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おすすめの小説『震える牛』(相場英雄著・小学館文庫)感想‣BSE問題、食品偽装問題を扱った社会派サスペンスの傑作!

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『震える牛』の概要・あらすじ

警視庁捜査一課継続捜査班に勤務する田川信一は、発生から二年が経ち未解決のままとなっている「中野駅前 居酒屋強盗殺人事件」の捜査を命じられます。初動捜査では、その手口から犯人を「金目当ての不良外国人」に絞り込まれていました。 田川は事件現場周辺の目撃証言を徹底的に洗い直し、犯人が逃走する際ベンツに乗車したことを掴みます。ベンツに乗れるような人間が、金欲しさにチェーンの居酒屋を襲うだろうか?居酒屋で偶然同時に殺害されたかに見える二人の被害者、仙台在住の獣医師と東京・大久保在住の産廃業者のふたり。食品偽装問題を追う女性記者や、食品偽装を隠蔽しようとする企業と警察組織の攻防などが超リアルに描かれて行きます。

さらに田川は二人の繋がりを探るうち大手ショッピングセンターの地方進出、それに伴う地元商店街の苦境など、日本の社会構造変化と食の安全が事件に大きく関連していることに気付ていきます。

2013年6月には、WOWOWの連続ドラマW枠でテレビドラマ化され放映されています。

相場英雄氏の他著書の感想記事➢

新刊書おすすめ『覇王の轍』(相場英雄著・小学館)感想‣鉄路の下に巨悪は眠る!新幹線恐ろしや。

『震える牛』の感想(ネタバレ無し)

大手ショッピングセンターの地方進出、地元商店街の苦境、食品偽装問題など赤裸々な諸問題をテーマとし、殺人事件の捜査・解決へと向かう「推理小説」をかなりリアルな綿密な捜査の様子に引き込まれていきました。

大企業の御曹司という立場を利用しあらゆる手段を講じ、その地位の守りは鉄壁と思われていました。しかしながら、田川刑事の執念の地道な捜査の目から逃れる事は出来ません。犯行の証拠で、外堀を完全に埋められてしまいます。もはや最大の問題点はラストに明かされますが、警察上層部と政府高官との結託が明らかになります。事件の真相とはまったく違う方向、強引な恐ろしい手口で”問題解決”されてしまうところは、さすがに「長い物には巻かれろ」ということに、全く納得がいかない読者が多い(いやほとんど)ではないかと思います。

『マジックブレンダー』とかいう恐ろしい機械の存在も明らかになっていました。「味なんかどうでもよい、安価であれば消費者は買う」という言葉はとても印象に残りました。添加物、どこの部位の肉だか分からない肉を混ぜて作られたハンバーグ等が出回っているという文章には吐き気を覚えました。安心して生活する為には、しっかり自分の身は守る知識を身に着けておく必要がありそうです…

大型SC進出による、地元商店街の衰退はもう元には戻らないと思います。ほんのわずかな期間でしたが、私自身SC開発業務の片棒を担っていた経験があります。利益追求が目的の組織の中にいる人間にとっては、『井の中の蛙』です。そこでは、地元住民の利便性の向上をスローガンに、全国チェーンのテナントをかき集めていました。

大規模商業施設、家電量販店、ファミレスなどの進出も地方都市の姿を一変させてしまい、どこへ行っても「幹線道路沿の同じ光景」に日本情緒は消えてしまいました。しかし、地元商店を蹴散らかしやっとの想いで進出した大手スーパーも薄利多売に徹しており、昨今経営状況は悪化して、最悪撤退せざるを得ないというから驚きです。

この小説を読む限り、地方活性化という言葉はまったくの掛け声だけで、益々住み難くなる地方都市は放置されていく事が危惧されます…

『震える牛』の世間一般的な意見はどんなものがあるのか?

「読書メーター」で一般公開されている感想を何件か引用させて頂きます。

事件がフィクションなのは分かってるけど、世相が反映されているのでリアリティが増す。国道沿いのチェーン店やどこでも見かける大型ショッピングモール。どこも同じような街になってしまったという描写は、心当たりがありすぎる。加工食品については、参考文献に既読のものがあったのであまり衝撃的ということはなかったけど、それだけでは終わらず権力も混ざり合って複雑な事件になっていくのがおもしろかった

巨大な駐車場を備えた大規模ショッピングモール。こんな店(施設?)が物珍しくなくなって久しい。確かに便利だけれど、それはいわゆる「足」を持っている人たちの話で、こういったお店が街の商店街をつぶし「買い物難民」を生み出しているという事実。不況の煽りから「安さ」だけに目を向ける消費者(もちろん私もそのひとり)。とにかくコレは衝撃的!今後は安売りの出来合いハンバーグやソーセージを買うのをためらってしまいそう。主人公・田川刑事の地道で堅実な姿勢は見習いたいところ。しかしどれだけ田川刑事が真摯に事件に向き合っても…

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