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おすすめ映画|『ブンミおじさんの森』(2010/アピチャッポン・ウィーラセタクン監督)タイ映画、森の精霊との交流を描く幻想的な世界感!

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「ブンミおじさんの森」のあらすじと概要

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タイの北部のナブアという村で、アピチャッポン監督自身が「前世を覚えている男性」とされるブンミおじさんの足跡を辿っていく中で作り上げられていった映画です。また、舞台であるナブア村という場所は過去にタイの共産党員が大量に虐殺されたことで知られており、悲劇的な歴史を背負った土地という負のイメージが残っているところだそうです。

そういう場所を舞台にして、タイの歴史、土着のピー信仰(これは日本の八百万の神々の考え方にも通ずるところがあります。世界は精霊に溢れており、人間はそんな精霊たちと共に暮らしているのだという信仰)、ラオスなどからの移民大国の側面を絡めながら、作られたのがこの『ブンミおじさんの森』という作品です。

本作品を見る前にある程度のバックグラウンドを知っておいた方が分かり易いと思います。私は今回、映画を見る前に解説など一切見ることなく、いきなり映画を見ましたが、突如赤く輝く目をした、毛むくじゃらの「猿の惑星」の出現を見て、SF映画かと勘違いしてしまいました。実際は「猿の精霊」だそうです。

(あらすじ)ある夜、ブンミはジェンたちと食事を楽しんでいると、彼の妻の亡霊が現れ、さらには森に入ったっきり行方不明になっていた息子が猿の妖精の姿になって突然現れるシーンが幻想的ですが、幽霊が出ようが、精霊が突如出現しようが、本人たちは現実の人間が現れた如く、少しも気持ちを動転させることも無く、平静に振る舞う姿がかなり異様に感じられました。

また、全く違うエピソートとして、顔のあざを気に病む王女が池のナマズと会話し、心を通わせるシーンが挿入されています。王女は身に付けて宝石を川にすべて落とし、私は美しなりたいといいながら、川の中で水の精霊ナマズに愛撫されて歓喜する妖艶なシーンもあります。ここは笑うべきシーンではない事に後から気づきましたが、突然の展開にびっくりしました!

最後に、彼は透析を受けながら、病と闘っているがある日、死期を悟ったかのように愛する家族たちと共に宝石が眩く輝く森の洞窟へと分け入っていきます…

幽霊、精霊との会話の中でも暗示的な内容のやり取りが数多くあります。「天国には何も無い、精霊は人に執着する…」などなど、、、やはり劇場でゆっくり映画に没入して映像の中で紐解いてくべき会話かもしれません。

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「ブンミおじさんの森」のネタバレ感想

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ストーリーとテーマについて

死は新しい命の始まりで、自然の巡りの一部だという素朴な死生観がのんびりと語られていくのがこの映画の中心テーマです。非常にゆったりした独特のリズムの流れの中で、徐々に理解されていきます。

画面に写し出されるのはタイ北部の貧しい農村の生活と自然の森の風景です。その映像が見る者の心に残すのは、草から牛へ、牛からナマズへ、そして王女へと転生しながら悠久の時を流れていく命の営みである死生観である輪廻を表現している作品となっています。

カンヌ国際映画祭パルムドール(最高賞)受賞の理由について当時の審査委員長だったティム・バートンは『この映画は私が見たこともない、ファンタジーの要素があり、それは美しく、奇妙な夢を見ているようだった』と述べたそうです。本賞受賞はタイでは史上初の快挙でうれしい限りですが、この映画のテーマである、輪廻という死生観は、果たして欧米人にも本当に理解されたのでしょうか?

キャラクターとキャストについて

Peggy ChoucairによるPixabayからの画像

監督・脚本:アピチャートポン・ウィーラセータクン 日本の研究者、中村紀彦氏によると、『映画は、アピチャッポンを構成する一要素に過ぎ』ないという『東北タイという凄惨な歴史が埋れる土地で、彼は映画だけでなくインスタレーションやMVや写真まで制作することで、はじめて複雑かつ広大なネットワークをつくりあげた結果、「異次元の複雑さ」で観客を惹きつけるとしている』と評しています。東京フィルメックスでも作品上映がされるなど、日本でも既に人気が高い。

(登場人物)

主人公ブンミ(タナパット・サイサイマー):タイ北部の山間に住む男性。19年前に妻と息子を失い、独り身で農場を営んでいる。温和で信心深い。腎臓病を患い、透析を付けていおり、余命が少ないと悟っている。過去に共産党員を殺したと告白する。

ジェン(ジェンチラー・ポンパス):ブンミの妹。成人の娘がいるが、夫と離婚し単身各地を転々としていた。トンと共にブンミの看病に訪れ、彼の家に腰を落ち着ける。ブンミから農場の跡継ぎに指名される。

トン:ブンミとジェンの甥。病身のブンミを世話するため、ジェンと都会からやって来た。ブンミらに似て、穏やかな好青年。後に出家して僧侶になる。

フエイ:ブンミの妻。19年前に亡くなっている。ブンミが自身の死期を悟ると、幽霊として彼の前に現れる。物静かな性格。幽霊として表れるが、生きている妹より若いままなので皆から笑われる!?

ブンソン:ブンミの一人息子。19年前にフエイが亡くなった後、行方不明になり失踪した。写真家で、猿の精霊をカメラに収めようとしたとき、彼らの仲間になってしまった。映画の冒頭では同じ複数の仲間たちと現れる。

ジャーイ:ラオスからの移民で、ブンミの農地で働く。家人として、ブンミの身の回りの世話も担っている。故郷に恋人がおり、手続きが済み次第帰る予定であった。うブンミは義妹と結構させようとするが、、、

なお、本作品で重要な立ち位置を占める音響には、日本の清水宏一が起用されていました。冒頭から、いきなりタイの森の中の「生の音」がそのまま映画の中から響き渡り、見る者を一挙にその世界の中へと巻き込んでいくような美しく真に迫る音響は大胆で、実に見事です。

まとめ

S. Hermann & F. RichterによるPixabayからの画像

タイの映画を見る事は殆んどないですが、一種独特で新鮮味を感じた。また、この映画がカンヌ国際映画祭で高く評価されるところは驚きました。地味な映画で、目立った表現も無い。極めて異質なファンタジー映画として認めているのでしょうか? ある映画批評の文章で本作品は見る人を選ぶと評価していましたが、その通りだと思います。

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