>

上映中 おすすめ新作映画『関心領域』(2023/ジョナサン・グレイザー監督)A24製作 感想‣監督の意志は「人々の黙認はどこへ行き着くのか!」という極端な例を示した…

スポンサーリンク
絶対見逃せない映画 おすすめ
スポンサーリンク

『関心領域』のあらすじと概要

「アンダー・ザ・スキン 種の捕食」ジョナサン・グレイザー監督がイギリスの作家マーティン・エイミスの小説を原案に手がけた作品で、2023年・第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門でグランプリ、第96回アカデミー賞で国際長編映画賞を受賞しています。ホロコーストや強制労働によりユダヤ人を中心に多くの人びとを死に至らしめたアウシュビッツ強制収容所の壁を隔てた隣で平和な生活を送る一家の日々の営みを描く。

タイトルの「The Zone of Interest(関心領域)」は、第2次世界大戦中、ナチス親衛隊がポーランド・オシフィエンチム郊外にあるアウシュビッツ強制収容所群を取り囲む40平方キロメートルの地域を表現するために使った言葉で、映画の中では強制収容所と壁一枚隔てた屋敷に住む収容所の所長とその家族の暮らしを描いていています。

カンヌ国際映画祭ではパルムドールに次ぐグランプリに輝き、第96回アカデミー賞では作品賞、監督賞、脚色賞、国際長編映画賞、音響賞の5部門にノミネートされ、国際長編映画賞と音響賞の2部門を受賞しています。

2023年製作/105分/アメリカ・イギリス・ポーランド合作
原題:The Zone of Interest

『関心領域』のスタッフとキャストについて

ジョナサン・グレイザー監督・脚本:英国ギャングの世界を描いた「セクシー・ビースト」(00)で長編監督デビュー。スカーレット・ヨハンソン主演の異色SFスリラー映画「アンダー・ザ・スキン 種の捕食」(13)が9年ぶりの長編監督作となり、更に10年後に本作を監督しています。

クリスティアン・フリーデル(ルドルフ・ヘス=アウシュビッツ収容所の所長):「白いリボン」「ヒトラー暗殺、13分の誤算」などの出演作品があります。

サンドラ・ヒュラー(ヘスの妻):夫ヘスがベルリンに栄転が決まり、めでたい筈が、妻が今の家をお気に入り。離れたくないと言い出します/主演作「落下の解剖学」が本作と同じ年のカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した

『関心領域』のネタバレ感想・見どころ

凄い映画が来たものです。アウシュビッツ収容所の塀の中を一切映さないアウシェビッツ映画!収容所の大きな煙突から吐き出される白い煙がかなり不気味でした…

ジョナサン・グレイザー監督の前作、恐ろしくも美しいエイリアン映画『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』とは打って変わって、アウシュビッツ収容所のすぐ隣に住む幸せそうな所長家族の日常風景を描いた映画です。

綺麗に手入れされた庭園、咲き誇る花々、川遊び、船乗り、魚釣り、パーティー等々ありふれた長閑な風景が切り取られていきます。ごく普通の風景に見えますが、実はとんでもない映像を見せられていました。この家族の背景はアウシュビッツ収容所の壁であり、その向こうには死体を火葬した煙が絶えることなくもくもく立ち上っています。時々聞こえる銃声も想像力を刺激し続けます…

主人公ヘスは功績を上官に認められ立身出世し、ベルリンへの帰還を認められます。功績とはすなわちユダヤ人を効率よく”処理”したという事が認められたという事です(恐ろしや…)当然、家族全員で帰任するものとばかり思っていましたが、妻は此処の(天国の様な)生活がお気に入りで、夫だけ帰任し家族はアウシュビッツ収容所の隣に居座ることを決めていました。

アウシュビッツ収容所の”地獄”の世界と壁一枚隔てた場所での”天国”の存在そのものの薄気味悪さは異様です。ナチの目的である「民族浄化」の目標に邁進する軍人らの姿も異様、さらにその家族もその異常性に気付きながらも、何の疑問を持つことなく夫の”仕事”を支持していました。所長一家には収容所から払い下げられた(ユダヤ人から身ぐるみはいだ)”物資”(高級そうな衣類、毛皮のコート、口紅、ダイアモンドは歯磨き粉のチューブの中に隠されていた様です…金歯)を家族で山分けするシーンもリアルに描かれていきます。

戦時中なので何をやってもいいわけではなく、非人道的な事に目をつぶっていてはダメという意志がありありの映画だと思います(監督は某誌インタビューで応えています)多分巡り巡って因果応報自分らにも同じ災難が巡って来るに違いありません。

地球上に紛争の種は尽きないのは事実です。我々も決して無関心でいて良いはずは無いという極めて真っ当な意見(パンチ)を強烈にブチかまされる衝撃的な映画でした!!

コメント

タイトルとURLをコピーしました