『大統領の料理人』のあらすじと概要
「フランス最後の国父」と称されるフランソワ・ミッテラン大統領に仕えた、1980年代に2年間程、仏官邸史上唯一の女性料理人ダニエル・デルプエシュの実話をもとに、大統領のもとで働く女性シェフの奮闘を描くドラマ。
片田舎のレストランを経営しているオルタンスは、名刺を渡したことがあるだけのロブションの推薦があったからだという理由で、ミッテラン大統領の指名によってエリゼ宮のプライベートルームに迎えられます。オルタンスは、史上初の女性料理人として周囲の男性の嫉妬や専横に遭いながらも、給仕長のジャン=マルクや助手のニコラらの協力の下、素朴な家庭料理をこよなく愛する大統領から厚い信頼を得るようになっていきます。ひたすら料理の味を追求し続けます。やがて、オルタンスの情熱が冷え切っていた大統領官邸の厨房を刺激していくことになります。
その後、オルタンスは南極のフランス観測基地で料理人として応募し、1年間の任期を無事に終えて帰国することになります。映画はこの南極での帰任前の最終日一日の生活と大統領官邸(エリゼ宮)での2年間の出来事を交互に描出していく手法が取られています。
監督は「恋愛小説ができるまで」のクリスチャン・バンサン。
『大統領の料理人』のスタッフとキャストについて
クリスチャン・バンサン監督・脚本:1955年生まれ、フランスの映画監督。
カトリーヌ・フロ(オルダンス):1956年パリ出身。「家族の気分」(96)で、フランスのアカデミー賞と言われるセザール賞の助演女優賞を受賞する。「奇人たちの晩餐会」(98)、「女はみんな生きている」(01)、「地上5センチの恋心」(06)などの演技で高い評価を得、本作品「大統領の料理人」(12)で主演を務めた。舞台やTVドラマでも活躍を続け、フランスの国家功労勲章を受章している。
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ジャン・ドルメソン(大統領)はフランスの高名な哲学者で、本作が映画初出演。
『大統領の料理人』のネタバレ感想
ミッテラン大統領の招きに応じて、エリゼ宮に赴き腕を振るいます。しかし、古株の男性料理人たちから冷たい扱いを受けてしまいます。これは、ミッテラン大統領もどうやら実態を良く気付いているらしく、慰めの言葉を掛けています。大統領の素朴な家庭料理が食べたいという希望は叶えられますが、なんやかやと「妨害」が絶えません。古参のシェフのみならず、管理栄養士の意見やら、金を使い過ぎる、オルタンスの故郷からわざわざ取り寄せる旬の食材に関しても、いちいちいちゃもんを付けて来る執拗さには閉口します。
それにしても、腕を振るう数々の料理が作り出されていきますが、どれもこれも今まで食べたことが無いような料理ばっかりだったのには驚きました。フランス料理の奥深さを感じさせられました。肉料理に関しては野生の天然素材のうま味を生かした料理(ジビエ)が多いのでしょうか? 見た限りでもとてもお目に掛かれないような絶品の数々でした。場所が大統領官邸だけに『素晴らしい料理』のオンパレードなのですが、毎日こんな食事をされていては、やはり栄養士ならずとも、病気が心配になってしまいます。
わずか2年でエリゼ宮の料理人を辞し、新たに『南極料理人』に自ら志願したというから、かなり面白い経歴の持ち主の方だ思います。また、この時期にめぐり合わせたフランスの南極観測隊員はラッキーだったのではないでしょうか。何しろ、大統領官邸のシェフが南極観測隊基地の料理人なのですから、味は超一流レストランの味?
大統領の親族を呼んだ昼食会のメニュ―の一部ですが、
スクランブルエッグとセップ茸、サーモンとキャベツのファルシ、葉付きのミニキャロット添え。ロワール出身の大統領には、フォアグラの白ワインジュレ フーガス添え、ナント産のエスカルゴのカスレット、魚とイカのシャラント風スープ。
など、スクリーン上に料理が展開されます。
オルタンスの出身地ペリゴール(フランス南西部の内陸)は、わたしは全く知りませんでしたが、どうやら、食いしん坊であれば目が輝いてしまう、フォアグラとトリュフの産地として有名な地域だそうです。彼女もフォアグラとトリュフを使った料理は得意中の得意、映画のシーンの中でも何度も料理に使われていました。さらに、彼女はそうした郷土料理を若い人や外国人に教える学校も地元で開いているほどの力の入れようです。
美味しい料理を食べて元気になる、美味しそうな料理の映画を見て元気をもらえればと思います。
何となく閉塞感の残る男性社会(エリゼ宮の厨房)の中でも、孤軍奮闘、決して負けることなく、精一杯頑張ったオルタンスの料理をこの映画で存分に”味わう”ことが出来ました。
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