『グラン・トリノ』のあらすじと概要
アカデミー作品賞受賞作「ミリオンダラー・ベイビー」以来4年ぶりとなるクリント・イーストウッド監督・主演作。本作は21番目の監督・主演作。題名となっている”グラン・トリノ”とはフォードの車種 1972年から1976年に生産されたものを指します。
朝鮮戦争の従軍経験を持ち、フォードの自動車工を50年勤めあげたポーランド系米国人ウォルト・コワルスキーは、妻に先立たれ、愛車“グラン・トリノ”や愛犬と孤独に暮らすだけの日々を送っていました。頑固さゆえに二人の息子たちにも嫌われ、限られた友人と悪態をつき合う日々であり、亡き妻の頼った神父をも近づけようとしません。
そんな彼の隣家にモン族の少年タオの一家が越してきます。そんなある日、愛車グラン・トリノが盗まれそうになったことをきっかけに、心を通わせ始めたウォルトとタオでしたが、タオを仲間に引き入れようとする不良グループが2人の関係を脅かし始めます……。
背景としては、ミシガン・デトロイト近郊で育った主人公、おそらく彼と同じように、自動車産業に従事する人がたくさんいたはずです。また、彼のようなポーランド系アメリカ人の比率がかなり高い地域です。だから、慣れ親しんだ街が(アジア系移民・ここでは元々ラオス、タイ、ベトナムの高地に住んでいた農耕民族モン族の移民)様変わりしていく様子に痛々しさを感じている様子が理解できます。
2008年製作/117分/アメリカ
原題:Gran Torino
イーストウッド監督作品投稿記事
映画感想|『パーフェクトワールド』(1993/クリント・イーストウッド監督・主演)ケビン・コスナ―共演作
映画感想|『ミリオンダラー・ベイビー』(2004/クリント・イーストウッド監督・主演)
映画感想|『人生の特等席』(2012/ロバート・ローレンツ監督)大リーグの伝説的なスカウトマン・ガスをクリント・イーストウッドが描出
『グラン・トリノ』のスタッフとキャストについて
クリント・イーストウッド監督 (ウォルト・コワルスキー):1930年生まれ、米サンフランシスコ出身。「半魚人の逆襲」(55)で映画デビューし、TVシリーズ「ローハイド」(59~65)の準主役で人気を博す。その後イタリアへ渡り、「荒野の用心棒」(64)、「夕陽のガンマン」(65)と立て続けにマカロニ・ウエスタンに主演。68年に帰国し、自らの映画製作会社「マルパソ」を設立した。71年には製作・主演を兼ねた「ダーティハリー」でスターの座を確立している。
ビー・バン(タオ)
アーニー・ハー(スー)
ジョン・キャロル・リンチ (イタリア系の理容師):ウォルトとの何気ない言葉のやり取り、挨拶の言葉が抱腹絶倒で、是ほど汚い、下品な言葉が交わされるというのも驚き。それを二人の良いオヤジが「タオ」に仕込むシーンが出てくるが本当に見物!
出演映画投稿記事:
映画感想|『シカゴ7裁判』(2020/アーロン・ソーキン監督)
映画感想|『ラブ・アゲイン』(2011/グレン・フィカーラ、ジョン・レクア監督)
『グラン・トリノ』のネタバレ感想
朝鮮戦争従軍帰国後、フォードの自動車工場に50年間勤務したというから人生のほとんどをフォードと共に生きて来たことになります。愛して止まない愛車”グラン・トリノ” 余り自動車の事は詳しくありませんが、1970年代製で自動車産業の高度成長時代にデビューした車なのでしょうか?
朝鮮戦争での経験がずっと尾を引き、余り周囲に溶け込めず、意固地な頑固おやじに変わり果て、孤独な毎日を送っています。しかしながら、突如隣人となった東洋系家族との交流が始まる事から、生活が少しずつ変化していきます。
隣人タオに絡んで来るギャングとの諍いが結局命取りとなってしまいます。コワルスキーにとっては朝鮮戦争でのある経験の贖罪であったのかもしれません。クリント・イーストウッドファンにとっては、やはり、「ガンマン」の様に悪漢どもを一瞬で退治してくれることを期待してしまいがちですが、本作品では全く違い”丸腰”で立ち向かいものの見事に玉砕してしまいます。
初めて本作品を観た映画ファンは何が起きたのか理解出来ず、呆気に取られてしまったのではないでしょうか?我々の偉大なるヒーローがチンピラやくざにやられてしまっていいものでしょうか!
数少ないウォルトの知り合いで、軽口の叩けるのはジョン・キャロル・リンチ演じる理容師です。この二人の口汚い会話もあることから、もっとも汚いセリフの飛び交う映画として有名なのかも知れません。
なお、アジアからの亡命者であるモン族(中国の雲南省南部にも大勢住んでました)の人々がアメリカに大勢住んでいる事実を本作品で知りました。
コメント