「真実」のあらすじと概要
「万引き家族」で第71回カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞した是枝裕和監督が、初めて国際共同製作(日・仏合作)で手がけた長編作品。
母と娘の間に隠された真実をめぐるストーリーを、フランスを代表する女優カトリーヌ・ドヌーブとジュリエット・ビノシュの共演で描く。
フランスの国民的大女優ファビエンヌ(ドヌーブ)が自伝本「真実」を出版し、それを祝うためという理由で、アメリカに暮らす脚本家の娘リュミール(ピノシュ)が、夫でテレビ俳優のハンク(イーサン・ホーク)や娘のシャルロットを連れてニューヨークから母のもとに里帰りをする。早速、母の自伝を読んだリュミールだったが、そこにはありもしないエピソードが書かれており、憤慨した彼女は母を問いただすが、ファビエンヌはまったく意に介さない。
しかし、その自伝をきっかけに、母と娘の間に隠されていた愛憎渦巻く真実が次第に明らかになっていきます。女優として優れていることを何よりも第一優先するファビエン、娘のリュミールとの葛藤が続くが、最後には徐々に真実が理解されて、母娘間の長年の確執が解決される事になります。
本作品は、2019年・第76回ベネチア国際映画祭のコンペティション部門に出品され、日本人監督の作品としては初めて、同映画祭のオープニング作品として上映され話題を呼んだ。
「真実」 ネタバレ・感想
作品のストーリーとテーマについて
ドヌーブは雑誌とのインタビューで是枝監督の印象を次の様に語っています。若干抽象的な表現で分かりずらい所もありますが…
彼の映画はこれまでにもたくさん拝見してきましたが、独自の世界観を持っている方なのだなと思いました。その独自性というのは、本作品『真実』のなかにもきちんと表れています。今まで手掛けた作品でも“家族”というものに視線を向けられていて、友人だったり、娘だったり――その関係性に力を入れられている方なんだなと。『彼の世界観の一員になりたい』と思っていたんです。今回一緒に仕事をさせていただきましたけど、まさに自分が想像していた通りの世界観でした
一方、共演者のビノシェのインタビューでの是枝監督の印象です。こちらも、ドヌーブの意見同様かなり抽象的な表現で、少し分かりずらい様な気もします…
私は、彼を劇作家のアントン・チェーホフに似ていると思っていました。チェーホフの戯曲において描かれる登場人物は、『善か、悪か』『黒か、白か』ということではなく“そのままの姿”で観客に愛されたり、あるいは、怖がられる。そういった世界観が似ていると思ったんです。是枝監督の人間に対する視点には、寛容の精神を感じとることができます。
フランスと日本の合作映画ということでの苦労のエピソードについては、
ビノシュより彼が日本語で書いた脚本が、果たしてフランスでそのまま通用するのか。その点を探るために、オープンな精神で臨んでいたと思います。例えば、あるシーンの冒頭のセリフが『すみません』という言葉から始まっていました。私たちにとって、それは謝罪の言葉。その言葉から会話を切り出すというのは、どうしても馴染めなかったんです。日本では誰かに話しかける際や、自分の意見を表明する時には『すみません』と会話を切り出すということを知ったんですが、やはりそれでは通用しないんです。フランスでは、謝罪の言葉から話を始めるということはあり得ないので、その部分はカットしてもらいました
こういった細かい点もあり、かなり現場では映画作りに苦労されたのではないかと想像されます。日本の観客としてはいつもの是枝監督の作品と異なるアウェイ感を意識したのではないでしょうか? これはやむを得ない事だと思います。しかし、フランスを代表する大女優をキャスティングした映画を日本人監督が撮ることなど、想像も出来なかった事なので、一大快挙ではないかと感じています。
キャラクターとキャストについて
是枝裕和監督・脚本・編集:1995年、初監督映画「幻の光」がベネチア国際映画祭で金のオゼッラ賞(撮影賞)などを受賞。「DISTANCE ディスタンス」(01)と「誰も知らない」(04)の2作が連続でカンヌ国際映画祭のコンペティション部門に正式出品され、後者で当時14歳だった柳楽優弥に日本人初・史上最年少での男優賞をもたらした。その後も国際的に高く評価され続けている。福山雅治を主演に迎えた「そして父になる」(13)で第66回カンヌ国際映画祭コンペティション部門の審査員賞を受賞。同映画祭には、続く「海街diary」(15)がコンペ部門、「海よりもまだ深く」(16)がある視点部門に出品された。福山と再タッグを組んだ「三度目の殺人」(17)は、ベネチア国際映画祭のコンペ部門に出品され、日本アカデミー賞では作品賞・監督賞・脚本賞・編集賞など6部門の最優秀賞に輝いた。18年の「万引き家族」で第71回カンヌ国際映画祭の最高賞パルムドールを受賞を果たす。
カトリーヌ・ドヌーブ:フランスを代表する女優、ロジェ・バディム監督「悪徳の栄え」(63)で注目を浴び、「シェルブールの雨傘」(64)でブレイク。フランソワ・トリュフォーはじめ、マルチェロ・マストロヤンニやロマン・ポランスキーら名立たる監督の作品に数多く出演。「インドシナ」(92)でアカデミー主演女優賞にノミネート、「ヴァンドーム広場」(98)でベネチア国際映画祭の最優秀女優賞、「8人の女たち」(02)の共演者たちと合同でベルリン国際映画祭の銀熊賞を受賞した。
ジュリエット・ビノシュ:85年の「ゴダールのマリア」と「ランデヴー」で注目を浴びる。「存在の耐えられない軽さ」(88)でアメリカに進出し国際的な名声を獲得。そのころに交際していたレオス・カラックスが監督する「汚れた血」(86)、「ポンヌフの恋人」(91)にも出演している。そのほかにも「ダメージ」(92)、「トリコロール 青の愛」(93)などで、フランスのトップ女優として活躍。94年に出産のために一時休業するが、「ザ・ホースマン・オン・ザ・ルーフ(原題)」(95)で復帰。「イングリッシュ・ペイシェント」(96)で米アカデミー助演女優賞を受賞し、「ショコラ」(00)で主演女優賞にノミネート
イーサン・ホーク他
まとめ
噂によると、是枝監督の次の挑戦はハリウッド進出との事です。自分の描いた脚本は既に手元にあるとのことなので、是非更なる飛躍を望みたいところです。また、日本映画も時には忘れずに、撮ってもらいたいものです。
是枝監督の挑戦心に敬意を示し99点、一点減点はドヌーブのたばこの吸い過ぎ分!
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