『ポトフ 美食家と料理人』のネタバレ感想・見どころ
シャトーの庭には広い菜園があり、朝摘みの新鮮野菜が準備されていました。運び込まれる鳥・肉・鮮魚もすべて新鮮で獲れたて。恐らく映画上映時間の半分近くは料理を作る過程、食事で費やされていたのではないかと思います。一品一品の料理を仕上げる間はノーカットです。セリフは多くを語りません。しかし、料理人の手際良さは際立ち、まるで画僧を通してオープンキッチンの料理店で、カウンター席から厨房の中を覗き込んでいる様な感覚です。とにかく食材の豊富さ、ふんだんな量の多さに驚きです。
ストーリーは単に料理だけを作って、食べるだけではなく、料理人と美食家との微妙な恋愛関係も描いています。同じシャトーの中に永年一緒に生活をしていました。いままで夫婦ではなかった事が不思議なくらい意気投合しているようにも見られましたが…しかしながら、遂にはふたりはめでたく結婚する事になります。二人の間に過去どんな物語があったか多くは語られません。視聴者はその関係を想像力を豊かに働かせて考えるしかありません。(実際、主演俳優の2人は付き合いもあり娘をもうけていますが、後に破局しています。そして本作は20年振りの共演作品となっています)映画の中と現実が重なり、お互い二人の心中はまったく理解不能ですが、映画の出来栄えから判断して余り過去の深いわだかまりは無いようにも見て取れましたが…
シャトーで開催された美食家たちの為の食事会の豪華な料理は多分一生口に出来ない様な絶品の味ではないかと思われました。また、鮮魚なども使われていたのでノルマンジーやブルターニュ地方の料理なのかどうかもまったく見当がつきません。ざっくり映画概説を紐解いてもフランスのどの地方の料理なのか示唆する情報はありませんでした。
また、主客に提供されたまったく同じ料理を厨房の中で、料理人や助っ人の人達が食べているシーンがありました。これには、少々驚きました。残り物を食べているというわけでも無く、下働きの人を含めて自分達の分もちゃんと一緒に作っているんですね!
『ポトフ 美食家と料理人』のあらすじと概要
「青いパパイヤの香り」「ノルウェイの森」などの名匠トラン・アン・ユン監督が、料理への情熱で結ばれた美食家と料理人の愛と人生を描き、2023年・第76回カンヌ国際映画祭で最優秀監督賞を受賞しています。
19世紀末、フランスの片田舎。湖に囲まれたシャトーで「食」を追求し芸術にまで高めた美食家ドダンと、彼が閃いたメニューを完璧に再現する天才料理人ウージェニーの評判はヨーロッパ各国に広まっていました。ある日、ユーラシア皇太子から晩餐会に招かれたドダンは、ただ豪華なだけで延々8時間も続く退屈な料理にうんざりします。食の真髄を示すべく、最もシンプルな家庭料理・ポトフで皇太子をもてなすことを決めるドダンでしたが、そんな矢先、ウージェニーが倒れてしまいます。ドダンはすべて自分の手でつくる渾身の料理で、愛するウージェニーを元気づけようとするのですが……。
「イングリッシュ・ペイシェント」のジュリエット・ビノシュが料理人ウージェニー、「ピアニスト」のブノワ・マジメルが美食家ドダンを演じています。ミシュラン3つ星シェフのピエール・ガニェールが料理監修を手がけ、シェフ役で劇中にも登場。
2023年製作/136分/フランス
原題:La Passion de Dodin Bouffant (The Pot-au-Feu)
『ポトフ 美食家と料理人』のスタッフとキャストについて
トラン・アン・ユン監督:ベトナム・ダナン出身。12歳のとき、一家でフランスへ亡命。長編初監督作品「青いパパイヤの香り」(93)がカンヌ国際映画祭のカメラドール、セザール賞初監督作品賞、アカデミー外国語映画賞に輝き華々しくデビューを飾っています。
ジュリエット・ビノシュ(ウージェニー):「イングリッシュ・ペイシェント」(96)で米アカデミー助演女優賞を受賞し、「ショコラ」(00)で主演女優賞にノミネートされています。99年、「年下のひと」で共演した(本作でも共演)ブノワ・マジメルとの間に娘をもうけていますが、本作は20年振りの共演作。
➢映画『ショコラ』(2000/ラッセ・ハルストレム監督)感想‣チョコレートの甘い香りとその効能にうっとり!
ブノワ・マジメル(ドダン):ミヒャエル・ハネケ監督作「ピアニスト」(01)でカンヌ国際映画祭コンペティション部門主演男優賞を受賞/19世紀末のフランスのシャトーに住む、「料理の世界のナポレオン」と称される美食家
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