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映画『ミナリ』(2020/リー・アイザック・チョン監督)感想‣80年代アメリカンドリームを夢見る韓国系移民一家の逞しい姿を描く!

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『ミナリ』のあらすじと概要

Jennifer EsneaultによるPixabayからの画像

1980年代のアメリカ南部アーカンソー州の高原を舞台に、韓国出身の移民一家が理不尽な運命に翻弄されながらも逞しく生きる姿を描いた家族映画。

2020年・第36回サンダンス映画祭でグランプリと観客賞をダブル受賞しました。

農業での成功を夢見て、家族を連れてカリフォルニア州からアーカンソー州の高原に移住して来た韓国系移民ジェイコブ。荒れはてた土地とボロボロのトレーラーハウスを目にした妻モニカは唖然とし不安を抱きますが、しっかり者の長女アンと心臓を患う好奇心旺盛な弟デビッドは、新天地に希望を見いだしていました。

やがて毒舌で破天荒な祖母スンジャを韓国から呼び寄せ一緒に住みますが、孫デビッドと奇妙な絆で結ばれていきます。しかし、農業が思うように上手くいかず追い詰められた一家に、思わぬ事態が降りかかる事になります。

父ジェイコブを「バーニング 劇場版」のスティーブン・ユァン、母モニカを「海にかかる霧」のハン・イェリ、祖母スンジャを「ハウスメイド」のユン・ヨジョンが演じた。

韓国系アメリカ人のリー・アイザック・チョンが監督・脚本を手がけ、半自伝的な半生を描いています。

従来映画ではほとんど語られることのなかった韓国系移民の生活にスポットを当てるところに、本作品『ミナリ』の新しさがあるようです。更に、韓国移民だけの物語ではなく、夫婦間の対立、子どもたちの日々の成長、新しいコミュニティである地域の教会活動への参加など、一家が経験していく事柄は、国や時代を超えた普遍的な身近な問題であり、観客自身が自分たちの物語として共感できる部分も多いものとなっています。

第78回ゴールデングローブ賞では、アメリカ映画だが大半が韓国語のセリフであることから外国語映画賞にノミネートされ、受賞を果たしています。第93回アカデミー賞では作品賞、監督賞、脚本賞など計6部門にノミネートされている作品で、現在注目度がたいへん高まっています。

なお、タイトルの「ミナリ」とは、植物の「セリ」を表す韓国語です。祖母が韓国から持ってきたミナリの種は、農場付近の小川の河床で力強く根付き繁茂しています。

昨年度アカデミー賞監督賞・作品賞受賞の同じく韓国人監督の作品:

パラサイト 半地下の家族 アカデミー賞作品賞/監督賞他受賞 映画

『ミナリ』のスタッフとキャストについて

Mike GoadによるPixabayからの画像

リー・アイザック・チョン監督・脚本 :米コロラド州デンバーに韓国系移民2世として1978年生まれ、アーカンソーの田舎の小規模農場で育つ。

アメリカの映画メディア『インディワイア』にて2020年の「最高の監督10人」にデヴィッド・フィンチャーらと並び選出された逸材で、新海誠監督の長編アニメ『君の名は。』のハリウッド実写版の監督に抜擢されたことで知られているそうです。

ちなみに、デヴィト・フィンチャー監督の2020年の作品は:

映画感想|『Mank/マンク』(2020/デビット・フィンチャー監督)傑作『市民ケーン』の知られざる誕生秘話 本年度アカデミー賞有力候補。

スティーブン・ユァン(ジェイコブ):10歳の時にソウルから家族とともにアメリカに渡った韓国系アメリカ人

ハン・イェリ(モニカ):韓国で数々の受賞歴があるハン・イェリ、感情の機微を繊細に表現

ユン・ヨジョン(祖母):韓国の国民的女優。京畿道開城府(現・北朝鮮開城市)に生まれる。『チャンシルさんには福が多いね』(2019/キム・チョヒ)ではヒロインの下宿先の大家さんを演じていたユン・ヨジョン。‟韓国のメリル・ストリープ”と称されるなど、韓国でもっとも敬愛されている俳優のひとり

『ミナリ』のネタバレ感想

Mike GoadによるPixabayからの画像

カリフォルニアからアーカンソーへの引っ越し先については妻にそれ程詳しく説明しておらず、夫ジェイコブは勝手に決めてしまった背景があります。ボロボロのトレーラーハウスに辿りついた時、妻モニカの落胆した表情はかなり深刻でした。

荒れ果てた農地を開拓する為には大型トラクターを買い入れたり莫大な先行投資資金が必要でした。また、息子デビッドは心臓疾患がある為、猶更辺鄙な田舎暮らしは不安がつのります。

妻は何とか夫が辺鄙な田舎での農業を諦め、ひよこ鑑定士の生活でも良いからカリフォルニアに戻りたいと願いますが、夫は頑として農業に執着します。最後にはお互い家族がバラバラになっても、単独で農業をやり抜こうとします。

しかしながら、心配していた息子の心臓の病は転地療法の御蔭で快方に向かっている事を医師から告げられ家族は喜びます。田舎の水質が効果があったのかもしれません。そんな矢先、脳卒中に倒れ、足腰が少し不自由になってしまった祖母の不注意で、自宅そばの作業場を全焼させてしまう事件が発生します。その後、家族はどうやら農村での生活を継続するように見えましたが、引き続き厳しい生活が続くことだけは間違いありません…

全般的には、残念ながら、華やかさやストーリーの起伏に乏しい作品で、少々退屈してしまう観客もいるでしょう。この部分は欠点といえば欠点だと思います。但し、韓国から呼び寄せたおばあちゃんがかなりユニークであることで、物語は大変大らかでユーモラスな味わいを持っている部分も多く楽しめました。

エンディングの「すべてのおばあさんに捧ぐ」という献辞には、やはり監督の真面目な性格がよく表現されている様に思えました。

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