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新刊書紹介|『リープフロッグ』逆転勝ちの経済学 野口悠紀雄著(文春新書)

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『リープフロッグ』の概略

PexelsによるPixabayからの画像

「リープフロッグ」という言葉は今回初めて見て、初めて聞きました。本書裏表紙に書かれていた「中国が急成長出来たのは固定電話が少なかったから」という言葉は、以前にも良く聞いたことがあり、そうなのかなぁという思いはありました。

しかしながら、次の「欧州最貧国だったアイルランドがイギリスも日本も抜いた」という事実は勉強不足で全く知りませんでした。本書を読み進めると事実であることが分かります。人口500万人に満たない小国でありながら、いつの間にか一人当たりGDPは日本の約2倍7万8千ドルまで飛び上がっているそうです。

日本の30年間という経済の停滞という歴史もありますが、アイルランドにも負けるという理由は何か非常に気になり本書を手に取りました。

アマゾンの本書紹介の欄には以下の概略説明がありました。最近の話として、中国やアイルランドの発展の経過を説明しています。また、世界史の発展の歴史では中国、オランダ、スペイン、ポルトガル、イギリス、ドイツ、アメリカという順番でリープフロッグにより次々と世界史の表舞台の主役が交代していく様子が描かれて行きます。明解に解説されており、非常に分かり易い歴史の大きな流れを掴むことが出来ます。

本書の趣旨とは少し離れる理解かも知れませんが、歴史は一人、二人の英雄の活躍により変化するものではなく、大きな潮流があり、それに沿った国が発展していく様子が分かりました。

下記の叙述などは非常に分かり易い歴史の説明ですんなりと納得できる内容でした。

中国でアリババをはじめとするテック企業が発展したのは、銀行や固定電話といった既存ネットワークが未発達だったため、eコマースとスマホを利用した新しいビジネスモデルが成長する余地があったからだ。そして、世界の覇権争いの歴史を振り返ると、リープフロッグ=逆転勝ちの連続だったといえる。 紙、印刷術、羅針盤を発明して最先端の文明を誇った中国だったが、大航海で世界にうって出たヨーロッパに追い抜かれた。ヨーロッパは「株式会社」というリスク分散方法を開発して発展した。産業革命を果たして覇権を握ったイギリスだったが、電気の時代に立ち遅れ、ドイツとアメリカに追い越された。インターネットの時代と「改革開放」がかみ合って、21世紀に中国が覇権を握ろうとしている。

「リープフロッグの歴史に学ぶ」ことで、日本経済復活の道を探る一冊!ということですが、日本再生の為のリープフロッグ策と言うのは本当に出てくるのでしょうか? 

是非、みなさんで考えてみたいと思います。

中国関連書籍最近の投稿記事:

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『リープフロッグ』のトピックス・感想等

Bernardo FerreriaによるPixabayからの画像

新しい国が勃興しては、やがて衰退していく歴史は嘗て学校の歴史の授業で学びましたが、「リープフロッグ」の様な視点での解説は初めて聞きます。余り信憑性はありませんが、歴史の興亡は東から西に推移していくと、今から思うとかなり乱暴な私見を述べた社会科の先生がいらっしゃいました。現在はアメリカが頂点に立っているけれど、順番としては太平洋を渡って日本か中国だと説明してくれたのをよく覚えています。地球の自転と同じですが、根拠らしい根拠は何もありません。

中国が最近の急速な経済成長で、あっという間に日本を追い抜き、アメリカと拮抗するまでに成長した原動力を、リープフロッグだけで説明することに真向反対を唱えるつもりはありませんが、それですべてが説明されるとは思えません。

80年代、90年代に掛けて重くのし掛かっていた不採算の重厚長大国有化企業問題は、現在の経済発展を思えばそれ程経済発展の決定的な足枷にはならず、勿論跡形も無く消え去っている所もありますが、したたかに上手く再生し生き残っている所も多いのではないでしょうか? (自動車産業では、特に以前の三大三小と言われたカーメーカーの流れが生き残り、大きな勢力となってます)

やはり、中国の大きな人口の”購買力”こそ起爆剤になっている事を実感しています。テレビ、エアコンなどの家電製品から始まり、自動車、マンション、ブランド品等に対する購買意欲は確かに凄まじい事を目の当たりにしています。

その力を補うものとして、高速鉄道、高速鉄道、国内航空路線に加えて、通信網(スマートフォン)、通信により決済手段の整備、eコマースの発展などは絶大な支えになったことは確実です。

『リープフロッグ』の世間一般的な意見はどんなものがあるのか?

Carlos PaesによるPixabayからの画像

殆んどの意見が好意的なものが多く。分かり易いとの感想です。

直近の代表的な事例として中国を大きく取り上げています。リープフロッグの特徴は、遅れていたことが有利に作用したこと、と著者は言います。ビルは更地に建てる方が簡単という比喩を用いている通り、変に技術が成熟していると既得権益者が抵抗するでしょうが、中国の場合は国家が主導したという特殊事情もあったとしています。

しかし、実は中国も過去にはリープフロッグされた側でした。最近、中国史や株式会社の歴史の本をよく読んでいますが、長らく世界最先端の国だった中国がなぜ近代に入って衰退し西欧列強の餌食になったのか、その疑問に明確には答えてくれてはいませんでした。本書ではその理由を、中華思想が世界情勢の変化に鈍感にさせたことや、中国は大帝国で官僚機構によって運営される国だったためリスクへの挑戦がなかったこと、などとクリアに答えてくれています…

我々は民主主義の価値観を共有する自由主義国家アイルランドを範とすべきとなる。今やGDPは日本の2倍とのこと。タイミングの良さもあったのだろうが、この国をリープフロッグに導いたのは「勤勉で教育水準の高い優秀な労働力」だと野口氏は言う。本来、我々がモデルとしてもっとも見習うべき国家となるべきなはず。

もっとも、日本の高度成長はリープフロッグではなく、あくまでも欧米へのキャッチアップだったとする。そして、このキャッチアップを支えたのが1940年戦時体制、つまり、国家中央集権主義であり官僚主義だったと説く。そもそも自由主義国家ではなかったのだ。であるならば、我々はアイルランドを手本にするだけで良いのだろうか?(日本はいつの時代もリープフロッグの経験はないのでしょうか?キャッチアップのみ?)

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