>

新作映画『秘密の森の、その向こう』(2021/セリーヌ・シアマ監督)感想‣母性本能をテーマに据えた強烈な母親の温もりを感じる…

スポンサーリンク
絶対見逃せない映画 おすすめ
HansによるPixabayからの画像
スポンサーリンク

新作映画『秘密の森の、その向こう』のあらすじ・概要

「燃ゆる女の肖像」(➢18世紀のフランスを舞台に、望まぬ結婚を控える貴族の娘と彼女の肖像を描く女性画家の鮮烈な恋を描いた映画作品)のセリーヌ・シアマが監督・脚本を手がけ、娘・母・祖母の3世代をつなぐ喪失と癒しの物語をつづった作品となっています。

大好きだった祖母を亡くした8歳の少女ネリーは両親に連れられ、祖母が住んでいた森の中の一軒家を遺品整理の片付けに来ます。しかし、少女時代をこの家で過ごした母は何を目にしても祖母との思い出に胸を締め付けられ、ついに家を出て行ってしまいます。祖母の家に父と残されてしまったネリーは、母が子供の頃に遊んでいた近くの森の中で、偶然母マリオンと同じ名前を名乗る8歳の少女と出会い、親しくなります。少女に招かれて彼女の家を訪れると、そこは“おばあちゃんの家”でした……。そして、ネリーはマリオンが自分の母親(8才のママ)である事に気付きます…

日本アニメの影響を受けた映画だそうです。セリーヌ監督自身、映画雑誌インタビューで『シアマ監督は撮影中に方向性を見失った時、いつも「宮崎駿監督ならどうする?」と自分自身に問いかけたと打ち明けており、スタジオジブリ作品や細田守監督の「おおかみこどもの雨と雪」にも影響を受けたと述べています』(出典 映画ドットコム)その意味では日本人視聴者に響き易いストーリー展開になっているのかなと感じました。

本作が映画初出演のジョセフィーヌ&ガブリエル・サンス姉妹がネリーとマリオンを演じ、「女の一生」のニナ・ミュリス、「サガン 悲しみよこんにちは」のマルゴ・アバスカルが共演。2021年・第71回ベルリン国際映画祭コンペティション部門出品作品。

2021年製作/73分/G/フランス
原題:Petite maman(直訳すると「小さなお母さん」)

ValentinによるPixabayからの画像

新作映画『秘密の森の、その向こう』のスタッフとキャストについて

セリーヌ・シアマ監督・脚本:パリの名門ラ・フェミス(国立高等映像音響芸術学校)で映画制作を学ぶ。卒業課題として執筆した脚本を元に、監督デビュー作「水の中のつぼみ」(07)を撮り上げ、カンヌ国際映画祭ある視点部門に出品。

ジョセフィーヌ&ガブリエル・サンス双子の姉妹:ネリーとマリオン(映画初出演):

ニナ・ミュリス(ネリーの母親)『カミーユ』(19)。2014年に中央アフリカ共和国の紛争を取材中に、26歳で殺害された実在のフランスのフォトジャーナリスト、カミーユ・ルパージュを演じて高く評価された。

Jörg VieliによるPixabayからの画像

新作映画『秘密の森の、その向こう』のネタバレ感想

(ネタバレあり)亡くなった祖母の家に家族で遺品整理の為に訪れます。そこは、秋も深まり紅葉真っ盛りの樹木に囲まれた森の中の一軒家という設定です。母親に取っては自分が育った家でもあり、何もかもが無くなった祖母との思い出が詰まっており、堪え切れずに翌朝、夫と娘を家に残し立ち去ってしまいます。

残された一人娘ネリーが家の周囲にある森の中を散歩していると(深い森の中に小径はあるのですが、いつか道に迷わないかハラハラしながら見ていましたが…)偶然同じ年頃の少女マリオンと出会います。ふたりは直ぐに打ち解け合い、遊ぶようになります。ところが、マリオンの家に遊びに行くと、そこは”おばあちゃん”の家である事に気が付きます。不思議な森の中で、瞬時に時空を飛び越えていました。そのことを、ネリーはマリオンに語りますが、大して驚いている様子もありません。

不思議な世界が展開するのですが、それはおいて置いても、屈託のない二人の少女が、お互いに信頼し合いながら木で作った小屋に、紅葉した葉っぱを集め飾り付けをしたり、クレープ作りに興じたり、ゴムボートを担ぎ出し、近くの湖にある小島まで漕ぎ出したりする姿の何と清々しい事。何気無い日常のシーンでありながら、とても新鮮な姿を見せられ、これらの映像の連続に思わず見とれてしまいました。

また、8才の子供乍ら、時々ふと見せる大人の表情にはぎくりとさせられます。そして祖母の死に直面して心に大きな穴がぽっかり開いてしまいましたが、自分の母親の少女時代の世界に迷い込むという不可思議な体験を通じて、ネリーは喪失感から少し立ち直るきっかけを掴んだのではないかと思われます…

日本のアニメから発想のヒントを得たと監督は語っています。ここにある映像世界は日本のテイストは一切感じる事はありませんが、時空を超えた世界での人間同士(同い年の親子)の交流という驚くべき柔軟な発想力は”日本的”なのかも知れません…

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました