『ブルージャスミン』のあらすじと概要
ウッディ・アレン監督が初タッグとなるケイト・ブランシェットを主演に、セレブの生活から転落したヒロインが再起をかけて奮闘し、苦悩する姿を描いたコメディ・ドラマ。ニューヨークのちょっと怪しい実業家ハル(アレック・ボ-ルドウィン)と結婚し、セレブリティとして裕福な生活を送っていたジャスミン(ケイト・ブランシェット)は、ハルとの結婚生活が破綻したことで地位も資産も全て失ってしまう。
サンフランシスコで庶民的な生活を送る異母姉妹ジンジャー(サリー・ホーキンス)のもとに身を寄せたものの、ジンジャーはジャスミンが転落する以前に、宝くじに当たった20万ドルをハルの資金にされて、それがゼロになったのが原因で前夫オーギーと離婚するという後ろめたい経験がある。サンフランシスコでは、不慣れな仕事(歯科医院の受付)やパソコン教室に通う等の生活に神経を擦り減らせ、次第に精神的な不安定さが大きくなっていく。
それでも再び華やかな世界へと返り咲こうと躍起になるジャスミンだったが、通っていたパソコン教室の同級生にパーティに誘われ、外交官であるドワイトと出会い、関係も良い方向に発展するものの自らついた嘘が元で結局二人の関係は破綻してしまう。
本作品では第86回アカデミー賞でブランシェットは主演女優賞を見事に受賞している。
『ブルージャスミン』のスタッフとキャスト
監督・脚本:ウッディ・アレン 『ブルージャスミン』が生まれたきっかけは、ウディ・アレンが妻から聞いたある女性の身に起こった話だったといいます。長年にわたる裕福な生活から一転して、すべての資産を政府に没収され、店員として働き始めるも生活水準の激しい落差に苦労を強いられたという”人生の悲劇的な展開”にアレンは大変興味を持ったとのこと。
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出演:
ケイト・ブランシェット(ジャスミン):『アビエイター』(04)、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』(08)等数多くの名作に出演しています。本作品『ブルージャスミン』でも誰もが認める演技派の彼女の実力が発揮されていました。
サリー・ホーキンス(ジンジャー):代表作『シェイプ・オブ・ウォーター』。オスカー主演女優賞にノミネート。でオスカー、イーサン・ホークと共演した話題作『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』がある。本作品では姉ジャスミンと異母姉妹役ながら境遇の差が大きく、極めて庶民的な暮らしをしている。
アレック・ボールドウィン(ハル)
『ブルージャスミン』のネタバレ感想
ネタバレ有り
ジャスミン(ケイト・ブランシェット)と夫ハル(アレック・ボールドウィン)とのスーパーリッチ生活も絶頂期の中でも、何となく怪しい雰囲気がある仕事をしているなという、破綻の影をジャスミンは気が付いていました。また、ハルの浮気にも周囲の他人が気付くほどの彼のあからさまな行動にジャスミンは、少し気付いていても、目をつぶっていました。夫を24才の若い女性に奪われそうになると前後の見境も無く、狂乱の果に、夫の悪事を洗いさらいFBIに通報し、夫の事業・生命をも破滅させる行動に出てしまいます。夫にとっては身から出た錆なのですが…
恐らく100%愛されていると信頼していた夫の突然の裏切りに遭遇して、知性では制御出来ない、大きな怒りを感じたのだと思います。その因果は自分自身にも降り掛かり、多くの顧客への裏切り(出資した資金を返せない)に加え、自分自身の地位・名誉・財産もすべて失う事になってしまいました。
一般庶民として生活していた妹のジンジャーには親近感を感じます。元セレブの落ちぶれにもかかわらず、セレブ気分から中々抜け出せないジャスミンを皆は滑稽な存在と思っています。精神障害にも少し冒されていることや、PC教室に出掛けて習おうとしたり、歯科医の慣れない受付の仕事を必死にこなそうとします。中々上手く行かない姿や、歯科医からは猛烈なセクハラ行為を受けてしまうところなど、多くの観客からは同情を買うであろう場面に事欠きません。
しかしながら、せっかく再度浮かび上がろうとした最大のチャンス(国務省勤務でウイーン駐在大使になる予定の男と知り合う)を得たにも関わらず、自らの素性を嘘偽り話でカモフラージュして良い所ばかりを見せようとしてしまい、最期に嘘がバレてしまいます。結婚直前でこの話も破綻してしまいます。もっとも、最初から正直にすべてを包み隠さず話してしまうと、男にはドン引きされるので、多少の嘘は付かざるを得ない状況であることは十分理解はできますが…
非情に哀れで救いようの無い一人の女性を観客は応援するもの、ジャスミンのその態度、性格が改まらない限り、今の不幸からは永遠に脱出出来ないと誰もが考えます。また、庶民的で、ジャスミンとは全く別世界(ジャスミンからは軽蔑の目で見られている)で結構幸せを感じつつ生きているジンジャーの姿が好対照となって、否が応でもジャスミンの不幸感を一層際立たせていました。
全編にわたりケイト・ブランシェットの演技力(アカデミー賞主演女優賞を獲得)の凄さに、ただただ圧倒される映画作品となっています。また、共演のジンジャー役のサリー・ホーキンスの楽しそうな名演技も素晴らしいです。
頂点から大転落後の人生を、女ひとりでどうやって生き延びて行くのか、映画終了以降の後半人生の生き様についても、大変興味が引かれるところです…
最後に
とても面白い映画ですが、心の底から楽しめないストーリーである事は確かです。夢の様なゴージャスな生活から一転、転落人生に嵌ってしまい、もがけばもがくほど蟻地獄へという感じで将来の可能性が全く見えて来ない内に映画は終わってしまいました。すこし希望の光を残して欲しかったという思いもありますが、人生は結構残酷なものなんでしょう!
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