『それでも私は生きていく』のあらすじ概要
「未来よ こんにちは」のミア・ハンセン=ラブ監督が、父の病への悲しみと新たな恋への喜びという相反する感情に直面したシングルマザーの心の機微を、自身の経験を基に描いたヒューマンドラマ。
シングルマザーのサンドラは、通訳の仕事をしながら5年前に夫と死別、現在8歳の娘とパリの小さなアパートで暮らしています。サンドラの父ゲオルグは以前は哲学教師として生徒たちから尊敬されていましたが、現在は病によって視力と記憶を失いつつありました。
サンドラは母フランソワーズと共に父のもとを頻繁に訪ねては、父の変化を目の当たりにして無力感にさいなまれていました。仕事と子育てと介護に追われて自分のことはずっと後回しにしてきた彼女でしたが、ある日、旧友クレマンと再会し恋に落ちます。
2022年製作/112分/フランス・イギリス・ドイツ合作
原題:Un beau matin(ある美しい朝)邦題は激しい意訳!
『それでも私は生きていく』のスタッフとキャストについて
ミア・ハンセン=ラブ監督・脚本:自身の父親が病を患っていた中で脚本を書いた自伝的作品。スウェーデンの巨匠イングマール・ベルイマンが愛した島を舞台に据えた「ベルイマン島にて」(21)はカンヌのコンペティション部門に出品されています。
➢スウェーデンの巨匠イングマール・ベルイマン監督が数々の傑作を生み出してきた島が舞台、『ベルイマン島にて』(感想)天国の様な夏の島生活を体感
レア・セドゥ(サンドラ・キンツレー):献身的に父の介護のかたわら本業である通訳の仕事、子育てなど懸命に日々を送る中で、旧友のクレマンと偶然再会し、知的で優しいクレマンと過ごすうち自然に恋に落ちていく過程が描かれていきます。しかし、クレマンに妻子があることから一途になれない悩みを抱えている。
➢映画『若き人妻の秘密』(感想)ミステリアスな恋愛映画、最後にどんでん返しが待ち構える。レア・セドゥの魅力全開!
パスカル・グレゴリー(父親ゲオルグ・キンツレー):学校で哲学を教えていた経歴を持ち、大量の蔵書に埋もれて生活をしています。記憶が無くなり、視力も徐々に失われていく病気を抱えている為、施設生活を余儀なくされていく。
➢映画『エディット・ピアフ 愛の讃歌』(感想)フランスの国民的シャンソン歌手をマリオン・コティヤールがなり切りで熱演!
メルビル・プポー(恋人クレマン):フランソワ・オゾン監督作「ぼくを葬る」(05)で主演を務め、同監督とは「グレース・オブ・ゴッド 告発の時」(19)、「Summer of 85」(20)などでもタッグを組む。
地球化学(鉱物の分析など?)地道な研究を続けている科学者、結婚して家庭もある為、サンドラとの関係について悩み続けている。
➢新作映画『オフィサー・アンド・スパイ』(感想)国家権力対一人の男、命懸けで戦った男の驚きの大逆転劇!
『それでも私は生きていく』のネタバレ感想・見どころ
通訳という責任の重い仕事に就き、シングルマザーとして8才の長女を育てています。更に、病気を抱え既に自分ひとりでは生きられない老父の介護もこなしながら、新たな恋人(妻子持ち)とも付き合うという何とも慌ただしい生活が展開されていきます。しかも彼女(サンドラ)にとってはどのことも真剣勝負、一切手抜きをする事はありません。世間一般的にはあれもこれもこなすうちに、一たび問題が起こればヒステリックに成りがち、他の事がまったく手に着かないということも… 恐らく同じような立場の”シングルマザー”から見れば、少々綺麗ごとばかり並べてる…と見られるところがあるかも知れません…
それぞれの場面で、その一瞬一瞬を自分らしく生きるのがフランス人の”特技”なのかもしれません。あのクリスマスの晩、サンタクロースが窓から入ってい来るという演出はかなりのバカ騒ぎでした。大人も子供も底なしの大騒ぎっぷりにびっくり仰天しました。私事ながら、義理の息子がフランス人なので、こんな面白いパーティー、一度参加させて欲しいと頼んでみたいものです。
ミア・ハンセン=ラブ監督の父親が同じような患っていた病気の経験に基づき、脚本を書いた自伝的作品となっています。ストーリーの中で、何回も病院や介護施設の入転院を繰り返すシーンが出てきます。身内・家族が事前に下見をした施設は環境・サービスが不満足で、絶対にそんなところへは入所させたくないと思っていた施設に入る事になりました。こんな事も実際は起り得る事だろうと思われます…
最後に、やはり意識がはっきりしている時に決断すべき問題としての”尊厳死”が指摘されていました。何となくこの問題は今後避けては通れないのかもしれません…
最近見た尊厳死に関わる問題がテーマのフランス映画➢
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