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おすすめ本|『サガレン 樺太/サハリン 境界を旅する』梯久美子著(KADOKAWA)

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「サガレン 樺太/サハリン 境界を旅する」のあらすじと概要

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樺太/サハリン、旧名サガレン。何度も国境線が引き直された境界の島だ。大日本帝国時代には、陸の“国境線”を観に、北原白秋や林芙美子らも訪れた。また、宮沢賢治は妹トシが死んだ翌年にサガレンを訪れ、名詩を残している。他にもチェーホフなど、この地を旅した者は多い。いったい何が彼らを惹きつけたのか?多くの日本人に忘れられた島。その記憶は、鉄路が刻んでいた。賢治の行程をたどりつつ、近現代史の縮図をゆく。文学、歴史、鉄道、そして作家の業。すべてを盛り込んだ新たな紀行作品!! (アマゾン{BOOK}より引用)

サハリンへの紀行文を林芙美子、宮沢賢治らの足跡を追うように旅し、叙述している内容になっています。同じ足跡を辿り、遥か昔の先人たちの気持ちに触れる試みは見事に読者に伝わって来るような印象を受けました。

まず、サハリンについては冒頭の引用文にあるように多くの日本人には忘却されてしまった元国土ではないでしょうか? わたしも著者梯氏と同じく学生時代の4年間を札幌の地で過ごしています。間借りしていた下宿のおじさんもおばさんも樺太からの引き上げ者でした。樺太から引き揚げて来た人は北海道にはたくさん住んでいたのだろうと思います。サハリンと聞くと、もはや外国という意識の方が強く、日本人と結び付けられるもんは何もないのではないかと考えていましたが、本書では鉄道が未だに一部は使用されているという事実にびっくり仰天しました。

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「サガレン 樺太/サハリン 境界を旅する」の感想

サハリンについては今まで全く無知だった自分自身が情けなくなってしまった。日本の領土は北海道礼文島、利尻島までという概念が邪魔をして、「サハリン」はまったく目に入らなかった。一方、北方領土返還については、ほとんどの日本人は理解している人が多いのではないでしょうか。国後、択捉、歯舞諸島という地名はいう事は出来ます。しかしながら、本書で挙げられたカラフトにある駅名などは殆んどの日本人はもはや一生聞くこともないのではないでしょうか?

わたし自身、北海道に憧れて、北海道大学に進学した理由も一部はあるのですが、何故かもっと北方の「カラフト」への妙味はまったく抱きませんでした。学生時代に利尻富士に登って、山頂からカラフトの一部がい見えたと記憶していますが、行ってみたいという感情は不思議な事に余り沸き起こりませんでした。

宮沢賢治が岩手県花巻からサハリンまで学校の教え子をサハリンの製紙工場(王子製紙)に就職することをお願いする為、訪れていたという事実は驚くべき事です。また、宮沢賢治が「銀河鉄道の夜』の着想を得たのもサハリンだということですが、これも初耳でした。賢治の作品には結構横文字の人名などが出てくるので、サハリンへの旅路で遭遇した人々や知り得た物語から着想を得た事が想像されます。賢治の物凄い吸収力で見るもの、聞くものを取り入れて行った違いありません。

確かにこのよう先人の足跡を辿る旅も非常に興味深い事が良く分かりました。嘗て、芥川龍之介もカラフトではなく、中国訪問の紀行文を書いていました。戦前の湖南省の長沙(最近わたしが駐在していた都市)を訪問して叙述している部分がありましたが、やはり、現在の中国は都市の変貌が著しく、戦前の面影は跡形もなく消えてなくなってしまっていると思えますが、もう少し丹念に龍之介の足跡を辿れば、何か名残を発見できたかもしれません。そういう試みも少ししてみたくなりました。

「サガレン 樺太/サハリン 境界を旅する」に対する世間一般的な意見にはどんなものがあるのか?

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「読書メーター」書評等をいくつか引用させて頂きます。総じて、良い印象を持たれている読者が圧倒的多数を占めている様です。

熱源で興味を引かれたサハリン関係の本を、ということで読んでみた。 著者が2017年11月と2018年9月にサハリンを訪問した紀行文で、1980年に訪れたチェーホフ、1923年に訪れた宮沢賢治、1934年に訪れた林芙美子の足跡を辿る形となっている。 特に興味を引かれたのは宮沢賢治の足跡を辿った2018年9月の旅のパート。銀河鉄道の夜のモチーフとなった土地を実際に訪れて、当時のどのように銀河鉄道の夜を着想していったかの考察は説得力があり、当時の賢治の心情を理解できたのが大きな収穫だった。

ノンフィクション大賞ノミネート作品ということで読んでみた。宮沢賢治はもはやライフワークの自分にとっては読んで良かった一冊だったが、大賞をとるにはなかな厳しそう。林芙美子についてももう少しページを割いてほしかった。 トシを失った賢治の心象が旅の時系列で解説してあり興味深かった。チェーホフも読んでみたくなったし、『銀河鉄道の夜』の第二次稿までを再読したくなった。

1854年日露和親条約(下田条約)が結ばれた頃は日本人は南部を漁場としていてロシアとの間でサハリンの帰属は決められていなかった。その後、樺太千島交換条約でサハリンをロシアが、千島を日本が領有すると定められ、1905年の日露戦争後のポーツマス条約で日本は島の南半分を得、ロシアとは陸続きで国境を接し、樺太として日本の施政下に置かれ1951年のサンフランシスコ講和条約で樺太・千島の領有権を放棄した。複雑な歴史をたどるこの地は、多くの文人たちを引き寄せたようだ。林芙美子の「樺太への旅」を読みたくなった。

最後に

ネットで調べてみたら稚内からコルサコフ(大泊)まで行ってるフェリー便がやはりあるそうです。4時間くらいで到着するそうです。以前の青函連絡船の3時間50分なのでほとんど同じ距離なのでしょうか? 来年の夏はコロナ感染問題が無事解決していれば、サハリン渡航計画を真面目に考えたいと思いました。

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