「マリッジ・ストーリー」のあらすじと概要
「ヤング・アダルト・ニューヨーク」のノア・バームバック監督が、スカーレット・ヨハンソンとアダム・ドライバーを主演に迎えて描いたNetflixオリジナル映画。女優のニコールと夫で舞台演出家のチャーリーが結婚生活に葛藤を抱え、離婚に向かっていく姿を描いたヒューマンドラマ。結婚生活がうまくいかなくなり、円満な協議離婚を望んでいた2人だったが、それまで溜め込んでいた積年の怒りがあらわになり、弁護士をたてて争うことになってしまう。第92回アカデミー賞では作品賞のほか主演男優、主演女優、脚本など計6部門でノミネートされ、ニコールを助ける女性弁護士ノラを演じたローラ・ダーンが助演女優賞を受賞した。
「マリッジ・ストーリー」のスタッフとキャストについて
ノア・バームバック監督:2005年に監督と脚本を務めた「イカとクジラ」がアカデミー賞の脚本賞にノミネート、一躍名が知られるようになる。その後も、「フランシス・ハ」(12)、「ヤング・アダルト・ニューヨーク」(14)、ブライアン・デ・パルマ監督のドキュメンタリー「デ・パルマ」(15)などを手掛け、近年はNetflixで「マイヤーウィッツ家の人々(改訂版)」(17)、本作品「マリッジ・ストーリー」(19)などの話題作を発表している。
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スカーレット・ヨハンソン(ニコール役):「アイアンマン2」(10)でマーベル映画に初出演以降、「アベンジャーズ」シリーズを中心にブラック・ウィドウ役を演じ、「LUCY ルーシー」(14)や「ゴースト・イン・ザ・シェル」(17)などのアクション映画にも主演した。スター女優の地位を確立して以降も作品の規模やジャンルを問わず演技力を発揮し、ノア・バームバック監督作本作「マリッジ・ストーリー」(19)でアカデミー主演女優賞、タイカ・ワイティティ監督の「ジョジョ・ラビット」(19)で同助演女優賞にダブルノミネートされた。惜しくも受賞を逸している。
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アダム・ドライバー(チャーリー役):15年から始まった「スター・ウォーズ」の3部作ではカイロ・レン役に抜てきされ、世界的に名を知られるようになる。その後も「パターソン」「沈黙 サイレンス」(ともに16)、「ローガン・ラッキー」(17)、「ザ・レポート」(19)などの話題作で存在感を発揮し、ハリウッドの演技派俳優の中でも群を抜く存在となり、「ブラック・クランズマン」(18)、本作「マリッジ・ストーリー」(19)で2年連続のアカデミー主演男優賞ノミネートを果たした。
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ローラ・ダーン(弁護士ノラ役):本作でアカデミー助演女優賞を獲得。近年の主な出演作に「スター・ウォーズ 最後のジェダイ」(17)、TVシリーズ「ツイン・ピークス The Return」(17)、「ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏」(18)、「ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語」(19)など
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「マリッジ・ストーリー」のネタバレ感想
スカーレット・ヨハンソンとアダム・ドライバーがこれほど饒舌だとは思いもよらず、長回しのシーン、夫婦の言い争い、弁護士とのやり取りの機関銃の様な言葉のやり取りには凄みを感じました。 このシーンを見ただけで、欧米人女性とのケンカ(そういう状況に陥る状況は想像できませんが)では勝ち目は無いなぁと思いました。
本作品では女性弁護士ノラを演じたローラ・ダーンがアカデミー賞助演受賞を獲得しています。素晴らしい演技振りで、極めてインパクトの強い役を文句なく的確に演じていたと思います。しかりながら、本作主演のふたりの演技こそアカデミー主演賞に相応しいのではないかと改めて思いました。アンソニー・ホアキンのジョーカー役も素晴らしかったし、ジュディ役のレネーも確かに素晴らしかった。しかし、本作品のふたりも申し分なく役を演じ切っていたと感じました。同じ離婚劇を扱う映画「クレイマー・クレイマー」を40年ぶりに凌ぐ出来ではないかと某映画雑誌に表現されていました。同時のダスティン・ホフマンの映画を思い出しました。同作品中ではダスティン・ホフマンが男手ひとつで子供を育て、学校に送り届ける事に散々苦労していたドタバタが印象に残っています。慣れない手つきで焼いたフレンチトーストが真っ黒に焦げていたのが未だに記憶にあります…それに比べて、チャーリー(アダム・ドライバー)の父親役は決して起用ではないものの、それなりにスマートにこなしているところが時代の変化を感じるところです。お決まりのハローウィンの変装なども無難にこなしている良い父親振りがなんとも自然でした。
ふたりの離婚原因はニコール(スカーレット・ヨハンソン)の女優としての立場を譲れないという、我が儘な理由である様に思いました。自分の存在感がチャーリーの陰で薄くなっていることへの不満は、妻と女優の両立が難しい事の表れとなって出てきてしまいます。
勿論最近では夫婦共働きが増えて、それぞれが自立した職業を持つと夫婦関係を如何に保つかが段々難しくなっている事は想像に難くありません。本作品の中ではさらに複雑で職場においても夫婦が女優と舞台監督という立場だから、問題に輪を掛けて複雑にしているのではないでしょうか?
お互いに傷付けたいとは思っていないながらも、相手の存在が家庭内でも家庭外でも鬱陶しくなることは、ここではお互いにどちらかが、半歩下がってパートナーに合わせる立場に立たない限り家庭は上手く収まらない様な気がします。
本作の展開上では本人たちもいささかびっくりした表情をしていましたが、辣腕弁護士の手に掛かると離婚訴訟では、従来の子供との関わり方、面倒の見方等細かく分析され、どちらが親権取得の比率を多く取るか裁判で争われる展開になっています。これは、離婚訴訟がひとたび弁護士の手に掛かれば、金儲けの素材になり。本人たちの気持ちを無視されて変質してしまうという実態を描いていて、とても恐ろしく感じられました。
夫婦は言葉ではお互いに涙目ながら激しく言い争いを展開していきますが、どう見ても心底憎しみ合っている様には見えません。お互いに譲れない一線はあるのかも知れませんが、どちらかが譲歩すれば、元の鞘に戻れるのにという想いでじっと観ていました。ところが辣腕弁護士の手に掛かって見事に離婚が成立してしまったという幕切れには一抹の寂しさ、意外な気持ちが残りました。何となく、ちょっとしたボタンの掛け違いが大きな問題に発展してしまった様な幕切れでした。
最後に
「ジョジョ・ラビット」のスカーレットの母親役も物凄くよかったですが、本作品での母親役も素晴らしい。スカーレット自身は2度の離婚を経験しており、2度目の離婚劇の印象が本作品撮影と印象的に大分重なるようだ、感情移入の度合いが半端ではない感じがしました。迫真の演技ではなく、感情を映画撮影でぶちまけたと言えるのではないか…
スカーレットは作品を選ばず、様々なジャンルの作品で自分らしさを表現することにいつも果敢に挑戦しているので、次回作が非常に楽しみです。
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