映画『暗殺のオペラ』のあらすじ概要
「暗殺の森」「ラストタンゴ・イン・パリ」などで知られるイタリアの巨匠ベルナルド・ベルトルッチが、1970年に手がけた長編監督第4作。1969年という製作当時の「政治の季節」に合わせてベルトルッチがイタリア戦後史の知的総括として映画化した作品であるという。
ラテンアメリカ文学の鬼才ホルヘ・ルイス・ボルヘス「伝奇集」に収められている「裏切り者と英雄のテーマ」(アイルランドを舞台にした、たった数ページの短編)を原作に、物語の舞台を北イタリアの架空の町に置き換えて描いています。ファシストによって暗殺された父の死の真相を探るべく、アトスは北イタリアの非常に穏やかで美しい自然に囲まれた田舎町を訪れます。この町で父は英雄的存在になっており、謎は少しずつ解明されていきますが、そこには意外な事実が待ち受けていました。
事実とは(ネタバレ有り)アトスの父であるアトスは約30年前その街でアンチファシズムとして戦っていました。そして、オペラ劇場でムッソリーニの暗殺を計画していたにもかかわらず、誰かがその計画を密告し、逆にそのオペラ劇場で暗殺されることになります。その真相に迫るストーリーとなります。
ジュリオ・ブロージが若き日の父と息子の2役に挑戦し、「第三の男」のヒロイン役で知られるアリダ・バリが父の愛人役を演じた。日本では1979年に劇場初公開。2018年、デジタルリマスター版でリバイバル公開されています。
1970年製作/99分/イタリア
原題:Strategia del ragno
日本初公開:1979年8月4日
映画『暗殺のオペラ』のスタッフとキャストについて
ベルナルド・ベルトルッチ監督・脚本:1940年生まれ、イタリア/パルマ出身。父の影響を受け、15歳で詩や小説の執筆を始め、いくつかの文学賞を受賞する。本編と同年に公開された『暗殺の森』では、ファシズムの台頭と崩壊という政治的テーマを一個人の視点で映像化しています。
➢映画『ラスト・エンペラー』(1987/ベルナルド・ベルトルッチ監督)感想‣宦官1200人、女官350人に囲まれて生きる驚異の”最後の皇帝”ワールド!
撮影:『地獄の黙示録』、『レッズ』、『ラストエンペラー』でアカデミー賞撮影賞を3度受賞したヴィットリオ・ストラーロと、『イル・ポスティーノ』など数多くのイタリア映画を撮影し続けてきたフランコ・ディ・ジャコモの2名。
ジュリオ・ブロージ(アトス・マニャーニ同姓同名の父子役):1974年公開の『モレルズ・インヴェンション(原題)』ではデンマーク生まれでフランス映画を中心に活躍するアンナ・カリーナと共演。
アリダ・バリ(ドライファ、かつての父の愛人、息子アトスに父の死の真相解明を依頼した):その美貌と演技力で2006年に亡くなるまで、100本以上のイタリア映画に出演しています。イタリアを代表する女優の一人。『第三の男』のヒロイン役を演じた事でも有名。
映画『暗殺のオペラ』のネタバレ感想・見どころ
(ネタバレ有り)
傑作と言われる本作、今回初視聴。非常に重たい反ファシスト活動という政治的テーマを取り扱っています。しかも、主人公の父親は何者かに暗殺されています。一方、映画全体的にはオペラの調べがいつも流れているという雰囲気、度々挿入される詩のフレーズ、さらにとても穏やかで美しい自然に囲まれている田舎町が舞台ということで、その殺伐としてテーマがかなり緩和されていました。本編は反ファシスト活動の英雄であった父親が殺害された真相の解明を、かつて父親の愛人であった女性から依頼を受けた事からストーリーが展開するミステリー映画となっています。
しかし、ミステリーとはいうものの深刻な恐ろしいシーンは殆んど無く、真相を解明する事を何者かに妨害され、少しばかりの”脅迫”(馬小屋に押し込められる、朝寝起きに一発殴られる等々)を受ける程度です。本当の”真相”を話してしまうと、まだ映画を御覧でない人は映画の面白さが半減するので語りませんが、”大どんでん返し”とまでは言いませんが、かなりの意外性はあります。また、どうやらこの”真相”は町の人は誰もが既に知っている周知の事、これにはかなりの驚きました…
更に美しい自然及び家屋・街並みを捉える映像美も二人の撮影担当者の技が冴え渡っていました。その内の一人ヴィットリオ・ストラーロ氏は、アカデミー賞撮影賞を3度も受賞している事にも納得しました。(『地獄の黙示録』、『レッズ』、『ラストエンペラー』)
コメント