広東料理の本場広州の一番のおすすめ料理は「飲茶(ヤムチャ)」です。これは多くの「点心」、焼売、餃子、肉まん等様々な小皿料理を蒸し器の乗ったワゴンでテーブルに運んでくれ、自分で食べたい小皿を選んで食べながら、お茶を飲むという広東料理独特の食事のスタイルです。
大小様々な店舗があるので、自分の好みで愉しむ事が出来ます。香港、広州など都市の規模の大きいレストランでは体育館並みの広さがあり、朝から晩まで大盛況です。どの料理も日本人に好まれる、抜群に繊細な味付けです。お粥、白粥(何も具材がはいっていない)ですら、滋味があり体中に浸み込むような旨さがあります。毎日食べてもまったく飽きません。
次は各種スープ(中国名:湯)です。広東料理では食前のスープは欠かすことが出来ません。医食同源を重視する為、生薬の食材に野菜、肉を長時間煮込み、食材のエキスを抽出したとろみのない澄んだスープが五臓六腑に染みわたる感じです。豚あばら肉入り冬瓜スープなどは是非食べに、今直ぐにでも広州に飛んでいきたい位です。
夏場には体温を下げるスープ、冬になったら体を温める飲むスープ、少々風邪気味の時飲めば効果のあるスープ等々非常に研究し尽くされており、実に薀蓄が深いです。また、各家庭には伝統的の味付けのスープがある様です。
様々な種類のスープが有る為、さらに、店により特色のあるスープが提供される為、美味しいスープを飲む為には広東人の親しくなった友人と一緒に出掛け、自分の好みを説明して、その店に注文してもらうのがベストだと思います。あるいは広東料理店の店先には必ず炭火で煮られたスープのツボ・小鍋が並べられている所もあるので、その中から一品を選択すればよいと思います。
天然すっぽんのスープなどは味、効能とも想像を超える絶品です。是非入った店に天然すっぽんが入荷していれば、注文してみてください。但し、天然のスッポンは非常に高価なので注文の前には値段を確認した方が無難です。それと、鍋にスープが残った場合はビニール袋に入れて持ち帰るべきです。養殖物と違い、天然スッポンの滋養効果は想像をはるかに上回るものです。
広東では「清蒸鮮魚」などの魚料理は宴会料理には絶対に欠かせません。わたしが広州に駐在していた90年代は「鮮魚」は決して安い食材ではありませんでしたが、現在程高価ではなかったと思います。海鮮料理店の店先は水族館と同じく、或はそれ以上に新鮮な生きた魚が泳ぐ大きな水槽がずらりと並べられていました。お客は自分で食べたい魚を水槽の前で選ぶ注文システムになっています。白身魚である高級魚のハタが抜群のおいしさでした。「石班魚」(ネズミハタ)とかが一般的な名前ですが、口が大きく、分厚い下唇の下あごが上あごより前につきでている獰猛な面構えが特徴です。ナポレオン魚なども何でも食べてしまいます。
残念ながら日本の中華料理店ではハタは超高級食材の為、庶民が注文して食べる事はほぼ不可能です。九州などの高級食魚であるクエ(アラ)もハタの一種だそうです。
更に何と言っても、ご紹介したいのが「蛇」です。わたしも広州駐在前には蛇は見るのも嫌いで、登山道で早朝寝ぼけ眼でマムシを目撃しようものなら、一瞬にして覚醒して、100㍍は走って逃げだす程の蛇嫌いでした。
しかし、広州で蛇であると教えられずに出された、塩・コショウ・薄味の醤油で味付けされる肉料理を食べたところ、非常に淡泊な味で、癖もなく美味しいかったこともあり、その後まったく抵抗無く食べられる様になり、徐々に自分の好物になっていました。
広東人との食事の回数を重ねるうちに、自分で食べたい蛇を店頭のへび籠の中から選んでいました。本当かどうか判りませんが、蛇は持っている毒が強ければ強い程美味と言われていて、値段も猛毒な蛇ほど高価になります。でも、蛇の料理人は牙に猛毒を持つ毒蛇を調理する際も素手で扱っていました。
「食わず嫌い」という言葉も有る通り、食材を固定観念で判断してしまい、食わず嫌いな事は誠に残念ですね。「郷に入りては郷に従え」で、美味しい蛇肉を堪能していた自分の適応力に驚きます。
興味がある方は是非広州で、塩と胡椒味の「蛇肉のから揚げ」にトライする事をお勧めします。蛇の皮はセロリと一緒に炒められて良く食卓に出ました。コラーゲンたっぷりと言われて女性に大変喜ばれている一品です。
それと高級食材の定番中の定番、『アワビ』『ふかひれスープ』ははっきり言って非常に美味しいです。素材も重要ですが、シェフの腕が試される食材ではないでしょうか? 自分のポケットマネーで食べに行くことはほとんどありません。(皆無ではありませんが)大抵、中国、香港、マカオの客と会食の際、提供を受ける機会が圧倒的に多く、値段はいくらするのか自分でもあまりよく分かりません。
中華料理の中で「広東料理」は断トツに一番美味しいと思っています。「広東料理」の田舎料理と分類される料理に「潮州料理」というのがありますが、これもまた海鮮を主体とした絶品料理です。
同じく広東省の汕头(スワトウ)がこの潮州料理の店が多かった様に思います。ミル貝に似た「象牙蚌」の薄切りスープの味は忘れる事が出来ません。また、蟹をそのまま大量の塩で固めて蒸し焼きにし、調理後食卓で小ぶりのハンマーで表面の塩の塊を割って食べる料理は、余り他地域で見掛けない、宴会料理に大変喜ばれる目出度い料理でした。
広東人のバイタリティーの源は「広東料理」にあると思います。本当に朝昼晩三食食べ続けてもまったく飽きが来ない、素材の良さを生かした、さっぱりした味付けで、日本人に一番適した料理だと思います。
それと食後の新鮮な豊富な果物類も忘れられません。丁度今頃5,6月は捥ぎ立てのライチが出回りま始めます。
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