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おすすめの歴史小説 「全一冊 小説 蒲生氏郷」 (童門冬二著・集英社文庫)感想‣戦国武将蒲生氏郷と、或る近江商人の物語

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「全一冊 小説 蒲生氏郷」の概要とあらまし

蒲生氏郷

織田信長に人質ながらも寵愛され、信長の娘次女である冬姫を娶る。信長死後には各地で多大な功績を挙げ、秀吉からも重用された。最終的には奥州伊達政宗を抑える為の配置で、会津藩92万石となり黒川城を与えられ、改築して若松城と名を改め、会津藩繁栄の基盤を築いています。また、千利休の弟子であり、利休七哲にも数えられる一流の茶人でもありました。

かつて織田信長から受けた薫陶を忘れず、商人優遇の領地経営を心がける戦国武将・蒲生氏郷。戦場往来で出世を重ね、独自の経営哲学を実践する彼の周囲では、さまざまな商人が、新たな人生を切り拓いていく。乱世に芽吹いた、商いの道とは何か。後に「近江商人育ての親」と呼ばれる蒲生氏郷の生涯を通じて“商いの原点”を、高らかに謳い上げた異色の戦国ロマン。

蒲生氏郷ひとりの伝記小説ではなく、”近江商人”の礎を気づいたふたりの人物の生涯についても詳細に記述されている部分も約半分を占めています。初めは多少違和感を覚えましたが、内容がそれなりに面白く、やがと氏郷の城下町作りに集約されているのかと期待して読み進めました。

蒲生氏郷は、秀吉が天下人だったころの一時期、全国第3位の石高を誇る大大名だったというのも初めて知った事実。しかしながら伊達政宗、真田幸村など他の戦国大名と比較してそれ程有名ではありません。その理由を紐解く鍵があるかもしれません…

「全一冊 小説 蒲生氏郷」の感想

戦国時代大活躍した大大名であるにもかかわらず、ほとんどどこの生まれかも知らず本書を読んで良く分かりました。また、会津(や松坂)との関わり、出身地の近江である”近江商人”との関係なども良く理解出来ました。

織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の存在感が余りに大きく、彼らの回りを固めていた有力武将の実力/実績・人間性に関しては、調べた人間しか知りようが無いというのが実態でしょう(わたしの勉強不足を棚に上げて)正直なところ、本書を読むまでは会津藩の藩主であったことを知りませんでした。

数々の合戦で手柄を立て、所領を拡大してい手腕には驚きです。且つ、新たに獲得した石高は貢献があった部下の武将たちに気前よく分け与えてしまい自分自身の石高は9万石(全石高の10分の1程度)と僅かでも、ほとんどを部下に配分してしまっても全く気にしないという”人柄”には驚きました。

一方、功績のあった配下の武将を自邸に招き、自ら風呂を薪で沸かし入って貰っていたという、嘘の様な誠の話が語られていました。風呂に入っている武将はどんなに熱くても熱いと言えず、茹で蛸になりながらも主君の沸かした風呂に涙を流しながら入っていたと語られています…

これらエピソードをどう理解して良いのやら…こんな事をしてもらったら感激の余り、いざ決戦の現場に出たら死に物狂いで活躍してしまうのは当たり前です。”人たらし”という言葉はあまり氏郷には使えない様な気もします。本来とても”無私”で、気立ての良過ぎる大将だった様な気がします。しかしながら、権謀術策渦巻く戦国時代で生き残る処世術は実に見事としか言いようがありません。

戦国時代を生き残る武将の気構えが”近江商人”道に直接結びつくとは思われませんが、何か通底するものでもありそうな気もします。もう少し氏郷に関する文献を読み、より深く知りたいと思いました。

「全一冊 小説 蒲生氏郷」の世間一般的な意見はどんなものがあるのか?

読書メーターで公開されている感想につき、2,3ピックアップさせて頂きます。やはり多い意見が蒲生氏郷をメインに光を当てるだけではなく、近江商人にかなりの部分が割かれている内容に〝意外性”を訴える読者が多いです。(内容的には面白いという読者も多いですが…)

近江商人を保護した武将、とあるところで聞き読んだ。正直あまり意識していなかった人物だったが非常に魅力的。信長についても同様。一方で権力や権力者について醒めた視点からの記述。また商売の原点について考えさせられる。新入社員研修でみた「てんびんの詩」という映画を思い出す。等々たくさんの要素が含まれた面白い読書になった。

(旧タイトルである「近江商人魂~蒲生氏郷と西野仁右衛門~」の方が、この作品に相応しいかもしれません。)蒲生氏郷について、信長の娘婿とか伊達家との争いとか断片的な知識しか持っていませんでしたが、氏郷が「近江商人育ての親」と呼ばれる理由を知ることができました。

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