キリマンジャロの雪 作品情報
- 監督・脚本:ロベール・ゲディギャン(現在までの十数本の作品は、すべてマルセイユのエスタックを舞台にして撮っていて、キャストもスタッフもほぼ同じ学生時代からの知り合いを起用している)
出演 マリ=クレール役(ミシェルの妻、ヘルパー)/アリアンヌ・アスカリッド(イギリスのトップ女優の一人で、本編もそうであるが夫でもあるロベール・ゲディギャン監督作品に良く出演することで知られる。フランス最高峰「セザール賞」の主演女優賞をはじめ、欧州で各賞を受賞。)
ミシェル役(労働組合の委員長)/ジャン=ピエール・ダルッサン
ラウル役(ドゥニーズの夫)/ジェラール・メイラン
ドゥニーズ役(ミシェルの妹)/マリリン・カント - 公開 2012年 フランス、上映時間107分
- 64回カンヌ国際映画祭 ある視点部門受賞
キリマンジャロの雪 のあらすじ
港町マルセイユに住むミシェルとマリ=クレールは、結婚30周年をむかえる熟年夫婦。 夫ミシェルは労働組合の委員長として闘う道を歩んできた。そんな気骨あふれる夫を支えてきた妻マリ=クレール。
幸せな生活を送っていた二人だったが、夫がリストラにあい、強盗に押し入られるという事件まで起こる。しかも犯人はミシェルと一緒にリストラされた元同僚の青年だったことが判明する。しかし、青年が幼い弟二人を抱え、借金に行き詰っての犯行であったことが明らかになり、物語が意外な方向に進展していく...
『キリマンジャロの雪』は、厳しい状況におかれても人を思いやることの大切さを描いたドラマ。
長年連れ添ってきた夫婦、ミシェルとマリ=クレールは思わぬ犯罪に巻き込まれ、苦しみ、とまどいながらも、ある選択をします。困っている人に手を差しのべずにはいられない彼らの決断は、喜びも悲しみもともに分かちあう、人と人のつながりの素晴らしさを優しく語りかけています。
本映画は、文豪ヴィクトル・ユゴーの長篇詩≪哀れな人々≫から着想したと解説されています。お互いを信じ、助けあう、ユゴーが信じた人間が本来もつ善良な魂は、時代を超えて、私たちに響いて来ます。 世界的に経済が悪化し、日々の不安が増す今日、このマルセイユを舞台にした心あたたまる物語は、観る者に励ましと勇気を贈る。
※作家アーネスト・へミングウェイの同名小説とは全く関係ありません。
キリマンジャロの雪 の見どころ
明るく開放的な南仏の港町マルセイユ(上述通りロベール・ゲディギャン監督の作品はすべてが港町マルセイユが舞台)が舞台、夫は造船不況の煽りで会社をリストラされてしまうが、離職後もそれ程落ち込んだ様子は見せていない。
夫婦の熟年旅行(その目的地がタンザニアだった!)を子供たちが金を出し合いプレゼントする。喜びも束の間、これを知った同じくリストラされた若い同僚に強盗に入られ有り金、旅行券を強奪されてしますという急転直下の展開。そのタンザニアから「キリマンジャロの雪」という題名になったのか? しかしながら、真相は「1966年にパスカル・ダネルが作曲し歌って大ヒットした『キリマンジャロの雪』という曲をモチーフとして本編が着想された」とのこと…
ところが、この夫婦は常識的な市民と異なり、強盗に入られたことでも決して落ち込むことはない、犯罪の理由が小さな弟たちの面倒を見る為だった事を知り、拘留されている(判決が出れば15年…)兄に代わってその弟らの面倒を見ることになる。
困っている人には手を差し伸べようという絵に描いた様な善人夫婦を描いた単純なストーリーだが、昨今の世知辛い世の中、一服の清涼剤として清々しい気分に満たされること100%請け合いの映画と言える。
更に夫婦ふたりの考え方の波長がどんぴしゃりと合っている事も、結婚する前からそうだったのが、何十年も連れ添っていたからそうなったのかどうかは分からないが、幸せな夫婦でいる為には根本的に大切な部分の様な気がする。
夫婦としてお互いの気持ちを尊重するのは大事だが、深層部分でここのところは譲れない部分がある筈だし、この部分が噛み合わなければお互いに不幸な気がするが、如何でしょうか? しかしながら、そこまでぴったり合う夫婦というのも珍しいのかもしれませんが、、、
また、婦人がひとりで出かけた飲み屋でバーテンダーにギリシアの酒を勧められる。二杯目を注ぎ足しながらバーテンダーが吐く何気ない「だって、人生は二人で歩むもの・・・」というセリフ、お調子もののセリフにしては出来過ぎ…
ここで正直な話をしよう。本当は原作ヘミングェイの同名映画「キリマンジャロの雪」の方を見るつもりだったがうっかり間違えたものです。瓢箪から駒で中々捨てがたい素晴らしい映画にめぐり合えて儲けもの…(でも、紛らわしい題名は可能ならば変えて欲しかった -1 減点)
おすすめ度 ★★★★ 4点
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