『灼熱の魂』のあらすじと概要
レバノン出身のカナダ人劇作家ワジディ・ムアワッドの戯曲『焼け焦げるたましい』をドゥニ・ビルヌーブ監督が映画化し、第83回米アカデミー外国語映画賞にノミネートされたヒューマンミステリー。民族や宗教間の紛争、社会と人間の不寛容がもたらす血塗られた歴史を背景に、その理不尽な暴力の渦中にのみ込まれていった一人の女性ナワル・マルワン（ルブナ・アザバル）の魂の旅が描かれていきます。
心を閉ざして生きてきた中東系カナダ人初老の女性ナワルは、ある日、実の子で双子のジャンヌとシモンに謎めいた遺言と2通の手紙を残し、突然この世を去ります。手紙はジャンヌとシモンが知らされておらず、存在すら知らなかった兄と父に宛てたもので、まだ見ぬ家族を探すためナワルの母国レバノンを訪れたジャンヌとシモンは、胸が引き裂かれる様な過酷な母の過去と向き合うことになります…
後にハリウッドで「メッセージ」「ブレードランナー 2049」「DUNE デューン 砂の惑星」など話題作を次々に手がけ、高い評価を受けているビルヌーブ監督の出世作となった一作。昨年8月、デジタルリマスター版でリバイバル公開されています。
2010年製作／131分／カナダ・フランス合作
原題：Incendies（戦火）
『灼熱の魂』のスタッフとキャストについて
ドゥニ・ビルヌーブ監督・脚本：2017年、カルト的な人気を誇るSF映画の金字塔『ブレードランナー』の35年ぶりの続編『ブレードランナー 2049』を発表し、アカデミー賞で撮影賞と視覚効果賞の2部門に輝いています。
➢映画『メッセージ』（感想）異星人とのコンタクトを描いたSF超大作、想像力を刺激させられる宇宙人との接触を見事に描く
➢公開中 新作映画｜『DUNE デューン 砂の惑星』（２０２１／ドゥニ・ビルヌーブ監督）ティモシー・シャラメ主演SFアドベンチャー巨編
ルブナ・アザバル（ナワル・マルワン）：1973年、ベルギー・ブリュッセル生まれ。2005年、ゴールデングローブ賞外国語映画賞受賞作『パラダイス・ナウ』での演技で注目を集めています。
➢上映中 おすすめ新作映画『青いカフタンの仕立て屋』（２０２２／マリヤム・トゥザニ監督）感想‣1枚のカフタンが完成するまでに職人は数ヶ月を費やす！！
メリッサ・デゾルモー＝プーラン（ジャンヌ）：
マクシム・ゴーデット（シモン）：
『灼熱の魂』のネタバレ無し感想・見どころ
母親ナワル・マルワンの余りに衝撃的な過酷な半生に言葉も出ませんでした。映画は兄や父親は本当に実在するのかという、父と兄探しの旅はミステリー仕立てになっています。しかしながら、内戦中のレバノンの様子が鮮明に映し出さた瞬間、極度の緊張感が漲る戦場の情景に身も心も凍りました。壮絶なシーンの連続に本当に呆気に取られてしまいました。内戦の実態・真実を目の当たりにさせられました。
イスラム派とキリスト派の報復合戦が繰り広げられていましたが、詳細は良く分かりません。犠牲者は兵士だけではなく多くの民間人まで及び孤児院の子供までもが連れ去られ『再教育』を受けるなどしていました。
母親ナワルは人一倍正義感の強い女性でした。彼女はテロリストとなります。それがあだとなりました。バスごと襲撃されガソリンで燃やされそうになり、その主導者の一人を暗殺しようと彼の子息の家庭教師として潜入し、ピストルの弾丸を放ちます。その場で取り抑えられ、刑務所に入れられる結果となります。刑務所内では見るも聞くも余りに無残な経験をすることになります。しかし、彼女は強い信念を持ち、過酷な刑務所生活をどうにか生き抜き、やがて解放されカナダに移住するように保護を受けます。
その刑務所の様相は誠に筆舌に尽くし難いものでした。そして運命のふたりの子供兄妹の双子を生んだのも刑務所の中…
未だ視聴されていない人の為には種明かしをするわけにはいきません。わたしは最後まで実際どういうことなのか理解することが出来ませんでした。また、こんな理不尽な事が起こり得るのか？”宿命”は余りに残酷過ぎないかという思いを強くしました。そして、何故彼女は、死期が近づいた時に息子たちに父と兄の存在を知らせようとしたのか未だ疑問は解けていません。そこには、双子（兄妹）を通じて兄と夫に伝えたかった「言葉」があった事は確かでした…
ちょっと重くるしいテーマながら、ビルヌーブ監督の実力の一端を見る事が出来る迫力満点の映画だと思います。
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