『戦火の馬』のあらすじ・概要
1982年にイギリスで発表され、舞台化もされて成功を収めたマイケル・モーパーゴの小説を、スティーブン・スピルバーグ監督が映画化した作品。第1次大戦下、デヴォンの貧しい農家の少年アルバートは毎日を共にしていた農耕馬のジョーイを軍馬として騎馬隊に売られてしまい。ヨーロッパ大陸に送り込まれる事になります。戦争中、ジョーイは飼い主が目まぐるしく変わり、さまざまな危機に遭遇しながら、欧州各地を転々とすることになります。
一方、フランスの戦地に行くことになったジョーイを探すため、アルバートは徴兵年齢に満たないにもかかわらず入隊し、激戦下のフランスへと向かうことになります。舞台となった第1次大戦中、英国では100万頭の馬が軍に徴用され、6万頭しか生き残れなかったというエピソードにもある通り、過酷な運命に翻弄されていく一頭の馬と飼い主アルバートとの深い絆の物語となっています。主人公アルバート役にイギリスの若手俳優ジェレミー・アーバインが扮しています。
2012年製作/147分/アメリカ
原題:War Horse
『戦火の馬』のスタッフとキャストについて
スティーブン・スピルバーグ監督:カリフォルニア州立大学ロングビーチ校で映画を学び、ユニバーサルと契約する。「ジョーズ」(75)、「未知との遭遇」(77)、「レイダース 失われたアーク」(81)、「E.T.」(82)など発表する作品が次々と記録破りの大ヒットを重ねる。
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ジェレミー・アーバイン(アルバート・ナラコット):小作農の長男として名馬ジョーイの調教を任されるが、小作料を支払う為耕地の新規開拓は必要となり農耕馬としてのしつけをやらざるを得なくなる。また、戦時中に飼い馬を供出せざるを得なくなり、暫しの別れを惜しむ事になる/イギリス・ケンブリッジ出身。ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの舞台では樹木の役で背景の一部として参加するなど、役に恵まれなかった 下積み時代を経験している。「Now Is Good(原題)」(12)ではダコタ・ファニングと共演。「The Railway Man(原題)」(13)では、コリン・ファースの青年時代を演じる。
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エミリー・ワトソン(母親ローズ・ナラコット):小作農一家の主を支える気丈の母親役。農耕馬を買うお金で農耕に適さないサラブレッド(ジョーイ)を連れて帰って来た夫に呆れるが、心根は優しい慈愛に満ちている/スクリーンデビュー作の「奇跡の海」(96/ラース・フォン・トリアー監督)でアカデミー主演女優賞にノミネートされ、ジム・シェリダン監督の「ボクサー」(97)でさらに注目が高まる。
ピーター・マラン(父親テッド・ナラコット):南アフリカのボーア戦争に出征している。戦傷で片足が不自由となっている、傷の痛みをアルコールの力で紛らわせている。馬の競りでほれ込んだサラブレッド(ジョーイ)を高額で落札した為、小作農の地代を地主に支払う資金がなくなり、土地を失う危機に陥ってしまう。
他に、大人気ベネディクト・カンバーバッチ、エディ・マーサンらも軍人役で出演。
『戦火の馬』のネタバレ感想
この映画を見るたびに連想してしまう大昔のTV時代劇「剣」があります。1967年に公開された番組なので、わたしと同じく60歳代以上の方で、もしかすると覚えている方もいるのではないかと思います。後から知ったのですが、この時代劇は黒澤明監督と一緒に映画作りをしたメンバーが多く関わっていた様です。この劇は「馬」が主役ではなく、「剣」(一本の”かたな”が主役でした)日本テレビで毎週放映されていました。一話完結型のドラマです。
半世紀も前の番組ですが、わたしは子供心にもこの番組の印象が非常に強く未だに断片的に良く覚えています。何が凄いかというと、主役の刀の切れ味が半端ではなく抜群でした。切れ味が良過ぎて、気味が悪くなった持ち主(元々拾ったものか、盗んだという設定でした)が捨てようと、竹藪目掛けて放り投げるシーンがありました。すると青竹がスパッ、スパッ、スパッとものの見事に薙ぎ倒されていくシーンに目を見張りました。また、その刀を振り回すだけで、敵がバタバタと斬り倒されていくという、えたいの知れない代物でした。名馬≒名刀とちょっと類似性があるのかなぁと思いました。
さて、前置きがたいへん長くなってしまいました。名馬ジョーイも飼い主がどんどん変わって行きます。サラブレッドなので、農耕用に酷使するのは気の毒でした。軍用に供出され、士官の騎乗用ならまだしも、ドイツ軍に奪われた際は重たい大砲運搬用にこき使われていました。第一次世界大戦の壮絶なソンムの塹壕戦の状況が描かれていました。(両軍合わせて100万人以上の犠牲者を出したという恐ろしい消耗戦!)そんな地獄絵の中での束の間のジョーイの救出劇にはほっとさせられました。
ご紹介したTV番組「剣」の刀が思う存分、本領を発揮したのに対して、ジョーイは「競走馬」としての本来の「才能」を発揮する機会がほとんどなかったのは本当に残念でした。
しかしながら、戦場という過酷な状況の中、死線を幾度も乗り越えて、元の飼い主であるアルバートと奇跡的な再会を果たすシーンは感動的でした。
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