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公開中映画『ケイコ 目を澄ませて』(2022/三宅唱監督)感想‣聴覚障害で耳の聞こえないボクサー、不安と勇気の中でひたすら生きる姿に感動!

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映画『ケイコ 目を澄ませて』のあらすじ概要

「きみの鳥はうたえる」の三宅唱監督が「愛がなんだ」の岸井ゆきのを主演に迎え、聴覚障害で一切耳が聞こえないボクサーの実話をもとに描いた人間ドラマ。2013年までに4戦を戦った耳が聞こえない元プロボクサー・小笠原恵子の自伝「負けないで!」を原案に、様々な感情の間で揺れ動きながらもひたむきに生きる主人公と、彼女に寄り添う人々の姿を丁寧に描き出します。

生まれつきの聴覚障害で両耳とも聞こえないケイコ(岸井ゆきの)は、ホテルの客室係として働く傍ら、再開発が進む下町荒川区の小さなボクシングジムで練習を重ね、プロボクサーとしてリングに立ち続けています。嘘がつけず愛想笑いも苦手な彼女には悩みが尽きず、言葉にできない思いが心の中に溜まっていきます。なお、勇敢に戦うボクシングの試合に対しては正直に怖いと応えています。そんな彼女は、ジムの会長宛てに「一度、お休みしたいです」と願う手紙を綴るも、出すことが出来ずにいました。そんなある日、ケイコはジムが閉鎖されることを知ります。そしてジムの会長もまた目の具合が悪く、視力を失いつつありました。

主人公ケイコを温かく見守るジムの会長夫婦を三浦友和と仙道敦子が演じています。

2022年製作/99分/日本

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Sergey GorbachevによるPixabayからの画像

映画『ケイコ 目を澄ませて』のスタッフとキャストについて

三宅唱監督:北海道札幌出身。『1999』『4』『マイムレッスン』『スパイの舌』といった短編作品を手がけたのち、初長編『やくたたず』を監督しています。

原作者 小笠原恵子:生まれつき耳が聞こえず、小中学校は普通学級だったものの、高校は聾学校に通っていた。卒業後は、職を転々とした後、歯科技工士として勤務する傍ら、真闘ジムに入門しプロとなります。4戦3勝1敗(2KO勝ち)の戦績。

岸井ゆきの:神奈川県秦野市出身。2017年映画『おじいちゃん、死んじゃったって。』で映画初主演。

三浦誠己:和歌山県出身。

松浦慎一郎:長崎県五島列島新上五島町出身

三浦友和:1952年生まれ、山梨県塩山市出身。

Jill FultonによるPixabayからの画像

映画『ケイコ 目を澄ませて』のネタバレ感想・見どころ

ボクシングの試合開始のゴングの音や、セコンドの指示・声援の声も聞こえず、試合終了の鐘の音さえも聞く事が出来ず、試合をする事は全く想像できませんでした。少しでもケイコ本人の感じている音の無い世界に近づけようと、映画は音響効果を極力抑えられていました。エンディングではまったく無音の中でエンドロールが映し出されるという”異様”な終わり方にはびっくり仰天、映画の余韻に耽るには効果抜群でしたが…

抑えめの音楽、会話(ケイコは話をする事もできません)に同調するかのようにボクシングジムの装備、練習器具もそれとなく”昭和”を感じさせる年代ものの機材が使用されていました。静寂を破る音はミット打ちの非常にリズミカルな快音が響いています。ボクシングは良く分かりませんが、このミットを打つ音を聞いているだけでもケイコが上級者の強者であることを感じました。

ボクシングの試合シーンは2戦のみです。1戦目では結構ガードが甘く打ち込まれる場面もありましたが、負け試合かと思っていたら、辛くも判定勝ちを収めています。この試合会場にはケイコの母親と弟が観戦に来ていました。母親は試合をカメラに捉えようとしますが、娘の試合を真面に正視出来ず撮った映像はすべてがピンボケでした。そりゃそうだと思います。ボクシングの試合とは言え、可愛い娘が殴り合いをしているシーンは真面に見られるものではありません。試合は早く終わって欲しい、勝って欲しいの一心で試合会場に来ていたのだと思います…最後の1戦は惜しくも相手のパンチを食らいKO負けを喫していました。

弟がケイコにボクシングの試合は怖くないのかと聞くと、「怖い」と正直に応えていました。弟はそれを聞いて、姉も”普通”の人間だったと安心していました。何故、ボクシングを始めたのか?また、何故プロを目指したのか?本編では、回答はありませんでした。わたしが想像するに、視聴覚障害を乗り越え、健常者(普通の人)以上に頑張った証を自分自身に示したかったのではないかと思います。何となく、障害があるから諦めようという安易な気持ちで逃げたくないという気持ちは十分伝わってきました。しかし、何故ボクシングを選んだのかは疑問として残りました。

また、周囲で見守る人間の多くは、非常に温かいまなざしでケイコに接している点は特筆されるポイントだと思いました。ホテルの同僚の女性従業員は試合に勝ったことを自分の事の様に喜んで応援してくれました。ジムの会長(三浦友和)は自分も視力の衰えと戦っているにもかかわらず、ケイコに何かと目に掛けてくれました。

欧米系のドラマティックな映像ばかり見る機会が多いのですが、ふと立ち止まり、本編の様な一隅を照らす様な味わいのある映画に足を止めてみるのもいいものです!

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