『ファーザー』のあらすじと概要
名優アンソニー・ホプキンスが認知症の父親役を演じ、「羊たちの沈黙」以来、2度目のアカデミー主演男優賞を受賞した記憶を失って行く父と、人生の再スタートを切ろうとしている娘の人間ドラマ。
日本を含め世界30カ国以上（含む日本）で上演された舞台「Le Pere 父」を基に、老いによる喪失と親子の揺れる絆を、記憶と時間が混迷していき、次第に自分自身や家族のことも分からなっていく父親の視点から描き出している。
ロンドンで独り暮らしを送る81歳のアンソニー（アンソニー・ホプキンス）は認知症により記憶が薄れ曖昧になり始めていたが、娘のアン（オリビア・コールマン）が手配した介護人を拒否してしまう。そんな折、アンソニーはアンから、父親と同居している現在の家を出て、新しい恋人とパリで暮らすと告げられる。
しかしアンソニーの自宅には、アンと結婚して10年以上になるという見知らぬ男が現れ、ここは自分とアンの家だと主張し、アンソニーをよそ者扱いし始める。そしてアンソニーにはもう1人の娘ルーシーがいたはずだが、その姿はない、、、
現実と幻想の境界が曖昧になっていく過程がアンソニーの視点から映像化されており、不条理で不確かな世界に身を置く恐怖が、ひしひしと伝わって来る。視聴者は彼の目から見る世界を一緒に追体験することで、老いによる記憶の喪失を実際に体験している気分になります。
アン役に「女王陛下のお気に入り」のオリビア・コールマン。原作者フロリアン・ゼレールが自らメガホンをとり映画監督デビュー作となっている。「危険な関係」の脚本家クリストファー・ハンプトンとゼレール監督が共同脚本を手がけた。
第93回アカデミー賞で作品賞、主演男優賞、助演女優賞など計6部門にノミネート。ホプキンスの主演男優賞のほか、脚色賞を受賞した。
『ファーザー』のスタッフとキャストについて
フロリアン・ゼレール監督・原作：1979年フランス出身。小説家としても活躍してる。2012年、戯曲「Le Pere」で認知症の父とその介護を務める娘の絆と喪失を描き、仏演劇界の最高賞として知られるモリエール賞作品賞を受賞、ローレンス・オリビエ賞とトニー賞でも作品賞の候補となった。
映画化に向けてぜレール監督はホプキンスに演じてもらうため、脚本をホプキンスへのあて書きにし、主人公の名前、年齢、誕生日などをホプキンスと同じ設定に変更して書いたという程、やはりホピキンスありきの作品だった様です。
アンソニー・ホピキンス（アンソニー）：1937年、イギリス／ウェールズ出身。映画史に残る悪役として今でも人気を誇るハンニバル・レクターを演じた「羊たちの沈黙」（91）でアカデミー主演男優賞を受賞。本作品「ファーザー」（20）で、2度目のアカデミー主演男優賞を受賞。83歳での受賞で同賞の最高齢受賞記録を更新しました
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オリビア・コールマン（アン）：1974年、イギリス／ノーフォーク出身。ランティモス監督とタッグを組んだ「女王陛下のお気に入り」（18）では18世紀イングランドのアン王女役を熱演し、第91回アカデミー主演女優賞を受賞した。
なお、米Disney＋で配信されるマーベルの新ドラマ「シークレット・インベージョン（原題）」に出演交渉中と、米ハリウッド・レポーターが報じて話題を呼んでいる様です。
『ファーザー』のネタバレ感想
本作品は概要でも述べた通り、年老いた父親アンソニーの視点から、実際に目に見える映像がほんとうは父親の脳の中にしか存在しない映像であったり、ある時には現実であったりと現実と虚構を行ったり来たりする。まるで、アルツハイマー病患者の目で世の中を見ていることを体験出来る仕組みになっている極めて稀な映像だと思います。
今回アカデミー主演男優賞を見事に受賞しているアンソニー・ホプキンスの喜怒哀楽があり、メリハリの効いた演技は実に素晴らしく迫真の演技でした。これは、過去に自分の父親自身の姿に重なっていることもあるそうでした。
老いという身近な問題をここまで緊迫した映像にまとめ上げる力量のフロリアン・ゼレール監督の才能にもびっくり仰天です。しかもこれが映画監督デビュー作というから驚きです。
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