1987年12月末、わたしは飛行機で雲南省昆明から景洪へ到着後、景洪から更にバスで5,6時間の山道を走って漸く、ミャンマー、ラオスと国境を接する傣族、ハ二族等少数民族住む深奥メコン川上流域の小集落に到着しました。川を隔てた向こう岸がミャンマー・ラオスという辺境地帯に大変魅力を感じ、一体どんな世界なのか見てみようという好奇心がありました。
びっくりしたのは、まさかこんな辺境の地を訪れている他の日本人観光客に遭遇することをまったく想像していませんでした。それぞれ単独で旅をしているという数人の日本人に出会いびっくり仰天しました。日本人男性2名、京都から来た女子大生も大阪から鑑真号というフェリーに乗り込み2,3日前に上海に到着したと言ってました。船中で出会った旅行者に雲南省シーサンバンナを訪れた方が良いという話を聞き、やって来たという、超気ままな個人旅行者でした。しかも、中国人に対して、通じる筈もない関西弁を捲し立て、「なぜ判って貰えないのか」と非常に不機嫌な顔をしていたのが印象的でした。
他男性の日本人は誰も中国語を殆んど話せず、身振り手振りで「会話」し、こんな辺境まで足を踏み入れている度胸は正に『大和魂』なんでしょうか!?
更に驚いたのは中国の他の観光地と異なり民宿の看板、レストランの食事のメニュー、街の案内板には英語が多用されていることです。欧米人旅行客を優しく迎え入れようというサービス精神旺盛な観光地という印象を受けました。多分、タイ、ミャンマー、ラオスと国境を接しているので、欧米人が国境を跨ぎ中国側に入境してくるケースが想像以上に多いのかも知れません。
ここに住む多くの少数民族の人々(主に女性)は、お祭りでもないのに、平素から色鮮やかな民族衣装を身に纏い・頭に被り、日常生活を送っている事にもびっくりしました。それも各少数民族がそれぞれ民族毎に異なる特色のある色鮮やかな色彩と、デザインの衣装を身に着けています。着ている衣装を見れば一目瞭然で何族か判別がつくようです。猫(ミャオ)族という少数民族は何となく猫に似た顔をしていました。土族は黒い衣装に身を固めていました。
一方、その中では少数派(といっても現在では30%位を占める様になったようです)ですが、普通の衣服を着ている漢族の女性も時々見かけます。当時の中国では人民服の様なかなり地味な服が一般的だったこともあり、色鮮やかな少数民族の服装に比べると、漢民族の人々は何ともつまらない服を着ているなあという印象を受けました。
当然、民族毎に使う言語の違いはあるものと思われましたが、彼らにはわたしの話す北京語も大体理解してもらえた様で、市場での買い物には何不自由する事はありませんでした。
週に一度開かれる「市」では、野菜、果物、竹・木工加工品、鶏、野生動物を持ち寄り「交易会」が開催されていました。色とりどりの民族衣装を着た、たくさんの民族が集まった非常に華やかな市場風景でした。少数民族間のいざこざ等は全く起こりそうもない、和気あいあいとした非常に長閑な雰囲気でした。黄色の僧衣を来た少年僧がお布施で食料を貰うのではなく、売店の前で、現金を出して食品を買っているところに出くわし、少し不思議な感じがしました。
郊外の田園風景も極めてのんびりしたものです。当時多くの住民は未だに原始的な高床式住居に住んでいました。集落の近くの池での魚を捕り、水田では水牛を利用して農耕作業が行われていました。
寺院は、タイ風の様式だと思いますが、イスラムのモスクに似た白壁に黄金に燦然と輝く丸い屋根の寺院でした。
日暮れ近くになると川沿いに少数民族の女性の一団が集まり、水浴びが始まります。
わたしはこの町で1987年12月の大晦日に真っ赤な夕日がメコン川に沈むところを眺めていました。
2,3日滞在後に路線バスで帰途に就き景洪を目指しました。街中のどこにもバス停らしいものが見当りません。到着した日にバスを降りた地点を思い出してその辺に目星をつけ、だいたいこの時間帯に、この辺にバスが停まるだろうという近辺をうろついていると、三々五々現地の乗客も集まり始めていました。時刻表があったのか無かったのか今となっては余り良く覚えていませんが、何とか無事帰りのバスに乗ることが出来ました。
景洪から、そのまま雲南省の中心昆明まで戻らず、白族が中心に住む大理を訪問しました。所要時間は15時間以上掛かった様な気がしますが、はっきりと覚えていません。大理はシーサンバンナで知り合った日本人が既に訪問していた町で素晴らしい町という評判を聞き興味を持ち訪問したものです。
洱海という美しい湖と美しい三体の仏塔が聳え、石畳の道がある古城だったという印象が残っています。また、漢族の男性が経営する中華料理店の味が絶品でそこで良く食事をしました。また、付近に普洱茶の原木が自生しているらしく、物凄い美味しいお茶が出されるので、毎回「美味しい、美味しい」と絶賛していたら、明日帰るという前日に一袋の茶葉をお土産に頂きました。このお茶は大切に北京まで持ち帰り、煎れて飲んでみましたが、北京の水は大理の水と性質が違うのか、大理で飲んだ普洱茶の味わいは出せなかったのが非常に残念でした。お茶はやはり現地(大理)で飲む普洱茶が一番美味しいのかもしれません。
魅力溢れる雲南省は訪問する度に新しい発見がある地域ですが、何といっても初めての訪問の第一印象は強烈でした。少しでもその感じが分かって頂ければと思います。
雲南省麗江訪問の投稿記事はこちら⇩
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