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劇場公開中おすすめ映画『すべてうまくいきますように』(2021/フランソワ・オゾン監督)感想‣愛する人の死を、自分の手で導かなくてはいけなくなったらどうする――という現実を直視する!

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『すべてうまくいきますように』のあらすじ概要

フランスの名匠フランソワ・オゾンが、「スイミング・プール」の脚本家エマニュエル・ベルンエイムの自伝的小説を基に、尊厳死を望む父親に翻弄される娘の葛藤、人生の意味や家族の愛を描いた人間ドラマ。

ユーモアと好奇心にあふれ、生きることを愛してきた85歳の男性アンドレ。脳卒中で倒れ身体の自由がきかなくなった彼は、その現実を受け入れられず安楽死を望むようになります人生を終わらせるのを手伝ってほしいと頼まれた娘エマニュエルは、父の気が変わることを願いながらも、合法的な安楽死を支援するスイスの協会と連絡をとります。父はリハビリによって徐々に回復し、孫の発表会やお気に入りのレストランへ出かけ、一瞬生きる喜びを取り戻したように見えたのですが…父の固い決断を尊重しようとする娘たちの姿を描く。

ソフィー・マルソーがエマニュエル役で主演を務め、「私のように美しい娘」のアンドレ・デュソリエが父アンドレ、「さざなみ」のシャーロット・ランプリングが鬱病気味の母クロード、「17歳」のジェラルディン・ペラスが妹パスカルを演じた。2021年・第74回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品。

2021年製作/113分/フランス
原題:Tout s’est bien passe

昨年秋、ジャン=リュック・ゴダール監督が幇助による自殺を遂げて世界に衝撃を与えた。ゴダールが亡くなったスイスでは、治癒不能な苦痛を断つための安楽死だけでなく、自分の死の尊厳を保つために自殺幇助を受けることが合法なのだ。本作は、父の自殺を幇助しようとした娘の実話の映画化である。(日本経済新聞記事2023年2月3日を引用)

と有る通り、フランス故国では「安楽死」は違法ながら、スイスでは合法化されている事にまず驚きました。

『すべてうまくいきますように』のスタッフとキャストについて

フランソワ・オゾン監督・脚本:“恐るべき才能”とも評された、フランスを代表する名監督。フランスを代表する女優が勢揃いした豪華キャストで話題となった「8人の女たち」(02)や「スイミング・プール」(03)など、女性主人公の心理描写で高い評価を獲得しています。

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ソフィー・マルソー(長女エマニュエル):13歳の時、オーディションで700人の中から選ばれ主演を務めた映画デビュー作『ラ・ブーム』の世界的大ヒットでスーパーアイドルとなり、ハリウッド大作にも出演、フランスの国民的俳優として愛され続けています。

アンドレ・デュソリエ(父親アンドレ)

シャーロット・ランプリング(母親クロード)1946年、イギリス、エセックス州生まれ。

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ジェラルディン・ペラス(次女パスカル):

『すべてうまくいきますように』のネタバレ感想・見どころ

たいへん重苦しいテーマである「安楽死(尊厳死)」を真正面から取り扱いながら、ユーモアと好奇心に溢れた”商業的”な映画に仕上げるところは西欧人監督、スタッフ/キャストでなければ無理だろうなと考えてしまいました。

勿論、最近の邦画にも同じテーマを扱った問題作『プラン75』があります。この映画はあくまでも近い将来の制度を描いたものでした。鑑賞後の印象としては「満75歳から生死を選べる制度が施行・・・』されるなんて、まだまだ先の話で「自分にはたぶん関係無い」と思っていました。ところが、本作は現実に起きている”事実”に基づいている為、かなり現実味があり、「明日は我が身」として考えざるを得ない重要なテーマを突きつけられた気がしました。

自分の人生に見切りをつける年齢として、(75歳よりも)85歳は非常に現実味があります。

安楽死を決断した父親アンドレと、彼から手助けをして欲しいと頼まれた娘(長女)の関係は、劇中過去を度々回顧するシーンが映し出されますが、それ程親密だった訳ではありません。子供時代のエマニュエルは大食いでいつも何かを口に入れています。事もあろうに、父親から「今は綺麗になったが、昔は不細工だったなぁという」という言葉を何気なく囁かれてしまいます。

芸術家である母親は永年鬱病を病んでおり、夫婦、母娘間での会話は以前から成り立っていない様に見えました。言葉は悪いかも知れませんが、崩壊仕掛けた家族にも関わらず、父親が頼ったのは二人の娘であり、特に姉のエマニュエルでした。看護師らにも同じような援助を求めていたのかもしれませんが、真剣に取りあってくれません。

脳卒中に倒れ、身体の自由が効かなくなった為、急に弱気になり「安楽死」をしたいので手伝って欲しいと言われます。多分、エマニュエルは身体さえ回復すれば、父親の決心も変わるのではと考えていたと思います。一方、一度決めた事は決して意思を変えない頑固オヤジである事も理解していました…

スイス(安楽死を幇助する合法的な協会組織がある)に行っても、土壇場で気持ちが変わるかもしれないというわずかな望みはあったと思います…

映画の中で、もう少し語って欲しかった事は父親アンドレが何故「安楽死(尊厳死)」を選んだのかという思いの核心部分です。本作では触れられることはありませんでした。

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