『コンクリート・カウボーイ 本当の僕は』のあらすじと概要
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本作は米ペンシルベニア州フィラデルフィアに100年以上続く、街の安全を守る黒人乗馬コミュニティ「フレッチャー・ストリート・ステーブルズ」の基づく話とグレッグ・ネリーが2011年に上梓した小説『Ghetto Cowboy』を原作としている映画。また、本作はスタウブの長編映画監督デビュー作。アメリカ文化のほとんど顧みられない部分を取り上げている稀有の映画で、そこには、地域のコミュニティの中での、父と子の物語を展開している作品との評価を受けています。
退学処分を受けてしまい、フィラデルフィアの父親(ハープ)のもとに送られることになりました。コールは長らく疎遠だった父親ハープ(イドリス・エルバ)と一緒に暮らしたくなかったのですが、育ての親である母親が匙を投げた以上、父親が息子の面倒を見ざるを得ず、他にどうしようもなかったのです。ところが父親は馬を飼う事で生計を立てていました。しかも、驚くべき事に家の中で馬と一緒に住むような想像を絶する生活をしていました。
コールは「せめて自分と距離をとった理由を教えてほしい」と思っていましたが、ハープは乗馬に精を出すばかりでした。まるでカウボーイのように振舞う寡黙な父親に当惑しつつも、コールは父親の言いつけ通りに馬の世話を手伝うようになり、次第にカウボーイ文化に魅せられていくさまを描く物語となっています。
他方、父親と一緒に住むようになってから、ほどなくして、コールは子供時代の親友(スマーシ)と10年振りに再会を果たしますが、薬物取引に手を出している様に思われるスマーシと付き合う事は父親からも即座に反対されます。 しかし、ハープは父親に分からない様にこっそりと関係を続けます。このことは予期せぬ展開をもたらすことになってしまいます。
本作品とはことなり、都会ではなく大平原でのカウボーイの生活を描いた最近の作品投稿記事はこちら:つい先日、今年のアカデミー作品賞・監督賞を獲得したクロエ・ジャオ監督の作品です。
映画感想|『ザ・ライダー』(2017/クロエ・ジャオ監督)ロデオ・ライダーが主人公の現代西部劇
ついでに、『ノマドランド』の投稿記事はこちら:
映画観賞|『ノマドランド』(2020/クロエ・ジャオ監督)車上生活者たちの生き様を描いたロードムービー
同じく元競争馬との逃避行の話、
『コンクリート・カウボーイ 本当の僕は』のスタッフとキャストについて
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リッキー・スタウブ監督:ダン・ウァルザーと共同執筆した脚本をもとに、長編初メガホンをとる、本作品が監督デビュー作品となっています。
イドリス・エルバ(コールの父親):1972年生まれ、ロンドン出身。「28週後…」「アメリカン・ギャングスター」(ともに07)、「ロックンローラ」(08)などの話題作を経て、「マイティ・ソー」シリーズ(11~)、「ゴーストライダー2」(11)、「プロメテウス」(12)、「パシフィック・リム」(13)など大作への出演が続いている。最新作は「ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結」
➢おすすめ新公開映画|『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(2021/ジェームズ・ガン監督)
ケイレブ・マクラフリン(コール):Netflixの大ヒットドラマ「ストレンジャー・シングス 未知の世界」のルーカス役で知られる子役として人気が高く、本作品で映画主演デビューとなりました。ひと夏のみを父親と暮らす予定で、デトロイトの母親の元から、フィラデルフィアの父親の元に送り届けられる。
『コンクリート・カウボーイ 本当の僕は』のネタバレ感想
北フィラデルフィアの市街地の中で馬と一緒に暮らす黒人カウボーイが存在している事をこの映画を見て初めて知りました。周囲の住宅開発などもあり徐々に暮らしづらくなっている様子が覗われますが、この町の黒人カウボーイの歴史は100年以上も続く伝統があるとの事です。
貧困や薬物売買などのや闇の世界を抱えながらも必死に生きている人々の日常が赤裸々に描かれていますが、出演者の多くは本物の゛カウボーイ”が出演し、素人っぽくない演技を見せていた事を最後に知り驚きました。
長年疎遠であった父子の関係が決して、縮まる様子も無く平行線のまま物語は進行します。しかし、最後までそれ程心が通じ合う様子はなかったのですが、息子コールはカウボーイというものに魅かれて行く様子が描かれていました。
内容としては少し渋めな印象は受けますが、見落とされ勝ちな、都市カウボーイの生々しい姿を丁寧に活写した貴重な映画です。そこで語られる父子関係ストーリーの他に普段全く知る事の出来ない未知の都市カウボーイの歴史・伝統も少しだけ理解も深められる映画となっています。
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