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おすすめ映画|『凯里ブルース』(2015/ピー・ガン監督)そこに本物の中国の”人生”が存在する

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「凯里ブルース」のあらすじと概要

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ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ」でのワンシークエンスショットという演出で注目を浴びた中国の新世代弱冠26歳の監督ビー・ガンが、2015年にメガホンをとった長編監督デビュー作品。監督の故郷である凱里で撮影され、出演者の大半が監督の家族や親戚、友人などがキャスティングされているという低予算の作品ながら、スイス・ロカルノ国際映画祭の新進監督賞と特別賞をW受賞、フランス・ナント三大陸映画祭グランプリ、台湾の金馬奨で最優秀新人監督賞など各国の映画祭で賞を総なめしている。

凱里にある小さな診療所に勤務し、毎日を送るシェン。ある犯罪を犯し刑期を終えて、凱里に帰った時には妻はすでにこの世になく、かわいがっていた甥も何者かによって連れ去られてしまし凯里にはもういない。主人公シェンは甥と同じ診療所で働く年老いた女医のかつての恋人を捜す旅に出る。その途上で立ち寄ったダンマイという名の村で、偶然に知り合う人々との交流と体験が綴られていく…

原題:路边野餐

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「凯里ブルース」ネタバレ感想

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ストーリーとテーマについて

舞台は中国貴州省凯里です。ほとんどの日本人には馴染みの薄い貴州省の州都貴陽から更にバスで3時間と離れたところに凯里はあります。山の中の山村でそれでも周辺の人口を併せると50万人ほどになるそうです。映画の中でも取り上げられていましたが、少数民族のミャオ族、トン族が全人口の7割余りを占めており、中国の中では最貧地域の一つとなっています。凯里出身の監督でなければ、映画の撮影でこれほどこの地に住む人の本当の姿、本当の生活空間を描く事はまず不可能なんだろうなとつくづく感じられました。

わたしは一度だけ以前凯里に出張で訪問したことがあります。凯里のホテルで一泊して、客と食事をした記憶があります。その時は典型的な出張者として、凯里の町を通り過ぎたに過ぎず、そこに生きている人の生活の本質に触れる事は、ほとんで出来ませんでした。

ただ、中国最大の少数民族ミャオ族の村は『西江千戸籍ミャオ寨』と呼ばれ、高床式木造建築群が集まり、実際は民家1288戸を数えるそうですが、かなり大規模観光地化が進んでいる印象を強く受けた記憶があります。

一方、本作品では、他所者の訪問者が触れることの出来る「凯里」とは全く別のビー・ガン監督の描く「凯里」を体感する事が出来ます。
全般的な映画のトーンは薄暗く、陰湿でセリフもそれ程多くはありません。この世界は何十年も昔の中国の田舎町が舞台と勘違いする人も多いと思います。しかし、今現在の現実に近い凯里の姿だと思います。

白タクのバイクはしょっちゅうエンストを起こし、中々エンジンが掛からないのも、現在の話だと思います。住んでいる家のすぐ横に大きな滝が流れていて、家族の会話が掻き消されて夫婦の会話が少なかったとのやり取りもありました。また、家の壁に列車の映像が延々と映写されるシーンの意味は今も良く分かりませんでした。あの家が列車のトンネルの中にある筈はないと思いますが、実際はどうなのか良く分かりません。

中国南部地区の貴州省は省都貴陽市で海抜1000㍍を超えており、一年中ほとんど曇りの日が続きます。特に夏は晴れる事が無く、却って気温が上がらず過ごし易いとはいうもの、曇天ばかりの鬱陶しい毎日が続くと本当に気が滅入ってしまうものです。

診療所の同僚である女医の鎮遠にいる元恋人に届け物をする事と、自分が嘗て可愛がっていた甥を探して旅に出発することから映画が大きく展開します。ほとんど無人の列車、先ほど言及した白タクオートバイに乗るシーン、乗り合いのトラック荷台に乗り込んで、途中の村“ダンマイ”にようやく辿りつきます。ここで甥と同名の“ウェイウェイ”という青年との出会いがあり、将来凯里に出て観光ガイドになることを夢見る若い女性や散髪屋の女性理容師と打ち解け、過去の自分の話を打ち明けたり、ライブバンドに飛び入りで歌を歌い、その理容師に聞かせたりしています。此処のシーンでは思わず、渥美清扮する寅さんがマドンナに巡りあう感覚に似た印象を受けました。まさか、ピー・ガン監督が寅さんシリーズを見ているとは思われませんが...

26歳とビー・ガン監督はまだ本当に若いのですが、本作品全般に(多分自作の)詩の朗読を散りばめています。随分洒落た映画作りをするものです。その詩の字句と貴州省の山岳のカントリーロード風景が呼応し、観客は映画のシーンに連れ込まれ登場人物と一体化、映画にのめり込んで行ってしまうところが、この映画の凄みではないでしょうか!確か、他の映画感想で、映画終了後もしばらく椅子から立ち上がれなかったという文も読みました。現実に戻るまで少し時間を要する人も確かにいるかも知れません。

冒頭述べたように観光客として通り一遍の観光ルートで見る事の出来る凯里及び貴州と映画で感じることの出来る凯里・貴州はまったく別ものです。映画の可能性をここまで深め、ここまで広げる事が出来た本作品には正直びっくり仰天しました。

『ロングデイズ・ジャーニーこの夜の涯てへ』はビー・ガン監督の第二作目であり、本作品『凯里ブルース』よりも早く日本公開され大変な反響を呼んだ理由が良く分かりました。また、『ロングデイズ…』の方が本作品より格段に映画作りに磨きが掛かっているとのことです。私はこちらはまで見ていないので、ぜひ見て見たいと思いました。

中国の最果ての田舎町からどえらい天才監督の出現に驚きました!

日テレドラマ

キャラクターとキャストについて

本当に珍しく晴れている鎮遠の奇跡の一枚 想像も出来ません!

ビー・ガン監督/脚本:1989年6月4日生まれ、出身中国/貴州省凱里市

主演:チェン・ヨンゾン(シェン役)

まとめ

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日本公開前から凱里出身の新鋭監督が撮った「凱里ブルース」と題名を聞いて非常に興味を引かれ楽しみにしていました。ところが、当初開演日が4月18日と発表されており、もしやコロナ禍の影響で今後も劇場で見る事はできないのではと懸念していました。ところが、幸いな事に劇場再開後の第一作品として本作品を見ることが出来ました。一緒に行ったかみさんは「退屈な映画だった」「何十年前の時代の映画?」と聞かれたので、現代の映画だよと応えたら大変驚いていました。やはり家の中に突然列車が走る出すシーンに衝撃を受けたようです。

現地で暮す一人一人にそれぞれの物語がある事がしみじみと分かります。映画の可能性、楽しみ方が少し変わるような気がします。次回作が非常に楽しみです。舞台は又貴州省でしょう!

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