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おすすめの歴史小説 「全一冊 小説 平将門」 (童門冬二著・集英社文庫)感想‣命をかけて民衆たちを守った英雄ストーリー

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「全一冊 小説 平将門」の感想

以前実家のあった埼玉県鴻巣市には源経基の館跡(伝)という遺跡があります。中学生時代に自転車に乗り出掛けて行った場所に立て看板には、微かな記憶では経基が平将門を攻めに行っている留守を将門の襲撃を受けたと記載されていた様な…そんな遺恨もあり遺跡をあまり調査されず放置されていたと聞きました。

武蔵の国まで平将門が攻め込んで来た経緯でも本著のストーリーの中で展開されるものと期待しましたが、残念ながらその記載はされていませんでした。また、源経基(頼朝の祖先)は京都から派遣されていた武蔵介(副知事?)で、将門の乱暴狼藉な振る舞いを京にホウホウの体で逃げ帰り報告した人物として描かれていました。将門討伐に大した功労があった訳ではありませんが、報告が精確であったことを高く評価され昇進しています。

平将門という名前は良く知っていましたが、説明してみろと聞かれたほとんど回答出来ない人物でした。NHK大河ドラマでも主人公として一度取り上げられたそうですが、生憎見ていません。

本作を呼んで初めて大まかな人物像を理解する事が出来ました。ここでは、「怨霊」になるような強烈な怨念話は封印されています。京都で晒された将門の首が関東まで飛んで帰るという話はありません。

関東での理想国家建設を夢見て、挙句に第二の天皇である「新皇」と称してしまったのが、やはり京都の朝廷の逆鱗に触れてしまったのではないかと思います。怪しい呪術者のお告げを信じて自らを新皇と称することに、何の躊躇いもなかったのでしょうか? 一方、一般民衆の苦しみを直視せず、自分達の私利私欲を満たす為、躍起になっている国守や役人の姿が描かれています。そんな中央から派遣されてきた無能な役人など一掃してしまえという、将門の気持ちもわからないでもありません。

やはり、一地方対中央では力不足、また思想的にも1000年も早過ぎた”平民中心の世界”の実現は平安時代の徒花となってしまい寂しい気がします…

「全一冊 小説 平将門」の概要とあらまし

栄華を誇る摂政関白・藤原忠平に仕えていた平将門は、猟官に明け暮れる生活に嫌気がさし、美しい湖水に囲まれた故郷の東国へ帰って行きます。だが、そこには父祖の地を奪おうとする親族たちが待っていました。彼らを相手に苛烈な戦いを展開する将門を支えたものは、中央から独立し、理想の王国を築こうとする燃えるような熱情ででした。夢を追い求め、純粋に突き進む風雲児の悲劇の生涯を描く長編歴史小説。(「BOOK」データベースより)

著者:童門冬二(どうもん・ふゆじ)

作家、本名・太田久行。1927年、東京に生まれ。

目黒区役所係員を振り出しに、都立大学事務長、都広報室課長、広報室長、企画調整局長、政策室長を歴任。1979年退職。

在職中に累積した人間管理と組織の実学を歴史の中に再確認し、小説、ノンフィクションの分野に新境地を拓いています。

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「全一冊 小説 平将門」の世間一般的な意見はどんなものがあるのか?

「読書メーター」などで一般公開されている読書感想を、2,3ピックアップさせて頂きます。総じて好意的な意見が多いです。

彼が信じる国づくりのビジョンが先進的かつ壮大すぎて周囲に理解されなかった上に朝廷から敵扱いされて最後は非業の死を遂げた平将門。今の時代に生きていたら地方創生の英雄として称えられるだろうに。童門先生の歴史上の人物の人間味を引き出す描き方が好きです。

新感線の「蒼の乱」観劇前に将門の生き様を一度体に通してみたくて手に取る。首塚や神田大明神には行ったことはあるが、やはりイメージ先行の平将門という人間の一端にやっと手が触れたという感じ。こんな純粋な東国武者がどうして日本最大の怨霊として扱われるに至ったのか…時の太政大臣藤原忠平に宛てた決別の辞に胸が熱くなりました

何時の世も世の中は一部の者が制圧した世であったのが良く分かりました。又後世で伝えられることが真実では無いと思い知らされた本でした。目からうろこが落ちた感じです。

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