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おすすめ本|『社会保障と財政の危機』鈴木亘著(PHP新書)

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『社会保障と財政の危機』の概要

Daniela DimitrovaによるPixabayからの画像

著者は感染症の危機、経済の危機の次は、社会保障の危機であると指摘します。正にその通りで、現在も尚、感染症拡大の防止と経済活動のバランスを必死に取ろうとしている段階で、その後に迫りくる「社会保障」の維持確保に一般の人が冷静な目を向ける事は難しい状況だと思いますが、著者はしっかりと現実を見つめ、生活保護、医療、介護、年金の現状とその対策を、社会保障研究の第一人者として解説・提言されています。

さらに、消費税と社会保障費の切り離しを訴え、ベーシック・インカムの可能性についても検討しています。 

【本書内で指摘されている社会保障の大問題とその解決策の例】

●生活保護:「働くと負け」という歪な状態→求職者支援制度を活用すべき 

医療:都市と地方の病床数格差が広がる→開業医の報酬を減らせ、地方版の「中央社会保険医療協議会」を作れ 

介護:壮絶な人手不足(訪問介護ヘルパーの有効求人倍率は14.75倍)→保険と保険外の混合介護の導入(厚生労働省の縛りがかなり強い)、家族介護に現金給付(欧州では実施されている国々がある)

年金:将来純負担(現在の現役層および将来世代の「支払い損」の金額)1100兆円→マクロ経済スライド(年金カット)をフル稼働させよ (現状の年金制度は立ちいかなくなるとの懸念が大きい!)

財源:消費税と社会保障費を切り離せば、消費税減税が可能になり、社会保障改革も進む等々

大阪市・東京都の特別顧問を経験し、政策実務を熟知している研究者が、現実的な分析を行い、解決策として具体的な提案を行っているところが非常に新鮮で画期的だと感じています。

 

『社会保障と財政の危機』のトッピクスなど

FotoRiethによるPixabayからの画像

世代間不公平のコロナ禍

新型コロナウイルスによる死亡者数は圧倒的に70歳、80歳台の高齢者の方々が多く、50歳未満の死亡率は低く、基礎疾患を持っている場合を除き、例え感染したとしても大事に至る可能性は低い。経済活動を担う現役層のひとびとについては、通常の経済活動を行っても殆んど問題が無いレベルと指摘しています。緊急事態宣言で経済をストップさせたのは、現役層の為ではなく、高齢者の為であったと。しかし、その負担は現役層に重く伸し掛かってきています。

新型コロナ経済対策の基本戦略

「感染症対策と経済のトレードオフ構造を変える為の施策(感染症対策と経済の両立化策)」を進める事が、コロナショックに対する経済対策の基本戦略だと。

例としては、感染症対策で外出や移動ができなくても、IT化・デジタル化で労働生産性を高め、供給脳能力を保つ、また、家の中からでも消費や投資が自由に出来るようにし、既にある需要を顕在化させる… 但し、このような施策は一部では既に進められていますが、大胆に構造変化をさせるにはまだまだ意識改革、施策立案・実施に時間が掛かりそうです。

(バラマキをやめ、賢い財政支出を)

政府は既に1990年のバブル以降、莫大な財政赤字を毎年発生させており、累積がはGDPの2倍の約1119兆円(2019年度末)に達しています。この借金まみれの状況で、効果の薄いバラマキ政策を行う余裕は無いと著者は指摘しています。有効需要になる割合が高い対策項目を優先するべきと。

(ITインフラへの公共投資の必要性

実は、純粋な景気対策としてみれば、給付金よりも公共事業投資の方が効果が大きいと。なぜならば、給付金は貯蓄に回る部分が大きいのに対して、公共投資であればほぼ全額が支出される。これは、コロナ禍の中でも生産性の維持・向上の為に、IT化やデジタル化への推進は不可欠であると。それを支える5G網や無料Wi-Fiの整備の為に、大量の基地局を設置する必要があるのではないかと。

(拡充された休業補償

コロナ禍以降、休業者増が失業者を急増させないダムとして機能した理由は、「雇用調整助成金」の存在が大きい。これは、企業が従業員に6割以上の休業手当を支払う事を条件に、その原資となる助成金を、雇用保険から企業に支払う制度。受給上限金額も8330円から1万5000円に増額されている。対象も雇用保険加入者だけではなく、短期間労働者や学生アルバイトにまで拡大されているそうです。 この特別措置には、当然実施期限があったが、現在は12月末まで延長されています。

但し、休業者と失業者はどちらも仕事をしていない状態で大差はありません。これは政府・与党にとって、失業者が増えるとマスコミやか国民から大批判を受けるのでその回避策ではないかと。

本来であれば、長期的需要減に直面する企業や産業は、業務縮小や廃業、倒産などの決定を行い、アフターコロナの世界を見据えて、別の業態への転換など早急な経営判断を行うべきですが、休業に対する特例措置・延命策により公費頼りは、経営判断の単なる先送りに過ぎないと厳しく指弾しています。

これは休業する労働者にとっても時間の無駄であると。コロナ禍の中でも、雇用を増やしている産業もあり、これら成長産業への転職のチャンスを逸してしまうのではないかと。

 

...

 

『社会保障と財政の危機』の世間の一般的な意見はどんなものがあるのか?

Steve AdcockによるPixabayからの画像

出版されて日も浅く、まだレビューなどはありません。

最後に

Neil DodhiaによるPixabayからの画像

最後の章で、著者は年金問題について論じています。一見、今回のコロナ禍と年金はあまり関係なさそうと思われていますが、実態の深刻さは他の分野と同じかそれ以上と指摘しています。コロナショックで労働者数と賃金の両方が減少すれば、年金の保険収入はその相乗効果で減少し、経済がデフレ基調にあれば、年金カットも実現が不可能になり、年金財政の維持は難しくなるとの説明があります。

我々は年齢的にも、とても気になる問題ですが、実際問題として『年金100年安心』という言葉が如何に空虚なものかというのが分かってきました。

コロナショックを良いタイミングとして思い切った決断に踏み切るべき千載一遇のタイミングではないかと言いますが、年金問題については、政府・行政にそれだけの知恵とやる気があるのかという事だと思います。

本書は、現在進行中のコロナ禍対応の中、世の中でどのような問題が起きているか、その解決は如何すべきかというう具体的な提案が指摘されています。

大変参考になる本書を一読されることを強くお勧めします。

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