無双という異名を持つ立花宗茂などの4万の大軍団を敵に回し、たった3000で大津城に立て籠もり死守します。結果的にはこの4万の西軍は関ケ原合戦に参戦出来ていません。万一西軍4万が参戦していたら歴史が変わっていたかもしれません…

さらに、立花宗茂の活躍についても詳しく描写されていました。学生時代訪れた(40年以上前)福岡柳川では有名な『鰻のセイロ蒸し』を食べた思い出があります。そして、立花邸(御花)で見事な赤い甲冑がずらりと並んでいるところを見学した覚えがあります。西軍に味方した宗茂は関ケ原以降改易されたものの、その後見事に復活を果たし旧領柳川に戻ったという事です。本作で改めて偉大な戦国武将であったことが認識出来ました。

『塞王の盾』の世間一般的な意見はどんなものがあるのか?

読書メーターで公開されている”感想”を参考までに引用させて頂きました。かなりの意見が好意的なものが多く、やはり「直木賞」受賞作と納得されている様です…

まるでNHK「大河ドラマ」のような重厚な舞台設定。そして細かな人物像や時代考証がぎっしり! さすが直木賞作品だ。ホントすごい! 結局、この物語を通して自分が心に残ったのは、あらゆる人たちの「矜持(誇り・自尊心)」じゃないかな… 武士、臣下、職人、棟梁、部下、領主、領民、親、男、女、その他いろいろ… そんな「矜持」を描いた物語に思えた。 

戦国時代の石垣職人にフォーカスした物語。お城の石垣の重要性を初めて知り、その奥深さに唸る。プロフェッショナルとはこういうことなのだと胸が熱くなった。500ページ超の長編だが、登場人物の魅力とストーリーの面白さで全く飽きさせない。映画化してもかなり面白そうである。

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