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”水の都”蘇州から”地上の楽園”杭州へ運河の船旅など 中国の思い出

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旅の随筆
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当時の運河に浮かぶ船
蘇州市内を縦横に走る運河 水の都
伝統的な住居が多数残っていた
杭州の西湖”蘇堤”散策
絶景の西湖 

杭州には30数年前に初めて訪問しました。蘇州から杭州までの運河を利用した船旅でしたが、その時もちょっとしたアクシデントに見舞われました。今でも「船旅」の思い出としてかなり鮮明な印象として残っています。勿論この時訪問した蘇州も杭州も素晴らしい中国の永い歴史のある町で大変な感銘を受けたものです。

そのまえに、蘇州に到着後の第一泊目の出来事をまず紹介します。

蘇州駅に夜到着して駅からホテルまで、タクシーが見つからなかったので、止むを得ずオートバイいわゆる「輪タク」に乗り、ガイドブックで探して宿泊出来そうなホテルに到着しました。当時は、事前に電話で予約を取る事は無く、行き当たりばったりでホテルのフロントまで直接行き、空き部屋の有無を確認して、部屋が空いていれば宿泊させてもらえるというものでした。

また、夜間にほとんどタクシーは走っていませんでした。

その晩、広大な敷地の中にある迎賓館のような大きなホテルの玄関に到着し、輪タクに料金を支払い、フロントに行き、空き部屋を確認すると「没有(ありません)」の回答でした。ホテルの外観から判断して部屋の明かりは殆ど点いていないので、問題なく空き部屋は有るだろうと思っていましたが、意外にも「空き部屋無し」の応えに愕然としました。

しかたなく諦めると、先ほど下りた輪タクの姿は既にありません。当時中国式ホテルは広大な敷地内にホテル棟がポツンと建っている為、門まで相当歩かされます。真夜中に泊まるホテルも無く、他のホテルに行く交通手段も無く、当時は夜間の流しのタクシーを拾う事は至難でした。他に行く当ても無く、最悪の場合は野宿しなければならないのかと途方に暮れ歩いていると、ホテルの敷地内に別の「旅館」の赤いネオンサインの看板を見つけました。

通常、外国人を宿泊させることが出来るホテルは限定されていましたが、この「旅館」は余り外国人を気に掛けておらず、誰でも簡単に泊めてくれる雰囲気でした。フロントで話をすると、パスポートも確認せず簡単に泊めて貰うOKが出来ました。野宿を覚悟していたので、屋根の下に寝られる事に感激しました。

当時得た教訓としては、ホテルに到着しても、フロントで宿泊可の確認が取れるまで、乗って来たタクシーや輪タクを絶対に返してはならないという事です。最悪宿泊を断られた場合、別のホテルまで行く「足」を確保しておく必要が常にありました。特に夜間は気を付けた方が好いと思いました。

さて、蘇州から杭州への移動ですが、

中国国内を旅行する際、大変たよりになったガイドブック『地球の歩き方』の蘇州・杭州の説明に「“上に天国が有る様に、地上には蘇杭(蘇州と杭州)在り”と称せられる美しい都市の間を結ぶ運河、即ち地上の天国と天国を結ぶ運河の船旅はとても素晴らしい旅の思い出になるので、是非とも体験した方が良い」と推奨されていました。

実際、船旅をした何人かの読者からの感想文も旅が素晴らしかったと何件も紹介されていました。わたしも迷わず、蘇州から船で杭州入りすることを決めました。

夕刻、ガイドブックに勧められている店で食事を終えて、杭州行きのフェリーに乗船しました。船内はかなり異様な感じで、通常の椅子席はなく、全てベッドの寝台という船でした。昔の養蚕に使われたいわゆる2,3段の「蚕棚式」ベッドのみの船、乗船後に、そのまま横臥し楽な姿勢で寝ていれば、杭州に到着するものです。とても悠長に運河両岸の風情を愉しむものとは程遠い感じがしました。

当然運河の両岸は真っ暗闇で何も見ず、仰向けのまま何もすることがなかったので、そのまま寝る事にしました。

残念ながら天国(蘇州)と天国(杭州)を結ぶ運河の船旅と言うほどロマンチックなものではありせんでした。お勧めは昼間の船にして、運河沿いの江南地区の田園風景を眺めながら行くべきだったのではと思いました。

寝付かれず、何度も寝返りを繰り返している内に、ふとしたことから突然脚か手のどこかが、頭上の扇風機のスイッチに触れてしまい、 扇風機が作動を始めました。扇風機がけたたましい音を立てて、首を振り始めました。必死に闇の中でスイッチを切ろうとしましたが、スイッチを見つける事が出来ず、止める事を諦めて、布団を頭まで被って寝る事にしました。初秋だったので、夜中に扇風機をつけっぱなしで寝る事は、風邪をひくのではないかと心配でしたが、どうにもなりません。

一晩中頭上30㎝の扇風機の風の直撃を受ける事になりました。朝まで我慢して寝ましたが、不思議な事に朝起きてみると扇風機は止められていました。多分係員か誰かがスイッチを切ってくれたのだと思います。

ところが最悪の事態とはこの扇風機ではありません。夜間扇風機の回転する音は継続していましたが、驚いた事に船は全く揺れることなく、静かに進んでいました。(進んでいるものと信じていました!)非常に静寂な船旅であった為、この静寂さに関してだけは「さすがに天国と天国を結ぶ船旅であり、揺れる事もほとんど無く実に優雅なものだ」と感心していました。

ところが朝起きて、現実を知る事になり愕然としました。船はまったく前進しておらず、蘇州の元の船着き場に係留されたままの状態でした。船室から這い出し甲板に上がると、機関室内で作業員の男2名が真っ黒に油まみれとなり、必死にエンジンの修理作業をやっているではありませんか。

少なくとも8時間以上船は同じ場所に停泊していたことになります。 なすすべなく船室で呆然としていると、どこで準備されたものかわかりませんが、出来立てのほっかほかの弁当の船内販売が開始されました。仕方なく、買って食べました。停船中の船内で調理されたものかもしれません。通常であれば、杭州に到着している時間帯にも関わらず、よく船内で弁当が調理できるなと変な事に感心しました。

しかしながら、いつまでたっても一向にエンジンが掛かる気配もなく、いったい後どのくらいこのまま“船上生活”を続けなければならないのか、杭州に何時到着するのか、だんだん不安になってきました。

昼近くになってようやく修理が終わり、エンジンが掛かり、杭州に向け出発出来る事になりました。夕方近く漸く杭州に到着しました。予定到着時刻より遅れる事12時間、他の乗船客はしびれを切らせてさっさと蘇州で下船してしまったのか、あるいはわたし同様最後まで船に乗って杭州に到着したのかどうか良くわかりません。自分のベッドに仰向けになって過ごすしかなかったので、他の乗客がどうなっているのか全く分からなかったのです。天国と天国の間を結ぶはずのフェリーに乗って、このホロ苦い体験とは驚きでした。

現在では蘇州・杭州間は高鉄(新幹線)に乗ればわずか2時間で行ける距離です。

 

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