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公開中新作映画『小さき麦の花』(2022/リー・ルイジュン監督)感想‣不条理な状況に置かれても自分のなすべきことを見失わず、淡々と生きる姿に感動!

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『小さき麦の花』のあらすじ概要

2011年、中国西北地方甘粛省の農村が舞台。貧しい農民の四男ヨウティエと障がいのある内気なクイイン。互いに家族の厄介者だったふたりは、見合いで結婚をします。やがて、ぎこちない生活乍ら、互いを慈しみ、力を合わせ、作物を育て、質素な家を作り、慎ましくも日々を力の限り懸命に生きますが、自然の猛威や変わりゆく時代の波にさらされ、そんな幸運な日々は永続きはしませんでした……。

ベルリン国際映画祭の星取りでは驚異の4.7点(5点が満点)をマークし、金熊賞最有力と絶賛されるも残念ながら無冠となります。しかし、中国で公開されると、レビューサイトでも本年度中国映画ベスト1の評価を得てじわじわ広がり、公開後2ヶ月経ってからTikTokが火付け役となり、若い世代を中心に興行収入トップに躍り出る大ヒットを記録した作品。

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JackieLou DLによるPixabayからの画像

『小さき麦の花』のスタッフとキャストについて

リー・ルイジュン監督:1983年、中国・甘粛省生まれ。これまでに5本の長編映画を監督し、人と人との関係性や土地、急速に変化する中国の片田舎の“家族”や“生”や“死”に焦点を当ててきた作品を発表しています。

ウー・レンリン/武連林(ヨウティエ):本作の舞台となった甘粛省の村で実際に耕作を営む農民であり、監督の叔父(叔母の夫)にあたる。

ハイ・チン/海清(グイイン):1977年、南京生まれ。中国で2018年No.1ヒットを記録したアクション映画『オペレーション:レッド・シー』(18)などに出演。中国で最も高く評価され、愛されている女優の一人。「本作では障がいのある農民の妻役にノーメイクで臨み、その役作りのためにヨウティエ役のウー・レンリンの家に10ヶ月滞在して実際に生活、その土地に溶け込んだ見事な演技を見せている」というから驚きの役作りです…

知仁によるPixabayからの画像

『小さき麦の花』のネタバレ感想・見どころ

ネタバレ有り

映像を見ていてもしかして中国の何十年も昔の話ではないかと錯覚しました。実際の舞台は10年少し前の2011年という設定でした。舞台となった甘粛省は有名な敦煌莫高窟遺跡などシルクロードの要衝などがあり、歴史舞台に登場した時期もあるものの、砂漠地帯が広がり現在は決して豊かな土地柄ではありません。

映画の開始早々、重苦しい雰囲気が流れ貧困地域の暗い話かと思いました。しかし、農作業を通じて日々の糧を得る作業の一つ一つを丁寧に映像化しただけなのに、すべてが目新しい発見に満ち溢れていいる事に驚かされました。

一袋の麦の種を購入し、ロバの労力を利用して(主人公ヨウティエは”こき使う”という言葉を多用していました)一生懸命に畑をふたりで耕しています。麦の種を植え育てればやがて収穫時期を迎え10倍にも20倍にもなるという事を知っています。

卵を所々穴を開けて大きな箱の中で電球の光と熱でヒヨコに羽化させていました。これらのひな鳥はやがて彼らに新鮮な卵を毎朝もたらす事になります。

麦の収穫では、身体がカブレてしまったグイインを労り、ヨウティエはかなり急な流れとなっているちょっと危険を感じる用水路で体を洗ってやります。(この急流は後の大事件に発展する事を少し示唆していたのかもしれません)

ヨウティエの血液型はと特別なRHマイナス型なので、地方政府指導者の要請で度々献血の要請を受けそれに応じざるを得ない様子が描かれています。何と町までの送迎には政府役人(顔役)の所有する”BMW”に乗せられていました。ヨウティエに付き添って行ったグイインは慣れない車に酔って嘔吐してしまいます。献血の後には豪勢な夕食が準備されていました。

それら一つ一つの話を見ている内に、ヨウティエ夫婦の応援団になっていました。テレビも無い極貧生活が続きますが、狭い小屋から、土とレンガの手作りで家屋を作ってしまうところは驚きでした。人それぞれ幸福の尺度は違うので、彼らの生活を見て゛可哀想だ”と同情するひとも多いと思います。しかし、一方で”なんと幸せな生活を送っているんだ”と羨ましく思うひともいるのだと思いました(わたしもその内の一人です)そのことを気付かせてくれたリー・ルイジュン監督、他作品も大変気になりました…

なお、題名の『小さき麦の花』というのは小さい麦の実を5,6粒手の甲に押し付けた花形の事…

今年一押しの作品です。

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