本書が書店に並んでいるのを見た時、次のような言葉が目に飛び込んできました。『年金は絶対に破綻しない』『再雇用で働くのはおやめなさい』『地域コミュニティは伏魔殿』『夫婦で旅行など行かなくてもいい!』『趣味がなくても一向に平気』…多くのいわゆる『定年本』とは180度異なる文字が躍っており、びっくり仰天しました。わたし定年を過ぎ早くも3年を経過しますが、かなり同感出来る部門もあり、且つ、大胆に世間一般の定年に対する心構えと真向から反対する本書に大変興味を引かれ早速購入して読んでみました。
『定年前、しなくていい5つのこと』の概略
世の中の「定年準備」のアドバイスの多くは、不安を煽るタイプのものや、「べき」「ねばならぬ」論がほとんどである。そうしたものを見聞きしていると、定年を迎えることに対して憂鬱で心配な気持ちになってしまう。だが、実際に経験してみると、定年後の生活は、お金にしても仕事にしても、それほど心配する必要はなく、「楽園」とすら思えることがよくわかる。むしろ不安に煽られて間違った行動を起こすほうがよほど危険である。本書では、経済コラムニストであり退職後8年を経過した著者が、自身の体験と豊富な取材・知識に基づいて、老後の不安解消のための考え方と、「不安に駆られてやらないほうがいいこと」を具体的に指南する。
アマゾン書評「BOOK」データベースより引用させて頂きました。
同感する部分も大変多いのですが、諸手を挙げて全部賛成というところまではいかないような気もしました。
なお、著者大江英樹氏の経歴は
大手証券会社で個人資産運用業務や企業年金制度のコンサルティングなど
に従事。定年まで勤務し、2012年に独立後は、「サラリーマンが退職後、
幸せな生活を送れるように支援する」という理念のもと、資産運用や
ライフプラニング、行動経済学に関する講演・研修・執筆活動を行っている。
という事です。元証券マンでありながら、定年後に必要なのは「保険」や「投資信託」の類ではなく、「現金」と言い切っているところが凄いなという気がします。
最近読んだ本の感想投稿記事はこちら:
読書感想|『脳を鍛えるには運動しかない!』(ジョンJ.レイティ著)NHK出版
新刊書紹介|『私たちはどこから来て、どこへ行くのか』生粋の文系が模索するサイエンスの最先端 森達也著(ちくま文庫)
新刊書紹介|「サガレン 樺太/サハリン 境界を旅する」梯久美子著(KADOKAWA)
『定年前、しなくていい5つのこと』のトピックス・感想等
1.年金は絶対に破綻しない 年金の本質は「保険」であって「貯蓄」ではない。貯蓄は「将来の楽しみに備えて自分でたくわえるもの」という事に対して、保険は「将来の不幸に備えてみんなで備えるもの」と説明しています。年金のもっと大きな保険機能は将来の「所得保障」の役割だと言います。更に、年金の支給は終身で死ぬまで支給されます。
その時代の現役世代のひとが、『年金保険料」という形でお金を出して一定以上の年齢の人を養うようにする、そして年金保険料を払い続けてきた人には、年を取った時に年金をもらう権利がある、という仕組み「賦課方式」だと。この方法では、現役世代がひとりもいなくならない限り、年金が消滅することはあり得ないと。
退職金で投資デビューをしてはならない、年金っぽい金融商品を買ってはならない、特に分配型投信が資産を増やすのに向いていないなど多少耳の痛い内容の説明が続きます。先ほども言いましたが、著者は元証券マンにも拘らず、定年退職後の投資についてはやや否定的な捉え方をされていますが、大変参考になる内容ではないかと思います。
2.サラリーマン脳は捨てよう! この意見には120%賛成です。サラリーマン人生は苦行の連続だと喝破されています。独立して自営になると仕事が本当に楽しみになってくることが良く分かる。そして仕事が楽しいと思える最大の理由は、好きなことをやっているからだけではなく、自分に決定権があるからだと。不安も不満も無い定年後の働き方はサラリーマン的に生きる生き方を変えようというものです。わたし自身現在「個人事業主」として開業していますが、コロナ感染の影響もあり、余り芳しい業績を上げる事は出来ていませんが、それでも著者の意見に従った方が良いという気持ちだいっぱいです。
3.夫婦で共通の趣味なんて無くていい・旅行なんてい行かなくていい! こればかりは少し反対します。わたしはかみさんと「温泉」という趣味が一緒なので毎月2泊3日程度の小旅行を楽しんでいます。これは、とても生活のベースになっているので、夫婦のストレス発散にはもってこいの趣味ではないかと感じています。ツアーバスに良くおひとりの参加者を見掛ける事が有りますが、元々単身なのか、どちらか一方が温泉嫌いの方なのか分かりませんが(詮索されることは大きなお世話だと思いますが)温泉旅行という共通の趣味を持つことは大きなプラスではなかろうかと思いました。
4.定年後に趣味がなくても一向に平気! これもちょっと何とも言い難いですね。わたし自身が趣味人で、少なくとも10近い趣味を同時並行的に実戦しています。もし、趣味がなかったらTVをみるしかない定年後というのも寂しい気がします。著者は「勉強」を進めていますが、これも趣味の一部に違いありません。
『定年前、しなくていい5つのこと』の世間一般的な意見はどんなものがあるのか?
多分定年間近の方々の読者が多いのではないかと想像されますが、肯定的な意見が多い様です。(アマゾン書評より)
ステレオタイプの「べき論」を聴いていると、定年後のことを考えると気が重くなります。
しかし本書は、そうした「常識」に囚われることなく、気楽に定年後の事を考える事を教えてくれます。文章は大変わかりやすく読みやすいので、忙しい現役世代の人にもオススメです。
「これは違うんじゃないかな」と感じる箇所がなかった。退職プランセミナーや資産運用セミナーに通う必要もなく、町内会デビューする必要もなく、趣味に没頭する必要もなく、人それぞれということを学んだ。安心感が得られた。
最後に
さらに、最終章でのご発言が大変振るっています。『今までたいした仕事はしてこなかった』確かに自分では凄い仕事をやって来たつもりですが、世間全般から見れば「たいしたことでもない」のかも知れません。一刻も早く過去の栄光(もしあれば)を拭い去るのも清々していいかもしれません。
『家でゴロゴロしていて何が悪い!』この言葉も珠玉の名言ですね。世に蔓延る「家にゴロゴロ」というのは何となく後ろめたい気にさせる言葉ですが、これも真向から異を唱えています。人生の達人ではないかと思いました。師と呼ばせて頂き度い!
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