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新刊書紹介|「沖縄から貧困がなくならない本当の理由」樋口耕太郎著(光文社新書)

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「沖縄から貧困がなくならない本当の理由」の概要

沖縄には、謎が多い。圧倒的な好景気が続く中、なぜ、突出した貧困社会なのか。「沖縄の人は優しい」と皆が口をそろえる中、なぜ、自殺率やいじめ、教員の鬱の問題は他の地域を圧倒しているのか。誰もなしえなかったアプローチで、沖縄社会の真実に迫る。「沖縄問題」を突き詰めることは日本の問題を突き詰めることであり、それは、私たち自身の問題を突き詰めることだ――。「コロナ後の世界」のありかたをも問う、鮮烈の問題作。(本書より)

(著者 樋口/耕太郎氏略歴)
1965年生まれ、岩手県盛岡市出身。’89年、筑波大学比較文化学類卒業、野村證券入社。’93年、米国野村證券。’97年、ニューヨーク大学経営学修士課程修了。2001年、不動産トレーディング会社レーサムリサーチへ移籍し金融事業を統括。’04年、沖縄のサンマリーナホテルを取得し、愛を経営理念とする独特の手法で再生。’06年、事業再生を専業とするトリニティ設立、代表取締役社長(現任)。’12年、沖縄大学人文学部国際コミュニケーション学科准教授(現任)。内閣府・沖縄県主催「金融人財育成講座」講師。沖縄経済同友会常任幹事。本書が初の著書。(本書より)

「沖縄から貧困がなくならない本当の理由」のポイントと感想

本書内に記載された内容は初めて聞く事が大変多く、今までの沖縄とかなり相違している事に自分自身でも正直驚きました。「なんくるないさぁ〜」あくせくしない、のんびりした沖縄人の生き方を象徴する言葉で良い意味と感じていたが、全くやる気を失った沖縄人の処世訓と聞いて「なんくるないさぁ」も人生を諦めている様な響きにも聞こえ、まるで真逆の意味を持っている様に感じられてきました。

出張で、また、家族旅行で何度も訪問している沖縄本島、石垣島などですが、「旅行客」には全く見えない沖縄が存在している事に目を見開かされました。

本編内容すべてが驚きの塊です。いくつか内容を紹介してみましょう。知らなかったのは私ばかりで、これらがもし周知の事実であれば、わたしの認識不足をお許しください。但し、今年出版された本書ですが、現地沖縄でも””沖縄最大のジュンク堂書店那覇店では6週間連続総合ランキング1位(7月末現在)”という大反響を呼んでいるので、かなりショッキングな内容には違いありません。勿論内容に関しては賛否両論あろうと思われますが、、、

酒税の減免措置 当初5年間の限定政策であったが、1972年以来48年間継続されている。代表的な酒造メーカーオリオンビールは本土復帰以来700億円の酒税を減免されているという。よって、酒造業の経営革新はなされず、経営者の第一の目標は優遇措置の更新に注力することだと。

また、この軽減税制のほとんどを享受するのは、零細企業とは程遠い一握りの超優良会社だという。その利益は会社の中のごく一部の創業者一族に対して、多ければ数十億円単位の報酬として支払われると。

一方、沖縄県の貧困問題は突出しています。

3割に達する子供の貧困率(全国第一位)、給食費未納率(同左)、ひとりあたり県民所得(同左)、非正規雇用率43.1%(同左)、失業率(同左)、離職率(同左)、離婚率(同左)、シングルマザー出現率(同左)… 沖縄における貧困の直接の原因は所得の圧倒的な低さである説明されています。

本書では貧困問題で重要なのは対症療法による解決ではなく、問題の本質の根本原因を見つけそこを抜本的に見直して、修正していかなければならないと主張しています。

そこで、沖縄の抱える根本原因の数々が上げられていますが、それも本州側の人間にとっては初耳の事ばかりで、当に耳を疑いたくなるものばかりでした。

著者の結びのう言葉は「他人の関心がある事に関心を持とう」という単純なものですが、非常に重要なことだと思います。

そらに著者の、これは沖縄の現実のみならず、沖縄は日本の縮図ではないかという主張にさらに衝撃を受けました。決して否定は出来ないと感じました。なぜならば、バブル崩壊以降欧米各国が順調な立ち上がりを見せている30年間、日本は生活は便利になったというもののほとんど経済成長が止まってしまいました。日本の現状を見る限り、やはり、その根本原因の解決策を単に対症療法に留まらず、長期的な抜本的な対策が急務だと考えるからです。日本の現状を客観的に認識し、対症療法に留まらず、もっと問題を深く掘り下げ抜本的な解決策、本当の『成長戦略』を官民一体となり、考えなければならないと思います。

「沖縄から貧困がなくならない本当の理由」に対する世間の一般的な意見はどういうものがあるか?

アマゾン カスタマーレビューより一部引用させて頂きました。

沖縄の経済は、国からの効率補助(税金)によって成り立っている。
豊富なデータでもって著者・樋口耕太郎氏は、沖縄の問題をあぶりだしていく。

ページをめくる読者が、もし沖縄県民(沖縄県民)であれば、ウチアタイ(心にグサグサと刺さる)する内容だろう。オリオンビールの買収(県外、海外資本による)や、小売業のサンエーが県外進出が出来ていない(過去に進出したが現在は撤退)ことに言及する本書でのくだりは、関係者には耳に痛いであろう。

本書の前半部分で、沖縄企業や沖縄の人々を一方的に批判してるようにも、感じる読者もいるかもしれない。しかし、これは著者の沖縄への愛情であり、沖縄によって著者自身が癒やされ人生を再出発させた体験から来るモノであろう(沖縄でのホテル支配人としての体験、沖縄の大学で教授しての経験が本書で語られる)。

この愛情が、コロナ後に必要とされる「人間の経済」を実現する原動力なのだろう。

沖縄の貧困の原因を考察している本。
本書の重要な指摘は、「根本的な問題は、沖縄の人々の心の持ち方にある」という点だろう。
沖縄の人々には、「目立つ行動をする人物を嫌う」「現状維持を好む」などの傾向があり、その結果、「個性的な人や有能な人材をつぶす」「イノベーションを起こそうとしない」といった問題が起きているそうである。私は読みながら「日本人の精神性の悪いところを煮詰めたもの = 沖縄マインド」という印象をもった(本書の終盤に、著者もそう考えていることが明かされる)。

「世界の中の日本」と「日本の中の沖縄」が類似の関係にあるとすれば、日本人が本書から学ぶべきことは少なくないはずだ。著者は、問題解決のカギは、健全な自己愛の獲得にあると考えている。たしかにそれは重要な指摘だろう。しかし私はむしろ、問題の本質は「人間関係が流動的か、閉鎖的か」という点にあるのではないかと思った。人の出入りがない組織内では、「悪い評判」はいつまでも消えずに残る。そのため流動性の低い日本的な組織では、学校でも職場でも、いじめがなくならない。そのような閉鎖的な環境で生きのびるための最適戦略は、必然的に「リスクをとらず、人と違うことは一切しないこと」となる。沖縄は、本土よりも閉鎖的なため、この問題がいっそう顕在化しやすいのではないか…

最後に

美しい海に囲まれた自然の残る沖縄を羨望の目で眺めていましたが、近寄って見てみると決して居心地の良い空間ではないというのが良く分かりました。一部、沖縄移住などを考え、スキューバダイビング三昧、常夏の島国での安穏とした老後生活を夢と考えている人もいるのではないかと思いますが、本書の内容が実体とすれば、沖縄に住むのはなんとなく息苦しさ感じてしまいそうです。しかし、沖縄は日本の『縮図』と言われて、他人事ではなくなりました。警告の書として本書を一読される事を是非おすすめします。

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