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映画『ザ・マスター』(感想)第2次世界大戦直後のアメリカを舞台に、爆発的に信者を増やしていった新興宗教の教祖とその弟子の生々しい姿を描出する

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映画『ザ・マスター』のあらすじ・概要

ポール・トーマス・アンダーソンが「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」(2007)以来5年ぶりに手がけた監督作。

第2次世界大戦直後のアメリカを舞台に、爆発的に信者を増やしていった新興宗教の教祖とその弟子となった男の関係を描き出します。

第2次世界大戦が終結し、赴任先からアメリカへ戻ってきた帰還兵のフレディ・クエルは、戦地ではまったアルコール依存症から抜け出せず、社会生活に適応できずにいました。そんなある日、フレディは「ザ・コーズ」という宗教団体の指導者で、信者から「マスター」と呼ばれているランカスター・ドッドに出会う。

ドッドは独自のメソッドで人々を悩みから解放し、フレディもドッドのカウンセリングで次第に心の平静を取り戻し、彼に尽き従うようになります。ドッドは行き場のないフレディをかたわらに置き、2人の絆は深まっていきますが、フレディは次第にランカスターの言葉に疑問を抱くようになります……。

主演はホアキン・フェニックスとフィリップ・シーモア・ホフマン。2012年・第69回ベネチア国際映画祭で銀獅子(監督)賞、男優賞を受賞。

2012年製作/138分/アメリカ
原題:The Master

映画『ザ・マスター』のスタッフとキャストについて

ポール・トーマス・アンダーソン監督・脚本・共同製作「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」(07)でベルリン国際映画祭の銀熊賞(監督賞)、「ザ・マスター」(12)でベネチア国際映画祭の銀獅子賞(監督賞)を受賞。世界3大映画祭すべてで監督賞を受賞する快挙を達成しています。

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ホアキン・フェニックス(フレディ・クエル):19年には、トッド・フィリップス監督作「ジョーカー」でタイトルロールを演じる。同作はベネチア国際映画祭で最高賞の金獅子賞を受賞するなど、世界中で大きな話題となり、第92回アカデミー賞では4度目のノミネートにして初の主演男優賞を受賞しています。

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フィリップ・シーモア・ホフマン(ランカスター・ドッド):。作家トルーマン・カポーティの伝記映画「カポーティ」(05)でアカデミー賞をはじめ数々の主演男優賞を総なめにしています。

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エイミー・アダムス(ペギー・ドッド):

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ジェシー・プレモンス(ウィル・ドッド):3歳の時にコカコーラのCMに出演し、子役としてキャリアをスタート。ダンストと再び夫婦役で共演した「パワー・オブ・ザ・ドッグ」(21)では、第94回アカデミー助演男優賞にノミネートされた。

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映画『ザ・マスター』のネタバレ感想

【ネタバレあり】ポール・トーマス・アンダーソン監督は映画作品「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」(07)他でたいへん好きな監督のひとりです。ホアキン・フェニックスとフィリップ・シーモア・ホフマンという演技力抜群の個性派俳優の主演映画でした。ホアキンのあくが強烈で、フィリップ・シーモア・ホフマンの演技が少し薄味に見えてくるのが不思議です。

最後まで良く理解出来なかったポイントはマスター・ランカスターが船に転がり込んできたフレディを気に入り、その後ずっと彼を側近として遇している事でした。最初はフレディが持ち込む何とも怪しい黄色い特製ブレンドの゛酒”が気に入り、彼に作らせる必要があったのかもしれません。その後、妻ペギーや義理の息子も彼の存在そのものを煙たがり、近づけないで欲しいと要請します。しかし、彼を追いやる事をランカスターは認めなかった様です。病気(アルコール中毒)を克服するために教団と一緒に行動させる必要があることを難く信じていたのかもしれません。

一方、フレディの性格や行動もかなり常軌を逸している点が目立ちます。戦争体験により、精神的な葛藤を抱え続けていました。そして、教団と行動を共にする事で一時的な精神的安定を取り戻していた事は確かです。しかしそれも永続きせず、徐々にランカスターの言動に疑問を持ち始めるようになります。このあたりの苦痛に歪んだ表情、歩く後ろ姿などの演技力は圧巻でした。

本編で語られる「ザ・コーズ」の教義らしきものに、共鳴を覚えるような具体的な内容が一切語られていない事も少し不思議に思いました。『何兆年前から生まれ変わって…』うんぬんは理解が難しい。フレディが、ある室内で壁からガラス窓までの間を何度も往復し、手で触れた感触を表現していくシーンが延々と繰り返されます。正直何の意味があるのか全く理解に苦しみました…

戦争体験の後遺症” PTSD(心的外傷後ストレス障害)から救われる為には、うっかり道を誤ると恐るべき迷路に迷い込むことを訴えたかったのかもしれません…

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