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おすすめ本|『アフリカ出身 サコ学長、日本を語る』ウスビ・サコ著(朝日新聞出版)「なんでやねん」連発の波瀾万丈な人生を、「ええやんか」とコミカルにふり返る

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『アフリカ出身 サコ学長、日本を語る』のあらすじと概要

jason sackeyによるPixabayからの画像

本書は、日本で初めてアフリカ・マリ共和国出身者として大学学長となった、京都精華大学長のウスビ・サコ氏による初の自叙伝となっています。マリ共和国から中国留学を経て日本へ。「なんでやねん」連発の波瀾万丈な人生を、「ええやんか」とコミカルにふり返ります。
 さらに、日本社会や日本の教育の問題点を、独自の視点から読み解きます。2020年5月、新型コロナウイルス問題について語ったインタビュー記事「コロナ問題でわかった『日本人のホンネ』」(AERA dot)が話題になったそうです。本書ではこの記事に大幅に加筆した内容を収載され、危機の時代の日本人の生き方につき率直な意見を述べています。

サコ・ウスビ氏略歴:
1966年5月26日マリ共和国・首都バマコ生まれ。81年、マリ高等技術学校(リセ・テクニック)入学。85年、バカロレアに合格し、本人は余り希望していなかった中国に留学北京語言大学、東南大学で学ぶ。91年4月、大阪の日本語学校に入学。同年9月京都大学研究室に所属。92年、京都大学大学院工学研究科建築学専攻修士課程入学。99年、同博士課程修了。2000年、京都大学より博士号(工学)取得。01年、京都精華大学人文学部専任講師に就任。02年、日本国籍取得。13年、人文学部教授、学部長に就任。18年4月、学長に就任。

『アフリカ出身 サコ学長、日本を語る』の感想

マリに存在する迷惑を掛け合うコミュニティの存在に驚愕! 一般的には、日本人の間では「人に迷惑を掛けない様にする」文化であることを小さい頃から、親や学校で教わり、自分も親になると子供には人に迷惑を掛けるなと口を酸っぱくして言ってきたものです。サコ氏のマリでは『どれだけ迷惑を掛け合えるかが』重視される組織(グレン)があるそうです。青年団。中でも一番大事なのがケンカをすることと聞き2度びっくりです。但し、ケンカをしても仲直りできる事が最も重要だそうです。日本の様に中途半端に、表面的に「いいね」とは絶対に言わない。遠慮が無いから、損得勘定の無い、無償の関係が作れるというものだそうです。本音をどれだけ言い合えるかというのは非常に重要な気がします。

・バカロレアに優秀な成績で合格し、本人は建築学を勉強する為、当然ヨーロッパの国に留学得るものと思っていたら国家は私85年に中国に派遣する決定を下したそうです。一年目は北京語言大学、私自身も87年に北京大学に留学しているので、北京市内のどこか公共バスか街の自転車同士ですれ違っている可能性があります。北京語言いう学院にも良く遊びに行きました。この時代北京の空気を肌で感じていた人と言うだけで、非常に親近感を感じています。

・京都精華大学が目指す、真の意味での「共生」とは何か? 

これは、みんなが同化することではなく、みんながマクドナルド化することでもない、それぞれが自分の価値観をもったまま、お互いに協調している道を探っていくこと。

と、語られています。極めて真っ当な考え方だと思います。

また、日本の外国人労働者受け入れに関わる問題点についても以下の様に指摘しています。

外国人労働者には、働く為の最低限の日本語と日本文化を簡単に教えればいいというものではない、これまでの日本社会が、如何にその人たちを日本社会の一員として受け入れるかという準備がないか、良く分かると、、、

学校に期待過ぎる日本人という指摘は大問題です。

日本の小中学校教育は「フレーム化」されている。サコ氏の主張は国民1人ひとりが、『そこから自分をどう解放していくか?』を考え、自分という個(人)うぃ、このフレームの外で作る事。つまり、学校とは別に、個人が『生きる力』をつける機会を持っている事が、人が育つ上で最も大切なことだという。

これなんかも全く耳の痛い指摘ではないでしょうか? いい学校に入りさえすれば、後は学校が子供を育ててくれるという古くからの考え方は余り変わっていないのではないでしょうか? 高度成長期を支えた時代の人材育成には適していたかもしれませんが、現在ニッポンは歴史的な転換点に立っている様に思います。

本書内でのサコ氏の考えは非常にクリア、日本が抱える重要な問題を指摘しています。大いに賛同すべき点も多いので、是非参考にしたいものです。

世間の一般的な意見にはどんなものがあるか?

読者の一般的な評価については多くは好意的な意見が多くなっています。日本社会にどっぷりつかっていると「おかしい」「変だ」と中々言い出せない内容の事もポンポンと口に出て(文章に書いていただいている)言われている一般日本人読者の多くも賛同しているのではないかと思います。一方で、サコ学長の日本への愛着の深さも感じられます。

「なんでやねん!」。マリ共和国のエリートから京都精華大学の学長に就任したサコ先生が、学生や親、日本の教育を叱ります。サコ先生が指摘する、「学校に期待しすぎる日本人」には、激しく同意します。「ええやんか」の柔軟性こそが、求められているのではないでしょうか。「政治に関心がないのに政府に依存する」のも同じ構造です。内田樹先生の解説が、サコ先生の真骨頂を暴露します。

結局のところ彼もエリート家庭で育った訳なんですが、どんな逆境でもくじけない心、目標に向かって真っすぐに進めるマインドの力はさすがだなと。
傑出した語学力(中国語は北京に1年留学してマスター、日本語も一年でマスター)と、バイタリティ溢れる人生のお話はとても楽しいものでした。
最近の京都精華大学の評判が良いのは大学が持つ本来の指針に加え、彼の貢献があるのかなとも思いました。

ここまで日本の教育・社会のことをよく分かって意見を述べている日本人・外国人はそういないはず。この人学長になるべくしてなった。このような先生のもとで学べる学生は運がいい。

最後に

私は映画が好きなのでよく見ます。サコ氏が本文内で語られていましたが、映画オタクの様な人も多く「あの映画監督の、あの映画の、あのシーン、こう撮ったカメラのアングルが素晴らしかった」とマニアックな点をひけらかす人がいるらしいです。その人から、そんな事も理解していないで、映画好きというな、とお叱りを受けるそうです…サコ氏曰く「映画を見てそれで面白ければそれでいいやん!」と言ってのけます。正にその通りだと思いました。

本書でサコ学長の人間的な面白味とおかしい事をおかしいと言う勇気が少しだけ湧いてきました。また、「教育」の重要性も再認識できました。

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