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おすすめ本|『ホークス3軍はなぜ成功したのか 才能を見抜き、開花させた育成力』 喜瀬雅則著 (光文社新書)

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おすすめ本の紹介
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なぜ「ホークス3軍はなぜ成功したのか?」を読んだのか?

3年連続10回目の日本一に輝いたホークスの強さはどこにあるのか、常々疑問に思っていたが、少し分かった様な気がします。本書では野球の面白さを再認識させてもらった気がします。以前は背番号三桁の選手は一体誰なんだろうと全く関心がありませんでしたが、今後輝く可能性のある原石たちである事が分かりました。

野球は決して一軍の超優秀プレーヤーだけで優勝出来るわけではなく、2軍、3軍の選手や指導者、球団関係者や町の支援者、多くの熱烈なチームのファンがいて優勝できるものであることがわかりました。野球を見る目が全く変わってくるような気がします。コロナ禍で当面野球の試合を観戦できないのは非常に残念ですが、コロナ問題収束後テレビ観戦、野球場で観戦できる日が早く来ることを祈ります。

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「ホークス3軍はなぜ成功したのか?」のあらすじ・概要

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現在ホークスで大活躍している千賀滉大、甲斐拓也、牧原大成、石川柊太、周東佑京…選手は皆三軍の育成選手としてホークスに入団した選手と聞いて驚きました。以前は広島カープは人材育成が上手く生え抜きの選手を育成して強いチーム作りが得意であると聞いたことがありましたが、本書を読む限りホークスの人材育成システムは素晴らしい機能を発揮している様です。

それは、良い選手を発掘して、時間を掛けて育てる基盤が既にしっかり出来ていて、機能してるという事だと思います。この発想は元々米大リーグにあり、そこでは3軍はおろか、7軍、8軍まであり、実力アップと共に段階的にメジャーに昇格出来るシステムが整備されている為、非常に幅広い人材を野球界に吸い上げる仕組みとなっているそうです。日本の大相撲のクラス分けに似たような細分化があり、比較的スムースにプロ野球の世界に入れる道が開かれているのではないかと感じました。

3軍を作ると言っても選手・指導者を集める事、野球場・練習施設、宿舎の準備等資金は当然掛かってきます。当然その経費に見合った効果が上がるのかと反対意見もあったそうですが、そのあたりの苦心、工夫についても詳細に報告されており我々が常日頃経験してきたビジネスの世界と全く同じ問題にぶち当たりそれを解決していくところは他人事とは感じられませんでした。やはり、ダイエーの王貞治会長、根本陸夫氏、小林至氏らの存在も大きい事が良く分かります。

興味深い内容では「全体的にはプロのレベルまで 達していないが、一芸に飛び抜けた選手を探そう」という発想です。現在は誰もがその活躍を知る甲斐拓也捕手、彼は身長168㎝で野球選手としては小柄で、目立たない選手でしたが、飛び抜けた強肩で、補球から送球までの動作がとにかく速い。しかしながら、当時は他のどの球団も全く目を付けていない存在だったそうです。彼はホークス3軍で3年間鍛えた後、支配下登録選手に昇格しています。

その後の大活躍は誰もが知っている通りです。ホークスに三軍制度がもし無かったら甲斐選手はプロ野球選手になっていたかどうかわからなかったそうです。人間の運命は分からないものです。その甲斐選手は2020年からは急逝した野村克也氏の背番号「19」を引き継いだそうです。まだテレビで観戦して「19」を見ることが出来ないのが少し残念です。

また、千賀滉大投手の逸話についても詳細が記載されています。2019年のリーグ戦、日本シリーズでの大活躍は周知の通りです。対巨人戦4連勝の第一試合の先発勝利投手です。そんな千賀選手も高校3年生のドラフト会議直前にはどの球団もリストに挙げていない全く無名の存在でした。情報をもたらしたのは名古屋のスポーツ用品店の野球好きの主人だったそうです。このような貴重な情報網、人脈を築きあげておくことも大変重要だったと思います。

更に、野球の名門コース(熊本済々黌⇒早稲田 1年から登板)を歩んでいた石川柊太投手の話も驚きました。大学3年次に左肘を痛めた彼に、負傷以前はドラフト指名確実とみられていましたが、プロからの積極的なアプローチは無かったそうです。彼自身のプライドや高校・大学や周囲からすれば、「育成」選手としてプロに送り出すことは難しい選択だったということです。そのような状況の中で、石川投手がホークスの三軍を選択した心境の詳細がクリアにされています。

後半では、ホークス三軍の球場誘致に動いた地元「筑後市」の動きなど大変興味深い内容が語られています。

世間の客観的な意見はどんなものがあるのか?

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出版早々である為、書評等まだ多くありませんが、”読書メーター”より以下一部引用させて頂きます。

過去形でなく現在進行形。どこまで行けるものか、楽しみにしています

裾野を広げて、地域の活性化にもなり一挙両得になる素晴らしい構想だと思う。また、素晴らしい結果も出されているので申し分が無かった。プロ球団の2軍、3軍の内情を少し垣間見る事が出来た。決して華々しい1軍の試合だけが野球ではないという事を思い知らされた。

同じ作者のおすすめの本はあるのか?

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  • 牛を飼う球団」(小学館)高知球団の経営債権とユニークな経営戦略を描く。
  • 不登校からメジャーへ」(光文社新書)

以上2冊。まだ未読ですが、大変興味ある本なので、こちらも近々読んでみたいと思います。

まとめ

著者は元新聞記者で今回も関係者への徹底した取材に基づき本書を書いています。内容的にも大変面白く興味深く、ホークスの強さの理由が良く分かります。金を使い有望選手を他球団から連れてきて補強しまくる、どこかの球団とは随分違う気がします。

本書でも触れられていますが、地域と密着して球団が育つというのが、応援する方も応援のし甲斐があるというものです。そういう意味では、私の住む隣町鎌ヶ谷にある日本ハムファイターズ二軍基地、ここは今以前は全く興味ありませんでしたが、近場でもあり、練習や他チームとの練習など見学に行きたくなりました。必死に一軍昇格を目指して練習に励む多くの逸材の原石に出会える事を楽しみにしています。

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