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おすすめ映画|『田園の守り人たち』(2017/グザヴィエ・ボーヴォワ監督)農民たちの姿を描いた19世紀フランスの画家ミレーの絵画を彷彿させる田園風景が圧巻!

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「田園の守り人たち」のあらすじと概要

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(あらすじ)

1915年、第一次大戦下のフランスの農村が舞台。2人の息子を西部戦線の戦場に送り出した未亡人オルタンス(ナタリー・バイ)と、その娘でやはり夫を戦場にとられたソランジュ(ローラ・スメット)が暮す家族が物語の中心。

働き手3人を戦場に奪われた母娘は女手だけで、昔ながらのやり方で残された農園を守っていました。冬を前に種まきに備えなければならず、2人は息子や夫に代わる働き手を新たに雇い必要がありました。

そこで母親オルタンスは、新たな働き手として孤児院出身の娘フランシーヌ(イリス・ブリー)を雇い入れることにしました。彼女は年若く、誠実で、その上大変な働きもので、家族皆から信頼を得て、家族の一員として無くてはならない存在として暮らし始めていました。

前線から一時帰休で実家に戻ってきたオルタンスの次男・ジョルジュは美しい雇用人フランシーヌに魅かれ、2人は手紙を交わすようになり、いつしか恋に落ちる事になります。

激動する時代のなか、昔ながらの農村の暮らしにも、様々な影響を与え、アメリカ兵が農村に駐留したり、牛馬を使っていた農作業も機械化の波がやってきます。そして田園を守る女たちにもいろいろな変化が現れてきます。

2年間で一家に取っては無くてはならない存在になっていたにもかかわらず、フランシーヌはとある”切っ掛け”で、オルタンスから一家を追い出されてしまいます。その時、既に彼女は次男・ジョルジュの子供を身籠っていました…

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(概要)

農民たちの姿を描いた19世紀フランスの画家ミレーの絵画そのままを彷彿させる絵画の様な田園風景の中、第1次世界大戦を背景に、夫や息子を戦場に送り出した女たちの不安と静かな戦いと、渦巻く思いを描いたヒューマンドラマ。

フランスの名女優ナタリー・バイと娘のローラ・スメットが劇中でも母娘役を演じ、映画初共演を果たした。ふたりの顔の印象は確かに大変良く似ていました。

監督は、カンヌ国際映画祭グランプリ受賞作「神々と男たち」などで知られるグザブエ・ボーボワ。2017年・第30回東京国際映画祭ワールド・フォーカス部門では「ガーディアンズ」のタイトルで上映されたもの。

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「田園の守り人たち」ネタバレ感想

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ストーリーとテーマについて

この映画の一番の魅力は、多くの批評家も異口同音に述べている通り、その美しい映像で描かれたフランスの農村の風景です。監督自らがロケハンを行い、農村に建つ家を実際数多く見て回った上で選びだされたものだそうです。

まだ機械化が進んでおらず、人と家畜が共に働く昔ながらのやり方で大地を耕し、その恵みを収穫し、得られた産物を家族や周囲の仲間と力を合わせながら自らの手で加工する様子が懇切丁寧に描かれています。

美しい映像で牧歌的な風景についつい見とれてしまいそうです。日本の瑞々しい水田風景などとは異なった小麦畑を中心とする1900年代初頭の労働集約的で、牧歌的な田園風景、井戸で水を汲み上げたり、家畜の餌付け、炭焼き、薪割り日常のシーンが続く、ほのぼのとした生活が延々と再現し描かれいるのも魅力的で、どの場面も印象に大変強く残ります。

この映像を担当したのはキャロリーヌ・シャンプティエ。グザヴィエ・ボーヴォワ監督のほぼ全ての作品の映像を担当しているそうです。『神々と男たち』ではセザール賞最優秀撮影賞(フランスにおけるアカデミー賞)を獲得しました。

一方、本作品の中では反戦の言葉は一言も語られることはありませんが、銃後の家を守る女性たちの重苦しい不安な気持ち、実際に家族の訃報を知らせるられる悲壮なシーンなどは反戦のメッセージを強く伝える場面となっていると思われます。

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キャラクターとキャストについて

グザヴィエ・ボーヴォワ監督:自ら主演した「Nord」(91)で長編監督デビューを果たし、仏セザール賞新人監督作品賞と有望若手男優賞にノミネート。続く主演・監督作「N’oublie pas que tu vas mourir」(95/英題:「Don’t Forget You’re Going to Die」)でカンヌ国際映画祭の審査員賞を受賞する。その後の作品もベネチア国際映画祭などで高い評価を受け、「神々と男たち」(10)でカンヌのグランプリを受賞した。全ての監督作で脚本も手がけるほか、俳優として「ポネット」(96)、「夜風の匂い」(97)などに出演するなど多方面で活躍をしている。

キャロリーヌ・シャンプティエ(撮影)

自然の音だけが流れ、静かに流れる時間が映画の大半を占める中で、ここぞという場面に日本でも知名度の高いシェルブールの雨傘の作曲家・ミシェル・ルグランの手掛けた美しい旋律が流れています。極めて印象的に使われる音楽ですが、グザヴィエ・ボーヴォワ監督がミシェル・ルグランの楽曲を使用するのは、『チャップリンからの贈り物』に続いて2作目だそうです。正直を言えば、この情報は映画を見終わった後に仕入れたので、ミッシェル・ルグランの音として耳に入って来なかったのが誠に残念でした。

ナタリー・バイオルタンス役):1970年代を通して、映画とテレビで良いガールフレンドと素敵な田舎者の役割を演じた。1983年の『愛しきは、女/ラ・バランス』 において街娼の役割を果たすことによってイメージを変えた後に、彼女は演技の範囲を広げた。フランソワ・トリュフォーやジャン=リュック・ゴダールの作品によく出ている。

イリス・ブリー(フランシーヌ役):重要な役であるフランシーヌを演じたのは、女優の経験は皆無で、オーディションで選ばれた彼女。ベテラン俳優を相手に全く引けをとらない互角以上の演技力を見せていました。体当たりの演技で、盥で行水する妖艶な姿に思わずドキッとしてしまいました。セザール賞・リュミエール賞の、有望新人女優賞にノミネートされたそうです。

まとめ

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牧歌的な農村の日常生活を描いていますが、戦争という背景もあり大変重苦しい雰囲気があります。しかしながら、誰もが早く戦争は終わって欲しい事を望んでいる気持ちが溢れています。やがて、農村にも機械化の波が押し寄せたり、ラストでは新たな生命の誕生、兵士たちの戦場からの帰還などもあり、明るい兆しが見え始めるシーンで終わります。私の評価は96点!

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